少しヒステリックな声に右側を見ると、いつの間にか若い女性が座っていた。体が薄い緑色のオーラで覆われている。
「女王、いやパドメ!いつの間に。ああ、あっちというのはルシルのことですよ、女房の。あいつと出会ったのは、俺が初めてアウターリムのライロスに行った時。そう、何の偶然かトワイレック族の故郷ですよ。進んだクローン技術を持つ、陸地のない海ばかりの惑星カミーノの手前にある星。そこのスペースポートでハイパードライブの調子を見ている時、迷いこんできたのが彼女なんです。デビューしたての超売れっ子歌手。驚きましたね。何でも出番までの時間つぶしに基地内を見て回っているうち、元の場所への道がわからなくなったとか。で、彼女を控室まで案内しながら他愛もない話をしました。でも、この時点で、彼女はもう俺に落ちていましたね。」
「何を根拠に、そんな思いあがった事が言えるの!」
この女性に欠点があるとすれば、まじめで正義感が強すぎて融通が利かないことだ。
「目ですよ。ドアの前で『次回からはお伴を連れて歩くように。』、と忠告すると、『このお礼をしたいのでもう一度会いたい。』と言いました。潤んだ目で。あなただってジオノーシスのアリーナに引き出される時、彼に同じ眼をして告白したでしょう?」
ジェダイと国家元首との禁じられた恋と片付けるのは簡単だが、本人たちにとってみれば自分の感情を押し殺して傍目のために忍ばなければならなかったという辛い思いだ。
「そうだったわね…ごめんなさい。」
「それから一ヵ月後、インペリアルシティーのジェダイテンプルの下で待ち合わせて芝居を見て食事しました。お互いの生い立ちや身の回りの話やらで盛り上がったのですが、正直、私は少々気まずかった。と言うのも、ライロスからの帰還途中でここに寄った時、キャプテンと喧嘩し殴り飛ばして身分保留処分をくらっていたんです。話そうかとも思いましたが、嫌われるようなことは…」
「それは違うわ。」
「素直に話すべきでしたか?ま、彼女も何となく感じてたようですけど。」
「いやあ、元気かい?」
今度は左側から声が聞こえた。あの人物だと分かったが、髪はふさふさでかなり若い。
「ま、マスター。いらしてたんですか。お若いころのその姿がお気に入りなんですね。話を続けても?ありがとうございます。で二日後、突然連絡をよこし復職できるようになったという。つてを頼って根回ししてくれたようです。しかし復職したとは言っても2階級降格、当然給料は減りもちろん副官手当てもなくなった。それまでの暮らしを維持するだけの稼ぎがなくなったんです。結局私は彼女に拾われる格好で一緒になり、彼女の収入で暮らした。髪結いの亭主、って訳ですよ。」
「クックックッ。」
「力関係はどうあれ、お陰で楽な暮らしでした。いい家に住んでうまいものを食べ、最新のスピーダーにも乗れた。でも、それで満足かときかれると、決してそうじゃない。」
「ほう、それは何故かな?」
「興味おありですか?彼女はずっとトップスターで走り続け、私と一緒にゆっくりできる時間なんてなかった。無理するなと言っても、自分は好きなことができているから楽しいんだという。」
「確かに。」
「ええ。銀河のあちこちへコンサートに行き、戦争孤児のチャリティーや文化遺産の修復に協力したり。本当によく働く。人間として尊敬できる女性ですよ。」
「と言ってはいるが、内心すこしイラついてやしないか?」
「いや、イラついてはいません。不安なだけです。子供たちが巣立ったあと、ふと思いました。彼女にとって私は何なんだろうかと。彼女の喜びを自分の喜びと出来ているのか。私にできることは、たまに愚痴を聞いてやり静かに頷くことだけ。私が問題を抱えていたり悩んでいたとしても、その感情をぶつけては彼女に迷惑だ。彼女は私を必要としていない、面倒な愛など感じてなんかいられない。」
「そうとは思わないが。」
「そうですか?愛ほど厄介なものはないと思いませんか?あなたのパダワンがダークサイドに落ちたのは、愛する彼女を救いたかったからでしょう?」
愛する女性が苦しんでいる夢。あまりに現実的すぎて、彼は自分が未来を見たのだと思った。ならば特殊な力を身につけ、そうならないようにして見せる。それがダークサードへのひと転がり目だった。
「あぁ…、確かにそれはそうだが。」
「私はその愛情の表現に戸惑った。ルシルはとても繊細な女性です。傷つくことも多い。そんな時いたわってやりたい、抱きしめてやりたい。でも、そうしてしまうと彼女はもう二度と外の世界に出ていけなくなる。不安でした、いや寂しかった。」
「そんなに自分を責めないで、落ち着きたまえ。」
「そんな時、ミディアニスと出会ったんですよ。わたしは渇きをいやすように彼女を愛した。彼女におぼれた。愛しくて愛しくてたまらなかった。ははは、分別のあるいい歳した妻子持ちが、若い娘にうつつを抜かしてみっともない、とお思いでしょうね?」
「傍目にはそう映る。」 続