痛みに耐えながら手を回し右腰を探ると、何かがホルスターベルトをまたぐようにして身体に刺さっている。それが皮膚を切り裂くのを我慢しながら引き抜くと、先端が立体的に三つに分かれた鏃だ。
「カミーノ・セーバーダート…人相を替えられるクローダイト族のザムをコルサントで殺したやつだ。お前、ルシルに雇われたな。俺が顔を使い分けてるって言う皮肉か?」
幸いダートの中心の毒針はベルトのビスに当たったのか、皮膚に届くことなく折れていた。
「皮肉だな。ミディアニスとは三日前に別れた。いや、彼女から別れを告げられた。『これ以上一緒にいると、あなたのすべてが欲しくなる』『あなたを永遠に自分だけのものにしたくなる。』とね。やさしい言葉だろう?生まれてからあれほど愛されたことはなかった。あんなすばらしい女性、二人といない。愛しくて愛しくて、あいつのためだったら何でもしてやれた。いつまでも離れたくはなかった。だが、結局俺の身勝手な愛に嫌気が差したんだろう。結局彼女を苦しめることになってしまった。」
直接毒針は刺さらなかったが、折れた針先から漏れた液が鈎状の鏃でえぐられた傷口から染み込んだようだ。体の力が抜けてきた。
「はは、警戒すべきだったな、トルーパーがマントを付けてることに。」
短めの、鮮やかな緋色のマントをまとっていた。よく見ると、ヘルメットとマントとの隙間から見覚えのあるものが覗いている。
「お前、その三つ編み…」
ゆっくりとヘルメットを脱ぎ地面に落としたのは、紛れもなくミディアニスだった。こちらを見つめている顔に、悲しげな笑みが浮かんでいる。ほほを伝う涙を拭いもせず、小さく絞り出すような声が聞こえた。
「え…待ってるから?おい、やめろ。ブラスターを胸から外せ!やめろ!やめ…」
いとおしげに瞳をこちらに向けたまま、ブラスターの引き金を引いた。鈍い音。何か言いたげに唇が動いたが、ゆっくりと膝を崩して倒れ、やがて眼を閉じた。
「くそっ、なんて事を!」
見ていることしかできなかった。守ってやる事が出来なかった。所詮俺は自分に都合のよい事だけをやってきたわけだ。
腕で身体を支えているのが辛くなってきた。これで俺も終わりか?地面にあおむけに転がると星が空に満ち始めている。そこへ今にも落ちていきそうだ。
瞼が重くなってきた。頭の奥が痺れる。『カズ』と俺を呼ぶ声が聞こえた気がしたが、神経毒は色々な感覚異常を起こすらしい。ふらっとここに来たんだ。俺がこの星にいる事を知ってるやつがいるはずはない。
辛いな、こんな宇宙の果ての砂漠の星で一人寂しく死んじまうなんて。
「ああ…ルシ…ル。」 続 心旅2