①の続き。


20代前半、社会人1年目だったはず。
季節すら覚えていないけど、いつ行ったんだろう。
何度か通ったはずだけど…仕事してたけど平日休みだったはずだから、休みの日に行ってたのかな。
確かなのは、当時は実家に住んでいて、実家の車を運転していたこと。

田舎なので車に乗れないと何もできないのだが、かれこれ15年ほどペーパードライバーで何が何でも運転したくない今の私には考えられないほど、当時は普通に車を運転していた。

自分の運転でやって来たのは、隣の市にある婦人科。
女医だという情報だけで選んだ。

診察室で、生理痛がひどいという話や、婦人科でちゃんと診てもらうのはこれが初めてだという話をしたと思う、たぶん。

それから内診をした。
初めての内診。
あの体勢に、落ちやしないかとヒヤヒヤしたり、ちょっと痛いなと思ったような記憶がうっすらある。

内診を終えて診察室に戻ると、再び女性医師と向き合って座り、説明を受けた。
卵巣や子宮の絵が描かれた用紙に、医師が書き込みながら説明していった。
この部分がこうなってて、それであーでこーで…。

じっとその紙を見ながら話を聞いていると、突然、視界が揺らいだ。

私は頭を持ち上げていることができなくなった。
グラリと頭を落としていく私を見た医師が、看護師達を呼ぶ声が聞こえた。

気持ち悪くてたまらなかった。

椅子に腰かけたまま倒れた私が下半身まで椅子から落ちてしまうより先に、医師と複数の看護師が椅子ごと私を支え、そのまま隣室へ運んでいった。
キャスター付きの椅子だった。

私は隣室のベッドに寝かされ、何かを腕に取り付けられた。
モニターに数字が見える。
それは血圧の数値だった。
上が80というのが見えた。
ちょっと意味がよくわからなかった。
当時の私の普段の血圧は、上が120ぐらいだった。

ひとりの看護師が付き添ってくれた。
私は脳貧血を起こしたのだそうだ。
初めて聞く言葉だったが、どういうものなのか看護師が説明してくれた。
「子宮の絵を見て話を聞いていたら、リアルに想像しすぎて気持ち悪くなっちゃって…」
私はそんなことを言ったと思う。
めんどくさい患者だよな、迷惑がられるだろうなと感じていた私に、
「感受性が豊かなのね」と看護師はニッコリ微笑んでくれた。

車で来たため、運転できる状態になるまでゆっくり寝ていていいと言われた。
ゆっくり回復していく血圧の数値を眺めながら、私は中学生のころにもこんなことがあったなと思い出していた。




続く。





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