ウェイト=スミス版「女帝」のカード ~異世界と扉のお話~ | さざ波スワン ~タロットと旅する~

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何年か前に話題になった、異世界につながるエレベーターという都市伝説をご存じでしょうか。
10階以上あるエレベーターに一人で乗り込み、指定の階数を行き来すると、5階で女性が乗り込んでくるのだそうです。
続けて1階のボタンを押すと、なぜかエレベーターは上昇して10階に止まり、扉が開くと、そこには異世界が広がっているといいます。

しかし、エレベーターが異世界につながるというこの設定、実は村上春樹さんが既に1988年の小説『ダンス・ダンス・ダンス』で用いておられました。

 


主人公が北海道のあるホテルでエレベーターに乗り、扉が開いたのでエレベーターを降りてみると、そのフロアは真っ暗闇なのです。
フロアの時空は「混乱」しており、現実には存在しない何かが存在し、主人公は「つながっている」と感じます。

最近では、流れ星のちゅうえいさんが体験した下北沢の靄の夜の話に、同じ種類の面白さがあるような気がしました。

詳しい話を知りたい方はこちらの動画をどうぞ。

 


ちょっと怖かったでしょうか?(笑)

何を申し上げたかったかというと、「扉」というものが別世界とのつなぎ目になるという感覚が私たちの中にあるということです。
つまり、扉を通して、向こうの世界と行き来できるという感覚です。
怖くないバージョンで言えば、ドラえもんの「どこでもドア」もそうですよね。
今いる場所と別の場所を行き来するために、「扉」がつなぎ目になっているわけです。

ところで、ウェイト=スミス版タロットの「女帝」には「ダレス」というヘブライ文字が割り当てられています。

 


ヘブライ文字には一つ一つ意味があるのですが、ダレスの意味は「扉」です。
「女帝」に扉という意味のヘブライ文字が割り当てられているのは、やはり「行き来できること」を意味しているからなのです。

「え? どことどこを行き来するの?」

と思われたでしょうか。
それは、このカードを見ていただくと分かります。
この女帝が座っている背後には、豊かな自然が描かれていますよね。
つまり、この自然と私たちがつながっている、ということを意味するために、扉という意味のヘブライ文字が割り当てられているのです。

「自然とつながる? いや、既につながってるよね? 近場の公園にでも行けば、草木が生えてるし」

そんな風に思われた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、緑豊かな公園に行っただけでは、この「女帝」が示唆する「自然とのつながり」にはなりません。
例えば、公園のベンチに一人でぼんやり座っているとします。
ふと耳を澄ますと、そよ風が吹いて、木々がさらさらという葉音を立てています。
見上げると、空は抜けるような青さで、ちぎれ雲がゆっくりと流されていきます。
一瞬、まるで自分がこの自然と一体になったような、あるいは自分がこの自然の中へと消失していくような、そんな感覚を覚えたりしませんか。
その時、もしかすると私たちは「自然とつながった」と言えるのかもしれません。

「女帝」のカードが占いで出た場合、「今は受け身でいる時ではないでしょうか」と占い師は言うかもしれません。
自然とつながる時、私たちは「自分がどうのこうの」と考えませんよね。
ただ、自然を感じて、そこにいるだけです。
つまり、自我を忘れて、自分の中から自然に湧いていくる「何か」を受け止めるというイメージなのです。

なんとなくこわ~い都市伝説から始まったこの記事ですが、つまりはこんなことを申し上げたかったのでした(笑)。

 

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