今日は吉川晃司さんのデビュー主演映画「すかんぴんウォーク」についておしゃべりしたいと思います。
「すかんぴんウォーク」は吉川晃司さんのデビューに伴って1984年に公開されたいわゆるアイドル映画です。
吉川さん演じる主人公の民川裕司は、何者かになりたいという夢を抱いて、広島から東京に身一つで家出してきた18才の青年。
広島出身でこれから芸能界という大海原に乗り出す吉川さんご本人と重なるキャラクター設定になっています。
なんとなく役者を目指していた裕司が、ひょんなことから歌い始め、売れないロックバンドのボーカルを経て、自分が本当にやりたい音楽に目覚めていくといったサクセスストーリー。
こう書いてしまうとものすごくありきたりな話に思えてしまうかもしれませんが、一つ一つの細かいエピソードが割と胸にずしんと来る映画です。
それもそのはず、「すかんぴんウォーク」はアイドル映画と言えど、脇を個性的な役者陣が固めていて、強烈な存在感を放つ準主役の山田辰夫さんをはじめ、田中邦衛さん、蟹江敬三さん、原田芳雄さん、平田満さん、室井滋さんとそうそうたるメンツが出演しているのです。
夢を掴み取っていく裕司とは対照的に、夢破れた人がたくさん出てくるのですが、「夢破れたとて、人生は終わらない」といった世界観がしっかり描かれていて、それがこの映画に深みを持たせている気がします。
すごく印象的なセリフがたくさん出てくるのですが、その中の一つを挙げてみたいと思います。
鹿取容子さん演じる落ち目の女優がポルノ映画の仕事を打診されているのですが、その仕事を受けたのかどうかを裕司から訊かれて、こんな風に答えます。
「どっちとも決めてしまえば楽なんだろうけど、楽する前はしんどいものよね」
楽になることが良いことなのか悪いことなのかは分かりませんが、人生でこんな風に悩むことって一度や二度はあるように思えます。
ウェイト=スミス版タロットの「世界」は、今いる場所でどれだけ自分のダンスを踊ることができるかを示唆するカードです。
「すかんぴんウォーク」は、画面の端々から、「アイドル映画という枠組みの中で、どれだけやりたいことをやれるか」みたいな大森一樹監督の気概が伝わってくる作品のように思えます。

