昔勤めていたほぼブラックと言ってもいい企業に、ちょっと困ったマネージャーがいました。
いわゆる生え抜きの社員で、ほとんどの社員が毎日残業しているなか、彼だけが定時で帰宅していました。
当然、仕事はいい加減で、やってくる仕事は部下に投げっぱなしの無責任男だったのですが、機嫌を損ねると病的に怖いところがあったため、上司も同僚も見て見ぬ振りをしていました。
ある時、用事があって、不意にこのマネージャーのデスクを訪れると、彼は慌てて何かを隠しました。
ちらっと彼の手元を見ると、それは郵便貯金通帳でした。
皆が頭から湯気を立ち上らせて働いているというのに、彼は暇を持て余して、優雅に郵便貯金通帳の残高を眺めていたのです。
同僚たちと飲みにいった際、この話をすると、案の定ウケがよく、一人が半分呆れ顔で、「郵便貯金ってとこが手堅くて、あいつらしいよね」と言いました。
皆で大笑いしたのを思い出します。
また別の職場の話になりますが、ある時、この会社にリストラの嵐が吹き荒れて、私がいた部署の人たちはほぼ全員リストラされることになりました。
彼らのほとんどはものすごく良い条件で働いていたため、リストラの対象者になった途端、当然のごとく憤慨しました。
しかし、彼らは不平不満を口にしながらも転職活動の情報交換をし、「どこそこに決まった」「よかったね~」などと互いに報告し合ったりしていました。
そのなかに、たった一人、全く話の輪に加わらない女性社員がいました。
彼女はずっとマネージャー職に就いており、会社にそんなルールもないのに勝手に在宅勤務をしたりして、この会社にいるメリットを人一倍謳歌していました。
彼女がリストラの対象者であることは明らかなのに、いつまで経っても辞めていく素振りを見せないことから、皆が不思議がって噂し出しました。
やがて、部署内のリストラ対象者が全員会社を去ってしまうと、ある日突然、彼女が私のデスクにやってきました。
退職の挨拶でした。
しかし、その時でさえ、自分がリストラされて辞めるとは一言も口にしませんでした。
その代わり、まるで私に諭すかのように、こう言ったのです。
「あなたも、いつまでもこの会社にしがみついてないで、ね?」
もちろん、私はこの話を同じ部署の生き残り社員に報告せずにはいられませんでした。
話を聞いた社員は笑いながら、私の期待通りの反応を見せてくれました。
「しがみついてるの、あの人じゃん」
ウェイト=スミス版タロットの数札には、4のカードが4種類あります。
「ワンド4」、「ソード4」、「カップ4」、「ペンタクル4」。
これらに共通するイメージは「停止」、つまり、動きのない様子です。
ペンタクル4
中でも「ペンタクル4」のカードには、今持っているものを固守するが故に、その場を動こうとしない様子が描かれています。
何度も書いていますが、タロットカードには良いカードも悪いカードもなく、数札はある一定の状況を描いているにすぎません。
ですから、この「ペンタクル4」の人物が自分の所有物を守るために頑として動こうとしないのも、別に悪いことではないのです。
ただ、このカードを眺めていると、私の脳裏には過去に見た上記の二人が自ずと浮かんできます。
所有物を固守するのは決して悪いことではないけれど、固執が過ぎるあまり、自分を客観視できなくなった人が、どこか滑稽に見えてしまうのもまた事実なのかもしれません。
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