サヴァランを焼きました。
ラム酒風味のシロップを
たっぷり吸わせたお菓子は、
子供の頃
洋菓子屋さんの定番。
憧れの「大人のケーキ」でした。

このサヴァラン、
成り立ちを辿ると
フランス東部ロレーヌ地方に
辿り着きます。
関係する重要人物がこのお菓子の方。

ロレーヌ地方の主要都市
ナンシーにある
レクチンスキー公像です。

そもそもの始まりは
ポーランドから逃れて
ロレーヌにやってきた
レクチンスキーが
固くなってしまった
故郷のお菓子を食べられるよう、
お抱え料理人のストレールが
シロップに浸して
出したことにあります。
これを気に入ったレクチンスキーは
好きなお話である
『千夜一夜物語』から
「アリババ」とお菓子に命名。
そのストレールは
ルイ15世に嫁いだ
レクチンスキーの娘マリアと共に
宮廷入りして専属パティシエとなり、
その後自身の店を持つに至ります。
そのお店が
パリ最後のパティスリー
「ストレール」と言うわけです。
アリババは彼によって
「ババ・オ・ロム」と名を変え、
今のような形になりましたが、
ストレールでは
今でもこの2つのお菓子が
並んで売られています。
さて、肝心のサヴァランは…

評判となった「ババ・オ・ロム」に
ヒントを得て、
1845年にパリのブルス広場で
パティスリーを開店していた
ジュリアン三兄弟のひとり、
オーギュストが
『美味礼讃』の作者である
ブリア=サヴァランへの
オマージュとして
作ったと言われます。
前述の二つのお菓子と違い、
大きなリング状の生地に
シロップを染み込ませ、
表面にアプリコットジャム、
中心にはクリームを詰めました。

このようなわけで、
アリババ、ババ・オ・ロム、
サヴァランは兄弟関係にありますが、
「地方菓子」として見た場合、
サヴァランは少なくとも
ロレーヌ地方菓子ではないですね。
ババ・オ・ロムも微妙ですが、
ナンシーを訪ねると、
カフェのメニューに
土地のスペシャリテとして
載っています。
今夏、
ナンシーでいただいたババ・オ・ロムは
こんな感じです。
ババ…と呼ばれる所以は、
先に説明した以外にも、
ポーランドの発酵菓子
「バブカ」にシロップを浸したから
…と言う説もあるようです。
ちなみにこのバブカ、
ちょっと前にニューヨークで
流行っていると聞きましたが、
その波はパリにも及び、
今はデパートにも
専門店が入っているという
人気ぶりです。