一度桐朋学園の学生の時、原田幸一郎先生のレッスンへチャイコンをもってったことがある。
全楽章なので、30分ほど弾いたが先生のコメントは5秒で終わった。
弾き終わったあとしばらくの沈黙があって。。
小さな声で
「君ダメだよ、ピンカス ズッカーマンがちょっと多すぎるよ」
っておっしゃった。。
その衝撃のアドヴァイスと、曲の長さと先生の言葉の寸法の合わなさに
当時の僕はちょっと先生の言っている意味がわからず、、
ちょっと音がつぶれてたって事かな。。
あ、ちょっとやる気なく見えるって事かぁ。。 ふむ。。
なんて思いながら、憧れの巨匠を傷つけながら特にそれ以上幸一郎先生には追求せず、 「ああ、そうですか」 と言って先生の家を後にした。
でも最近改めてズッカーマンの演奏を聴いていて、今ならよくわかる。
彼のもっているものと、あのキャラクターで、あの弾き方やスタイルで説得力があるんだ。 やはりそれぞれ演奏家は自分の表も裏も理解し、キャラクターを生かし、まねではなく自分のみの道を究めなければならない。
名教師、原田幸一郎先生の5秒のお言葉を理解するには15年の歳月がかかった。
