私立大学の収益事業 | yamadatarouのブログ

私立大学の収益事業

本業以外で収益確保図る 

 私立大学が収入確保を狙い、本業の教育研究以外のビジネスに乗り出しています。特産品を大学ブランドとして販売したり、専門技術を持つ卒業生の人材派遣を行ったりと、事業内容は様々。事業のために会社を設立し、収益を大学に寄付する手法も目立っています。(武田泰介)

神田かぶとくん

 「最近、大学が独自のブランド商品を売り出していると聞きます」

大手町博士

 「私立大学が本業の教育研究以外に、収益事業を行うことは私立学校法で認められている。ブランド商品の販売も収益事業の一つなのだよ」

京都産業大学総務部参事の原田守光さん

 「当大学が全額出資して設立した株式会社は、宇治茶のペットボトル飲料『京産茶(きょううぶちゃ)』を2006年から販売しています。学内だけでなく、通信販売などにも販路を広げました。また、大学の研究成果を生かしたマスクやハンドクリームなどの商品販売のほか、保険の代理業や不動産仲介なども手がけています」

永田かすみさん

 「ずいぶん幅広く事業を行っているんですね」

芝浦工業大学の収益事業会社・エスアイテック常務執行役員の川崎恒雄さん

 「当社は工業大学ならではの専門性と強みを生かし、人材派遣サービスを展開しています。卒業生で、企業で活躍し退職したエンジニアらを中心に人材バンクに登録し、建設会社やメーカーに派遣して働いてもらうのです。施設管理や物販などを含めた会社の売上高は、年間15億円前後で推移しています」

かすみさん

 「事業内容に制限はないのですか」

日本私立学校振興・共済事業団私学経営情報センター経営支援室長の田辺和秀さん

 「文部科学省は、投機的な事業や風俗営業など学校法人にふさわしくない事業はしないよう指導しています。それ以外は、幅広く事業を認めています。また、株式会社形式で収益事業を行う場合も、教育研究活動と直接的につながっているものについては、学校法人がその会社に50%以上出資することを認めています」

かぶとくん

 「もうけたお金はどうしているのですか」

川崎さん

 「当社では収益の一部を寄付金として大学に還元しています。これまでに約3億円を大学に寄付することができました」

博士

 「一般の株式会社に比べ、税制面での優遇もある」

田辺さん

 「学校法人が直接に収益事業を行う場合は法人税が軽減されます。また、大学がつくった収益事業会社が当事業団を経由して大学に寄付をした場合、全額を損金算入でき、税負担の軽減が可能です。大学がコスト削減のために、これまで一般業者に発注していた業務を、自ら設立した事業会社に委託するケースも増えています」

博士

 「ただし、収益源の多様化は大学の財務の下支えにつながる反面、赤字の収益事業を抱える大学も少なくない。本業の教育研究から離れた事業ほど、そうしたリスクが増すことも忘れてはならないだろう」

定員割れ約半数 厳しい経営環境
博士

 「大学の収益事業を考える上で見逃せないのは、大学を取り巻く厳しい経営環境だ」

田辺さん

 「少子化で18歳人口は1992年度と比べ約4割減る一方、全国の4年制私立大学は379校から559校に増え、定員割れの大学は今年度47%に達しました。学校法人の3分の1が赤字という厳しい状態です」

かすみさん

 「大学の収益事業は、大学の財務立て直しに貢献できるかしら」

日本総合研究所主任研究員の中原隆一さん

 「大学の持つ資産やブランドを積極的に活用して、ビジネスにつなげるという考え自体は大事です。ただ、学校法人全体に占める収入はごく一部です。大学の本業は教育研究であり、経営がうまくいかないから収益事業でカバーしようというのは、本末転倒と言えるでしょう」

田辺さん

 「学校法人の収入構成をみると、全体の8割近くを学生納付金が占めます。経営を安定させるには、学費をいかに確保するか、学生をいかに集めるかに尽きます。大学はそのために努力が必要です」

博士

 「大学が資産運用で多額の損失を抱えたことも報じられたが、収益事業にしても資産運用にしても、元手は学費。あくまでも本業の教育研究に軸足を置いた経営が肝要じゃな」

読売新聞 2009.2.24

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/trend/dr/20090224-OYT8T00642.htm