タロットカードのスート ~ドラマ「青い鳥」の視点から~ | さざ波スワン ~タロットと旅する~

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タロットの話題を中心に、音楽、映画、本、アートなど、様々なことをおしゃべりします。毎週日曜の夜8時にワンクリック占いを投稿しますので、ぜひお試しください。

タロットは大アルカナと小アルカナという二種類のカードから成り立っています。
小アルカナのカードはトランプを起源としているため、トランプのダイヤ、スペード、ハート、クローバーに相当するマークを持っており、これらを総称して「スート」と呼んでいます。
小アルカナのスートは、ペンタクル(金貨)、ソード(剣)、カップ、ワンド(棒)の四種類です。

 

ペンタクル(金貨)のエース

 

ソード(剣)のエース

 

カップのエース

 

ワンド(棒)のエース


これら4つのスートは、古代ギリシャで提唱された四元素、つまり、土、空気、水、火を象徴しています。
ペンタクルが土、ソードが空気、カップが水、ワンドが火という具合です。
では、これら四元素が割り当てられたスートがタロット占いで何を意味するのかというと、正直、辞書のように一言で完璧に説明できるものでもありません。
例えば、次のように書いても決して間違いではないのです。

ペンタクル=現実
ソード=思考
カップ=感情
火=活力

しかし、じゃあ、これで全てを言い表せているかというと、決してそうではありません。
タロットカードはある意味、イメージの世界です。
したがって、本当にそれぞれのスートの意味を理解しようとすると、それは最終的に個人の想像力に託される部分もあるのです。
この「想像力」とは、ただカードの絵を表面的に眺めて、思いつきで意味を作り出すことではありません。
先述のとおり、まずは四元素が象徴するものを知ることが必要であり、そこからイメージを膨らませない限り、おそらくタロットカードの醍醐味は形を成さないように思います。

今日は、私なりのスートのイメージを90年代の恋愛ドラマ「青い鳥」から捉えてみようと思います。
この「青い鳥」は豊川悦司さんが主演を務め、野沢尚さんが脚本を担当した大ヒットドラマです。
まずは簡単にあらすじをご紹介します。

 


 

柴田理森(豊川悦司)は長野県の片田舎「清澄」の駅で駅員をしています。
同じ駅の駅長である父親から、自分に好意を寄せる幼なじみの美紀子との結婚をそれとなく勧められても、今一つ彼女に対して恋愛感情を抱くことができないでいます。
そんなある日、理森は清澄駅を通学路に利用する詩織という小学生と顔見知りになります。
詩織は、幼い頃亡くなった理森の兄の同級生、広務(佐野史郎)の結婚相手の連れ子でした。
詩織の母親であるかほり(夏川結衣)は元々東京でホステスをしていたのですが、当時の夫の家庭内暴力に耐えきれず、偶然自分にほれ込んだ広務に夫との手切れ金を工面してもらい、彼について清澄にやってきたのでした。
地元の権力者である広務の父親は、水商売をしていたかほりを家政婦扱いしますが、広務はそんな冷たい父親に頭が上がりません。
詩織のためを思って、好きでもない広務との結婚を決意したかほりでしたが、慣れない環境で息が詰まる毎日を過ごしています。
理森は詩織を通して、かほりと出会います。
今まで見たことのないような、美しく自由奔放な女性かほりに理森は次第に惹かれていきます。
そして、かほりもまた、今まで接したことのないような優しさと強さを秘めた男性である理森に惹かれていきます。
広務はかほりの心が他の誰かに移りつつあることを敏感に察知すると、罰として、詩織を一人東京の学校へやると言い出します。
そのことを知った理森は駅員の仕事も何もかもを捨てて、かほりと詩織と一緒に列車に乗り込みます。
理森は二人に言います。「三人で暮らそう」
しかし、自分を捨てて逃避行に旅立った三人を、広務は激しい怒りと執念でもって探し出そうとします・・・。


と、あらすじはここら辺までにしておきます。
ちなみに、この後、広務に追い詰められた三人にはとんでもない悲劇が待ち受けています。

さて、話をタロットのスートに戻しますが、ホステス時代のかほりはとにかく、詩織のため、また自分自身のためにも安定した生活を求めていました。
当時の暴力夫は多額の借金を背負っており、家庭は経済的にも破綻していたのです。
そんな状況でかほりが最優先したものが、安定した家庭生活だったということはものすごく理解できますよね。
この安定した家庭生活というのは、タロットのスートで言うペンタクル(金貨)なのです。
しかし、そんな風に何よりも望んだ生活基盤をいざ手にしてみると、今度は愛のない広務との生活が辛くて仕方なくなります。
そんな時に出会った理森は、かほりの乾いた心に潤いをもたらしてくれる存在となりました。
つまり、本物の愛情をくれたわけですね。
この愛情が、カップです。

視点を理森に移してみましょう。
理森が駅員になったのは、幼い頃に亡くなってしまった兄の夢を代わりに叶えてやりたいと思ったからでした。
それが残された自分にとってふさわしい生き方であると考えたのです。
これはスートで言うソード(剣)です。
しかし、かほりと出会った理森は初めて、自分の中に炎が燃え立つ感覚を覚えます。
兄の死を通して辿り着いた「自分にふさわしい生き方」にはなかった、「生きているという実感」がいきなり彼の心を占めるのです。
かほりと詩織のために、全てを放り出して列車に飛び乗るシーンは、ある意味、衝動的でもありますが、それは理森が初めて自分自身の人生を生き始めた瞬間でもあるのです。
この情熱は、ワンドです。

このように、自分にとって最も大切なスートというのは、自分が人生のどのような局面に立たされているかで異なってきます。
つまり、どのスートにも良い悪いなどないし、一人の人間が一つのスートのみで語られるということもありません。
タロット占いにおける小アルカナのカードは、今この瞬間、自分の人生にどのような要素が求められるべきなのか、ヒントをくれる役割を担っているのです。

 

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