ギャンブル小説「とったらんかい!」--静かな焦り-- |         きんぱこ(^^)v  

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      砂坂を這う蟻  たそがれきんのすけ

--静かな焦り--


結局、土曜は負け、日曜はほぼチャラ。


競馬騎手は勝ちたい、勝とうとして騎乗しているはずだ。


しかし、なかなか勝てない。


騎手ですらなかなか勝てない。


そんなものに賭ける。


勝てるわけがないのに・・・。


そんなことくらい解っているが、勝とうとして賭ける。


手持ちは確実に減っていった。


(賭けなければ、もっとゆっくり出来るのに・・・)


(今のうちに賭けて増やさないと・・また地獄に戻ってしまう)


(もうやめよう・・・所詮絶対に勝てないんだから)


(こつこつ賭けてると必ず当りをつかむはずだ)


月曜の仕事が終わり、帰りに喫茶店で読んだスポーツ新聞。


月曜のスポーツ新聞には、競馬のレース結果が載っている。


1R 1,5,6番人気

2R 2,4,5番人気

3R 2,11,5番人気

4R 5,2,1番人気

・・・・・


見ていると簡単に当てられそうに思ってしまう。


(なんでこれが簡単に当たらないんだろう・・・)


新聞を見たとたんに、競馬なんかやめてしまえ!


・・・と言った奴はどこかに隠れてしまった。


24時間営業の喫茶店。


ウエイターはまじめにがんばって働いている。


(みんなまじめそうでうらやましい・・・・)


と、思いながら、自分はペンと紙を取り出して


新聞を見ながら


(1着は1,2,5番人気でいいんだ)


もう、夢中になって、考えている。


時間がたつのが早い。


(なんとかしなければ・・・・・)


(一度でいいんだ、3回連続で当たるだけでいい・・・)


火曜日、水曜日、木曜日・・・・


毎日新聞を見る。


野球の記事・・・サッカーの記事・・・・


昔は、サッカーに夢中だった。


野球の結果に一喜一憂していた。


アダルト記事に興味を持った。


デリバリーやテレクラをやってみたいと思った。


今は・・・どうしたんだろう・・・。


競馬の記事以外に何の感情も感動も起こらなかった。


蟻地獄・・・・・。


砂地に円錐形の凹みをつけて、蟻が落ちてくるのをじっと待つ。


私の田舎では「ベンベコ」と呼んだ。


一匹の蟻が、砂の谷に滑り落ちた。


本能的に、危険を感じて、谷の中腹で


一所懸命に這い上がろうともがいている。


砂を掻き分けても掻き分けても・・砂が落ちてくる。


這い上がれるのか・・・力尽きるのか・・・。


「今度の週末にゴルフにいこう・・・」


友人からの電話。


「ごめん、今度は仕事なんや・・・・・」


最低の返答、屑人間・・・何やってんだろう・・・。


夜、テレビを見ても面白くない。


(テレビに出てる連中・・・・みんな成功者だ・・・つまらない)


帰りに買った新聞。


やはり競馬記事を見るため。


記事には、出走予定馬の調教時計とスポーツ誌の


無責任な評論記事で溢れていた。


(私は私の賭け方を信じるんだ・・・)


また、週末が近づいてきた。