どうでもいい話⑧ 自炊すれば物価高は怖くない | 伊藤修二 「黄昏シンドバッド」

伊藤修二 「黄昏シンドバッド」

 ・・・仙台市在住。東北大学経済学部卒業 放送作家(日本脚本家連盟会員)  詩集「ひとり荒野」 小説集「明日。」 「セクシードラゴンの夏」などを出版。アマゾンの「伊藤修二」から購入できます。寄せられたコメントは公開していません。フォロワーも求めていません。

マヨネーズの値段が上がった。バターもマーガリンも輸入牛肉もハンバーガーやラーメン、牛タン定食などの外食料金も上がった。

 

らしい。

 

しかし、わたしには関係ない。

それらをほとんど利用していないからである。

 

特に外食。これまでもあまりその機会がなかったが、コロナ禍に入ってからは外食の機会はゼロである。

スーパーの総菜は生まれてこの方、買ったことがないし、コンビニは各種料金支払いなどで利用しているが、弁当などは買ったことがない。40年前、釣りに行った際に海近くのコンビニでエサ用の魚肉ソーセージを一本買っただけである。

 

そして、牛肉もバターも買うのは年末のたったの一度だけ。マヨネーズは年間に400グラム2本だけしか消費しない。マヨネーズを使うのはチキンナゲットを作る時ぐらいで、他の料理にはほとんど使わない。  

 

わがままを通させてもらい、毎日、三度の食事を作っているのはわたしだから間違いない。

 

梅干しはもちろん、イカやアジ、ホッケ、サンマなどの干物、味噌、自家製南蛮で作るかんずり、同じく一味唐辛子、塩辛、燻蒸しないハム、そして自分で言うのも何だけど、得意のがんもどきなども自分で作っている。揚げたてのがんもどきに生姜をおろして醤油を軽くたらし、ふうふうしながら食べる。作っている時も食べる時も実に幸せな時間である。

 

熟成二年目に入ったかんずり

 

若い頃は牛タンも自分でさばいた。牛タンのかたまりをスライスしたあと3日間血抜きしてから塩か味噌で味付けして食べた。街の牛タン屋では厚さがせいぜい5ミリ程度だが、それを2センチの厚切りにして食べる。自分でさばいた特権である。しかも店の半分の費用しかかからなかった。しかし、老いた今は手数のかかる牛タンをさばく元気はない。牛タンのかたまりもべらぼうに高くなったせいもある。

高くなったものは食わない。物価高を乗り切るひとつの方法である。

 

ラーメンも昔は鶏ガラで自家製スープを作っていた。今は、楽して市販のスープを自分で加工してから使うこともある。例えば、3人分のラーメンを作るとする。市販のスープは一人前だけにして、かつお節と昆布ダシとチキンコンソメ、酒かす、焼きにんにくと焼きネギ、焼き塩、醤油などで味を整える。麺は盛岡の兼平製麺の生中華麺を使う。安くておいしい。

自炊は、なるべくなら自炊するという軽いスタンス。そうでないと疲れるし続かない。

 

昔は、ラーメン店にもよく食べに行ったが、自分で作るラーメンより旨いと思ったラーメンは、横浜駅前の屋台と仙台の志のぶという店のラーメンだけ。その志のぶも今年の春に閉店してしまった。

 

長々と書いたが、要するに簡単な自炊技術を身につければ、食費はそれほどかからないということ。

 

例えば、スーパーで売っている「おから炒り」。一人分でだいたい350円前後で売られているが、

350円あれば、10人前以上のおから炒りが作れる。

きんぴらゴボウも白菜キムチも野菜のミックス漬けもみんなそう。

自分で作れば安くでき、添加物なしの調味料で自分の好みの味に仕上げることができる。

 

寿司も自分で握ったほうが安上がりだ。特売で安くなっている生マグロのサクを買って来て、昆布締めにして旨みを出してから握る。イカは皮を取ってさばいてから、身を横に半分にスライスして薄造りにしたものを握る。サバは三枚におろした後、小骨を抜き取ってからしばらく塩にまぶして臭みを取り、昆布を入れた米酢で締める。それを冷凍庫に半日入れて置けばアニキサス中毒の心配もなくなる。シメ鯖の寿司はへたなマグロより美味しい。こうして自分で握る寿司は、寿司屋の5分の1の費用で食べられる。

 

それとめんつゆ。そばつゆの他に、煮物、茶碗蒸しなど様々な料理にめんつゆを使うおかしな料理番組が多いが、添加物だらけの製品が多いからよく調べてから使ったほうがいい。金を使ってそんなものを買わなくても、丁寧に、昆布とかつお節、煮干しなどでダシを取って保存して置けば、何にでも使える。

金より手間をかけたほうが、料理は美味しくなる。

 

料理の基本を教えてくれたのは、辻調の畑耕一郎さんと分とく山の野崎洋光さんだ。

およそ20年前、畑さんは上沼恵美子のおしゃべりクッキングに出演していた。彼はすばらしかった。いつも、メモを手にして番組を視ていた。40歳で会社を辞めてからのわたしのライフスタイルとこの番組がちょうど合っていた。午前中に依頼のあった放送台本やCMコピーなどを書いて、11時頃から昼ご飯を作り出し、その昼ご飯を食べてから、テレビニュースとおしゃべりクッキングを視て、それから買い物に出て、帰って来たらキッチンドリンクしながら晩ごはんを作る。食べたら寝床に入り、本を読みながら眠くなったらそのまま寝るというのがわたしの基本的な一日のライフスタイルだった。30年前から、今で言うリモートワークをしていたことになる。

 

分とく山の野崎さんもすばらしい調理師である。タケノコのあく取りは大根おろしで。カツオのたたきは皮目に火を通した後に水には取らないなど、目からうろこの調理の基本を教えてもらった。今はユーチューブで学ばせてもらっている。寿司は家で握って食べたほうがいいと言うのが彼の持論。100%同感である。本マグロの大トロを単に握るだけの寿司屋は寿司屋ではない。もう何十年も前の話になるが、やたら元気のいい寿司職人が注文を受けると「大トロ、入ります」とか言って思わず、手に息を吹きかけてから握り始めた光景が今でも忘れられない。バックヤードでやるのはかまわないが、目の前でされると興ざめする。この寿司屋はテレビでおいしい寿司屋として紹介されたらしいが、あの後は行っていない。

 

さて、昼食後にパチンコ店に立ち寄り、かなりの資金を調達してから買い物をするという日もあった。

「どうでもいい話、パチンコ大学編」にも書いたが、

わたしは、伝説の釘師の大場さんにパチンコ必勝法を教わっていたから、デジタルになってもほとんど負けたことがなかった。

宇宙戦艦ヤマトの30回連チャンの後に流れるスローバラードを聞いたことがある人はそういないだろう。

その時、わたしは、10人以上の場内観衆の視線を背中に感じながらパチンコを打ち続けていた。

まさに、大場さんのおかげである。

今でも、パチンコは負けない自信があるが、コロナ禍で長い間、やっていない。これからもやらないだろう。

最近のパチンコがギャンブル性の強いものになって来たからだ。昔のパチンコには勝っても負けても愉しいという牧歌性があった。大衆の娯楽が依存性の高いカジノ化しつつある。日本の社会にカジノ、iRは要らない。

 

 

脱線した。物価高の話だった。

外食やスーパーの惣菜なんかやめて、食事は自分で作ろう。

料理ほど楽しいものはない。

市販のカレールーを使わないカレーライスほどおいしいものはない。

 

なんのことはない。

エスビーのカレー粉の大缶を買って、それに自家製の一味唐辛子と好みの香辛料を足すだけでいいのだ。

おススメは、フェネグリークとシナモン、海苔の佃煮とインスタントコーヒー、酸味を入れるために自家製の梅干しなど、みんな一般家庭にあるものばかり。後は、鶏肉にしても豚肉にしても、使う前に軽い塩とコショウ、日本酒、小さじ一杯のパスティスを入れた袋に3日ほど漬けておくことぐらい。牛タンは好きだが、油脂分が多い牛肉は嫌いなのでカレーには使わない。スープのベースはもちろん昆布だし。カレーを作る12時間前に昆布を水に入れておけばいいだけの簡単な仕込みだ。このカレーを食べたらきっと世界観が変わる。添加物に慣れ切った舌でも、少しは蘇ることだろう。

エスビーのカレー粉の大缶はオススメ。ひと缶1500円前後するがお得だ。困った時のカレー粉。チャーハン、天ぷら、野菜炒めと、カレー粉に頼ることが多々ある。スープづくりに失敗した時のラーメンに入れてもいい。

 

今、作ると美味しいもの。

秋鮭の季節だから、軽く塩を振った秋鮭のブロックを蒸してから骨を抜き、フライパンで軽く炒り、火を止めてから、ほぐした辛子明太子と和えて食べる。これは旨い。日本酒のアテには最高である。ホカホカの白飯に乗せて食べてもいい。はらこ飯の10倍は旨い。

 

40歳でテレビ局を辞めてからずっと個人事業主だったから他人よりもらう年金は少ない。でも、自炊が多いから、あまり食費はかからない。円安による物価高もほとんど気にならない。ずっと前から外貨投資しているから、むしろ今の円安は少しだけ歓迎である。でも、アメリカの住宅価格が下がり始めているので、FRBも過度な利上げはしなくなるだろう。

 

外食を抑え、自炊を増やせば、

物価高は乗り越えられる。

挑戦してみてください。