少し汚い女とキスをした。
口紅の味が僕の胃液を逆流させたのだ。
嫌な気分だ。
彼女は鼻と頬の境目にクリトリスのような突起物があり
ショートカットの艶のない髪型が疲れた主婦感にあふれていた。
汚れたコンビニの制服が似合う女だ。
顎を上に向けて全体を見わたす顔は可愛い。
目が色素が弱いのか薄い栗色で弱々しく
鼻の突起物との妙なアクセントが魅力的に映り、
デートをした。
彼女はいつもうつむいて彼女より背の高い僕はいつも彼女を見下ろしながら話をした。
可愛さが半減して艶のない髪の毛にむかっていつも話をしていたので
セックスについてはやっても想像のつく範囲内に思えたので
性的な魅力が沸き起こらず僕を覆う透明な膜を突き破るために彼女を口説いたのだ。
地下2階の居酒屋さんを出るとそこはは綺麗にデコレイトされた和風庭園の敷石道だった。
お酒で気分を良くした彼女は僕の肩に寄りかかりながらキスをせかすようにゆっくり歩いた。
僕は当然のようにキスをした。
当然の流れはそこに存在し、当然のように拒絶は許されない。
食事が終わって彼女はトイレで化粧を直していた。
新しく塗りたくられた口紅の味に僕は吐き気を催した。
タイプの女の子の口紅の味はおいしいが
タイプでない女の子の口紅の味は気持ち悪い。
あくまで社交辞令的な場面でのキスだったが
僕は気持ち悪くて口紅の脂分を僕の唇の外側で滑らしながら
僕の内部には断固として受け入れない努力で精一杯だった。
長い拷問的なキスが終わると
彼女の目に涙があふれだしそうに溜まっていた。
弱々しい栗色の目からあふれ出すとこまるので
僕はもう一度短いキスをして出口の階段を地上へと急いだ。
地上に戻った僕たちは行き場を失い
タクシーを拾ってラブホに行って交わった。
彼女の愛液は無臭だった。
サルのような行為の終わった後、彼女は無口でなくなった。
僕はサルのような行為の後は出来ることなら空想にふけりたい。
でも彼女はまるで僕との主従関係が出来上がったかのように自信に満ちていた。
彼女は眼に見えない透明な膜から解放されたのだ。
僕に「もっとわたしのこと聞いてみて」とせかされ
彼女の小さいときの話を訊ねると
彼女は顎を上に向けて話し始めた。
彼女の言葉は僕の耳では消化できなくなっていった。
僕は眼に見えない透明な膜から解放されずに
空っぽになった精子袋を満タンにするまで
次の機会を待たなければいけなくなったことを考えながら
しわになったスーツを着て
「精算するよ」と言ってタッチパネルへ向かい
長かった彼女との1日から抜け出せる喜びに胸が騒いだ。