イくときに、とても哀しい声を出す女性がいた。
普段、話したり、見た目からは想像はできなかった。
綺麗なさらさらの髪の毛はセットなんかしなくてもいつもツヤツヤで清潔感に溢れ
顔や地肌も、必死で化粧水とか努力しなくてもいつも瑞々しく透明感に包まれて
汗や体臭もいわゆる若い人特有の甘い香りで嫌悪感を抱かないニオイで
知性的で「私はIQ高いけどそんなの自慢しないわよ」という雰囲気を醸し出して
パーティーに行けば、とりあえず彼女とやりたいと願う童貞男は5,6人はいて
一緒に連れて歩いても全然恥ずかしくなく、切なさからは一番遠いところにある女性だった。
彼女とはアメリカのオレゴン州の大学の学生寮で知り合った。
僕は19歳で彼女は21歳だったように思う。
オレゴン州の秋から冬の雨季のころだったのではないだろうか。
オレゴン州の雨季は人間を極限の鬱の状態を作り上げることができる。
そんな季節に彼女は日本の有名私立大学を休学してオレゴン州にやってきたのだ。
ナメクジの缶詰をお土産に買って帰ろうと幸せそうに彼女は酔っ払ってた。
年上の彼女は僕をリードするようにエッチをした。
寮のベッドで彼女の清潔感のニオイが染み付いたシーツが僕を奮い立たせる。
馬鹿にされない程度に愛撫して馬鹿にされないように愛撫されたのだと思う。
馬鹿にされないように僕は彼女に挿入する。
彼女の乳房は全然記憶にない。彼女のま○こも全然記憶にない。
記憶の細い糸を濁りきった底なし沼から釣れた魚を引き上げるように
大切に慎重に引き上げないと顔も思い出せないくらいだ。
慎重さを欠くとたぶん違う顔が浮かび上がってきてしいそうだ。
僕は慎重に糸を引っぱる。
彼女はホントにいったのか演技かよく思い出せない。
彼女は「イク、イク、イク」と3回言った。
そのあとも何か言ってたのだろうけどその「イク、イク、イク」が哀愁に満ち溢れすぎて
カセットテープの歌が終わっていくようにフェードアウトしていった。
その哀愁「イク、イク、イク」は勝手にある女性を僕の脳に映し出す。
実際にいたのかどうかはわからないどニオイと映像と音は鮮明だ。
昭和50年代の下町で、下水や溝や生活臭のニオイが充満する舗装されてない路地ですれ違った
不倫しながら一人慎ましく古いアパートを借りて保険会社に勤めている
40代前半くらいの女性がタバコとか安っぽい香水とか昭和の掃き溜めすべて交じり合った
ようなニオイをさせながら6歳くらいの僕に「ここは邪魔になるからよそで遊びなさい」と
優しくささやいた女性の声だ。
たぶん実際に存在はしていたのだろう。
怖くなったので僕は射精するしかこの状況から逃げる方法がないのを発見して
さっさとイって彼女をだまらせた。正しい選択だった。
顔も思い出せないくらい深い記憶の隅に追いやられても
あの声だけは何かの拍子に僕の脳によみがえってきてしまうのだ。
今日まみとエッチしてたとき
まみがちっちゃな声で僕に何かささやいた。
僕は聞こえなかったので
「ん?何ていったの?」と聞いたときにいきなり蘇ってきたのだ。
たぶんまみは「今日は中はダメよ」と言ったのか
「今日感じすぎる」とかその程度のことを言ったはずなのだが。
オレゴン州のナメクジの缶詰まで記憶が遡ってしまったのだ。
昭和50年代の昭和の掃き溜めのニオイも一緒にだ。
まみの乳房は大好きだ。
重厚で柔らかいの良い。
まみは声を殺しながらイってくれた。
イってもいいが「イク、イク、イク」のあの声だけは
二度と会いたくはないものだ。
演技だったとしたらもっと許せないと僕は思う。