バスのおじさん。

1番最初に会ったのはバス内だ。
乗る人はかなり少ない。

歳の頃は70代だがハットを被り
デニムにブーツ。おしゃれすぎる!

バスの運転手さんと当時のニュースの
いじめだか虐待だかの話をして
子供が可哀想だと泣いていた。
人間味溢れるおじさんを見て
素通りができず、仲良くなりたい
と思った。

その後おばさんも交えて私たちは
バスの中でよく話し笑い
家に遊びに行くまでの仲になった。

連絡先の交換はなし。

だが道端で会うと必ずお宅に寄らせて
もらいまた話し笑うのだ。

そのおじさんが亡くなった。
ガンだった。

私も仕事をやめバスに乗らなくなり
なかなか会えなかった。
今日も偶然、道端でおばさんに会って
知ったのだ。

ゆみちゃん、お父さんにお線香
あげてやって。

それから思い出話になり
泣いたり笑ったりしたのだが
おばさんから数枚のおじさん直筆の紙を
見せられ、度肝を抜かれた。

その紙にはおじさんが食べたいものや
(ものすごい食欲だったらしい)
やって欲しいことなんかが
書いてあったのだがその中に

ロト6の抽選番号を調べろ
馬券のお金を誰々に渡してくれ

とあった。

こう言ってはなんだが
およそこれから死にゆく人の願いではない

私は決めた。

これからはこんな風に生きよう。

死ぬから、とかそんなことを考えずに
今日やりたい、今日知りたい
今日言いたい、今日食べたいという
自分自身の欲求に忠実に従って
生きたおじさんが強烈に羨ましかった。

そして帰ってからすぐにこの話しを
娘にした。

人を騙したり殺したりいじめたり
クスリをしなければ好きに生きていい

おじさんはいつも笑ったり
怒ったりオシャレをし好きに生きていたが
何よりとても幸せそうだった。

今日は私にとって
とても重要な日だと思った。
{9D4E3DDA-0E0F-4B1A-AFFE-D811DED9ACD8}

おじさんの形見。
帽子なんか50個くらい持っていたらしい
頂いてきた。

おじさん大切にするよ!