続き。


舞台の上で、娘だけが立たずに座ったまま、娘だけがみんなに聞こえる声で名乗れなかったとき。
舞台下の同じクラスの園児のあたりから、「しろみでしょ!」とフォローしてくれた子がいたよ、と夫が言った。
娘の奇行に気を取られていた私は気づかなかったが、帰宅後に動画を見返したら、確かに夫の言う通りだった。
男の子っぽい声だったと思う。
1歳になったばかりの頃に児童館で知り合って以来ちょこちょこ会って、偶然幼稚園も一緒で同じクラスになったあの子の声に似ていた。

娘は園児の名前を、平均1日1人ペースで覚えてくる。
同じクラスの子もいれば、クラスや学年が違っても同じバスに乗る子もいる。
たいていは、フルネームで覚えてくる。
名札を読んで覚えているようで、その子とお話したり遊んだわけではないみたい。

人との距離感がおかしい、しろみちゃん。
一生おかしいままです、と主治医には言われている。
成長するにつれ自分で自分の特性を把握して気をつけることは出来るだろうけど、幼児期はまだ難しい。

希望が持てることもあれば、不安になることもある。
だけど、とにかく頑張るしかない。
一生懸命、かつ、謙虚な姿勢を心がけながら。

今日もしろみちゃんは元気に登園していった。
みんなが自分で持って座る手提げバッグを、慣れた様子で先生に手渡して、バスに乗って行った。
バスに乗る前に娘と話していたら、膝にバッグを置くとパンツを引っ張ることができないから、膝にバッグは置けないのだと言う。
それでいつもどうしてるのかと聞いたら、「先生があじゅかってくれる」と。
もう、本当に申し訳ない。
パンツ引っ張るのは「4歳2ヶ月になったら、やらなくなるよ」と自ら宣言している娘。
「4歳になったらトイレで(オシッコ)ジャーしゅる」と同様に、どうかその宣言も守ってほしい。

こんなんだけど、しろみちゃん自身はものすごく頑張っているのだと思う。
給食で先生に手伝ってもらったことも、トイレのタイミングが合わずにお漏らししちゃったことも、舞台上で大股開きでパンツ丸出しで引っ張ってたことも、バスで自分で自分のバッグを持たないことも。
頑張らないで甘えているのではなく、たくさん頑張った上で、どうしても譲れないこだわりだけを貫いているのだと思う。
それらのこだわりを受け入れてもらえてるからこそ、頑張れているのだと思う。

だから、私も夫も娘がうまくできなかったことを一切責めないで、出来たことだけを大げさに褒める。
出来なかったことは、娘が克服する意欲を見せてきたら、促してあげる。
娘はいつも小生意気なことばかり言うから、ついイラッとして、あんなこともできないくせに!とか言いたくなる時もあるけど、それは絶対にしたらダメだから。

親として同じ失敗を繰り返さないように。
これまでの苦労を無駄にしないように。
がんばれ私。
がんばれしろみちゃん。
そして本当にありがとうございます幼稚園の先生方。