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帰れぬ心の故郷 --屑と屑のすれ違い-- (1章へ)
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拳銃と金が入っていた袋を拾った。
タダでは済むまい。
(見つかってなるものか・・・どうせ汚い金だ・・)
場外馬券場は神戸三宮にいた。
目立たない服を着て帽子をかぶりサングラスをして移動した。
(まだ、今日ならここまで来ないだろう・・・・)
スポーツ新聞を買った。
新今宮で組員殺害事件のニュースが出ていた。
犯人は逃走中と書かれていた。
(逃げ切ったのか・・・・)
私が拾った銃は事故銃だったのか・・・。
事故銃とは、前科のある銃のことだ。
銃弾も指紋と同じように同じものはない。
(逃げてる男は、銃だけを捨てるつもりが慌てて現金も捨ててしまったのか・・)
組には言えないはずだから、私を必死で探すだろうな・・・、どこまで記憶しているのだろう。
あの暗闇で、目は合っていなかったから、互いに顔は正面を見ていなかったはず・・。
ということは、顔は覚えていないだろう・・・。
私の推測だった。
他に目撃者はいなかったはずだ。
警察に届けようとも思った。
しかし、それのほうが足がつく。
後も怖い。
だから、こうすることに決めた。
お金は、パァッと使う気持ちなどさらさらなかった。
競馬の賭け方は決めていた。
新聞の出馬表を追っても当たるわけはない。
賭け事は結果を追っても、勝てない。
結果はあくまで参考だ。
もうすぐ第1レースが始まる。
東京、京都、中京の開催なので1日で36レースある。
(見つかったら間違いなく殺される・・・)
取引には使えないだろう。
私ごと、カタをつければ済む話だ。
この金は逃亡資金だったのだろうか・・・。
犯人は逃げるに逃げられず、動くに動かれず、まだ大阪にいるはずだ。
私は、しばらく大阪には戻らないことにしていた。
逃亡するのは、私になってしまった。
(なにか動きがあるまでは様子を見よう。)
スポーツ紙の競馬欄を見た。
荒れるレースかそうでないかだけを判断する。
賭けるのは、三連複のボックス賭け。
9レース以降は3連単。
ボックス賭けとは、
馬番を 2,6,7,9と賭けたとする。
2,6,7、 2,6,9、 6,7,9、 2,7,9
と4通りとなる賭け方だ。
これを単勝人気で賭ける。
1人気,2人気,4人気 を基本とする。
他に、5人気、6人気、9人気
を基本にして賭ける。
つまり
1人気,2人気,4人気、5人気
1人気,2人気,4人気、6人気
1人気,2人気,4人気、9人気
で400×3の1200円。
場合によっては
5人気、6人気、9人気を別の人気に変える。
少し荒れそうなときは
3人気、6人気、7人気をベースに800円分追加する。
それでも、一つ100円ならば2000円だ。
外れると、次に賭ける額を2倍にする。
6レース全て当たらなければ、やめる。
5分前の倍率で賭けてゆく。
100万を持っているからといって大きくは賭けない。
中京1Rが始まった。
2人気、1人気、4人気の順にゴールした。
配当は1620円
3倍するので、4860円。
3660円の勝ちだ。
すぐに東京1Rが始まるので、一つ200円で同じように賭けた。
結果は、1人気、5人気、6人気・・・・外れた。
京都1Rは荒れそうだったので
3人気、6人気、7人気に、5人気と9人気を足して一つ400円で賭けた。
結果は3人気5人気6人気で、配当は18000円だった。
一つ400円だったので、72000円。
賭けたのは8000円だったので64000円の勝ちだった。
1Rを終わって約67000円の勝ち。
上出来だ。
一旦掛け金を1枚100円に戻して2Rを賭けていった。
2Rを終わって、賭け額計8400円で2560円の勝ちだった。
3Rの中京は、1枚800円で3,6,7人気のほうも賭けた。
結果は、1人気、9人気、2人気で7600円の配当。
当たりだ。
賭け額は16000円で配当は59800円。
次の東京からは、また100円から賭けた。
中央競馬は午前中4レース、昼の4レース、夕方の4レースで荒れ方が変わる。
これには理由がある。
午前中4レースは、未勝利馬ばかりのレースがほとんどとなる。
強い馬はすぐに勝って500万クラス以上のレースにいってしまう。
だから、何度やっても勝てない馬を予想から外しやすい。
多頭数のレースではない限り、雨や道悪でない限り、実力伯仲でないかぎり外しやすい。
昼の4レースは難しい。
新馬戦といって、初めて走る馬のレースや、500万クラスという、荒れやすい要素が多いのだ。
後半の4レースは、重賞レースや実力馬が競うレースだ。
ここは荒れるときは荒れる。
したがって、確実に前半4レースで貯金ができていなければ、後半に賭けるべきでない。
この日は上手くいって、前半4レースで、15万ほど勝った。
5万円はサイフの奥に閉まって、残り10万を上限に昼のレースに挑んだ。
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