私は、田舎に二日いた。
田舎は産業もなく、何十年と変わらない顔をしていた。
昼間に高校時代の同級生が何をしているのか探してみた。
小学校から一緒だった、マサアキは農協に勤めていた。
田舎ではエリートである。
中学時代にバスケットボールのクラブで同じだった
ノリは本屋とビデオのチェーン店の店長をやっていた。
田舎で店長はエリートである。
もう一人のイチは板前になって小さな店をやっていた。
田舎での独立自営はエリートである。
家賃のことを考えると、田舎は都会より
給料が10万安くても同じ生活が出来る。
月に30万もあれば高給取りの部類かもしれない。
隣の家のマサは公務員になっていた。
潰れないので超エリートである。
同級生の女の子はどうだろう・・・。
・・・・まったく解らない。
酒屋のノリちゃんに会った。
ぶくぶく太っていたのでわからなかった。
と、思ったら、私のほうも
昔の面影無く太っていて解らないらしいことが解った。
良く考えると、大学時代でも、55キロ程度だった。
今は75キロ。
20キロも太ると、人間は脂肪のペルソナ(仮面)に包まれて
解らなくなるみたいだ。
色々聞くと、ほとんどは結婚していた。
しかし、昔から、個性を表に出そうとしていた女性は
独身だった。
(自分が一番くだらないな・・・・・)
高校時代に付き合ったユミはどこにいったのだろう・・・。
付き合ってから解ったが、バレエをやっていた。
バレエをする人は、どうもナルシストっぽくて苦手だった。
田舎に帰ってもいいが、仕事はなかった。
本当は、都会で働いてお金を貯めて
田舎に帰って、陶芸をやりながら余生を送りたかった。
それが、逆に借金地獄になっていた。
これでは、計画が逆さまになる。
(そういう運命じゃなくて、そういう人間なんだろうな・・・)
女性はいざとなると自分の体を張れる。
男性は無理だろう。
ホストも体を張る商売だが、売れないホストほど悲惨な
ものはないらしい。
私など、コンピューターの仕事が多少できるだけでもよかった。
この仕事も結構ストレスが溜まる。
元来、好きではないのだ。
面白くも無いプログラムや設計ばかりだ。
趣味ではないから、金額にあわせてサッサと作らなければならない。
ゆっくり楽しむなんて事はできないし、したくも無かった。
そんな暇があれば、ギャンブルやウインドサーフィンをしにいきたい。
しかし、食わねばなるまいと、大阪に戻ってきた。
私はやはり、馬鹿で横着だった。
100万を増やそうと考えた。
昼間の仕事は頑張った。
自分で仕事を取ってきて自分で製作した。
企業の業務システム、機械の導入設定、
プログラム、ホームページ作成・・・・・。
なんでもやった。
夜になると、週末の競馬の研究を始めた。
前週の結果を見て、馬の研究、データの統計
スポーツ新聞での研究。
昼間より熱心だった。
100万をなんとか増やしたかった。
しかし、180万馬券を当てた人間はすでに狂っている。
簡単に当てられると思い込んでいるのだ。
色んな作戦を考えた。
今週末は人気で賭けることにした。
2番人気と5番人気を1着
4番人気と1番人気、8番人気と11番人気
と2番5番で馬単1000円。
当たるまで、倍倍で賭けてゆく。
統計からはうまく行くはずだった。
土曜日、私は、難波ウインズ(場外馬券場)にいた。
最初のレースから、予定通り人気を調べながら
賭けて行った。
3場開催なので、12レース×3場で36レースもある。
函館1レース 1000円。
福島1レース 2000円。
阪神1レース 4000円。
レースは10分おきにスタートする。
ここで色んな障害が出た。
次のレースまで10分しかない。(とても忙しい)
前のレースの結果が次のレースの後になる。
人気で賭けるにはどうしても5分前の人気になる。
つまり、締め切り時に人気が変わるのだ。
函館の2レース目から、なにがなにやらわからなくなった。
結局適当に買ってしまう羽目になった。
適当に買っていると全然あたらない。
ちゃんと買っていると朝から5回目のレースで
2番人気と11番人気がきていた。
36000円。
しかし、買い方が適当になってしまった私はだめだった。
5回目なら1000、2000、4000・・・・16000円
つまり10点買いなので一つ1600円。
50万になっていた。
(しまった・・・外した・・・)
耳が熱くなっている自分に気がついていなかった。