充実したお休みの1日。夕方からは真打ち競演という公開ラジオ収録に出掛けました。
ありがたいことに、観戦チケットが当たって今回の観劇が叶いました。
1番のお目当ては以前から見たかった柳家三三さん。
出囃子が鳴り、登場してきたところから既に風格がある着物の着方とか、佇まいとか…華やかさではないけど、静かなオーラというか…品があって
スターだな…と思います。
最近落語を生で聞く機会が何度かありますが、出のところから既にその人の人となりが見えるような気がしてきた出から陽気な人、観客の気持ちを一気に引き寄せる人、ぬぼ~っと出てきて圧倒的な力で自分の噺に巻き込んでいく人。そこへいくと柳家三三師匠は無機質な雰囲気を纏います。
演目は『青菜』有名な噺ですが、私は初めて聞きました。
噺に入る前の導入部分、枕は至って普通。さらっと話されます。そのさらっと加減がまた粋噺を聞き終わった後からまた反芻したくなります。
いつ噺に入ったのか分からないくらいの自然さを持ってその世界へいざなっちゃうんです。
植木屋とご主人のやり取り、声の使い方、扇子の広げ方でどんな人物なのかしっかりと読み取れます。
扇子の仰ぎ方がとても優雅それだけでこのご主人が良い暮らし向きにある人だと分かります。
この噺、後から同じくんだりを植木屋がなぞるのですが、そこでの見せ方が先程のご主人とは違う。声の出し方から所作まで自由自在という印象でした。
青菜ってこんな噺なんだと聞きつつ、帰ったらYouTubeで春風亭一之輔師匠の青菜も聞こう
と心に決めたりして…。青菜は三三師匠の師匠であった柳家小三治師匠の十八番だったと聞いたことがあるのでその伝統を受け継いでいるのだろうと想いを馳せたりして…楽しみました。
大爆笑という感じではなく、前半は植木屋とご主人のやり取りが丁寧に描かれ、後半は植木屋とおかみさんのやり取りが滑稽です。
自宅に帰り、古典落語という本で今日の演目についておさらいしたところ、林家たい平さんが『前半は後半に向けての種を巻くところで爆笑を取るところではなく、淡々と進んでいく、前半で笑いに走らずしっかりと絵を描けた時に後半、爆笑の連続となります。』と解説を書いておられました。その通りだったとこれを読んで唸りました。
三三師匠の噺をまたどこかで聞く機会が欲しい紫雨です。
その他の出演者も豪華で、漫才のおぼんこぼん、江戸家猫八さん、テツandトモ、神田松鯉先生。
おぼんこぼん、テツandトモのお二人はサービス精神旺盛この道で何十年もやっていらっしゃるプライドを感じました。面白く親しみやすいけど、実際に見てみて芸一筋で生き抜いてきた格好良さを感じました。おぼんさんは舞台がハネてからも私服でステージに出てきて下さってお人柄が伝わりました。
どちらの芸人さんも笑点の演芸コーナーで見ますが、生で見ると100倍面白いです
そして、最後の講談。これは凄いです私は初めて聞きましたが、この神田松鯉先生
確か人間国宝でいらっしゃる。
力強い声と語り口もさることながら、不思議とその情景が見えてくる話を聞き進めるうちに時代劇か何かのようにはっきりと映像が自分の中に出てきてしまって、おかしな事に道の土ぼこりや妻の着物の色だとか、庭の桜まで見えてくる始末…。途中から目を閉じて自分の中で沸き上がる映像だけで楽しみました。これは凄い
私も初めての経験をさせてもらいました
長年の努力に裏打ちされた芸の数々を目の当たりにしてとても充実した1日になりました。