タロットカードの「世界」って何? ~ヒッチコックのサスペンス映画「レベッカ」で考察~ | さざ波スワン ~タロットと旅する~

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先日、ヒッチコックの「バルカン超特急」を取り上げたのですが、今回もヒッチコックの白黒映画「レベッカ」を通して一枚のタロットカードをご紹介したいと思います。
今回注目するタロットカードは「世界」です。

 


0番から21番まである大アルカナのなかで最後の21番に当たるカードです。
「世界」のカードはその名のとおり、私たちが見ているこの世界を表しています。
しかし、そもそも世界って何なのでしょう?
まずは、ネタバレなしで、「レベッカ」の簡単なあらすじをご紹介します。

 


 

両親を亡くし、身寄りのない「私」は、高慢なヴァン・ホッパー夫人の「雇われ付き添い人」として、夫人とともにモンテカルロのホテルに滞在していました。
同じホテルにはマキシムという大金持ちのイギリス人が滞在しており、顔見知りであった夫人を介して、「私」は彼と出会い、急激に親しくなっていきます。
マキシムは魅力的な男性である反面、大変気難しい性格の持ち主で、自分に自信のない「私」は時折、彼の一方的で冷たい態度に傷つきます。
夫人によると、マキシムは美しい前妻レベッカを海の事故で亡くして以来、ショックから立ち直れないでいるというのです。

夫人とともにアメリカへ帰国する間際、「私」は思いもかけずマキシムからプロポーズを受け、彼の大邸宅マンダレーへと移り住むことになります。
マンダレーではたくさんの使用人と、彼らを取りまとめるダンヴァース夫人が「私」を出迎えます。
しかし、屋敷の中には、いまだ前妻レベッカの面影が色濃く残っていました。
レベッカを崇拝していたダンヴァース夫人は、「私」を後妻として認めてはおらず、精神的に追い詰めて窓から飛び降りさせようとします。
今にも階下へ身を投げようとしたその時、突然、海から発煙筒が打ち上げられ、「私」は正気を取り戻します。
霧で難破船が座礁したのでした。
ところが、その船の下から小型のボートが見つかり、船室からはレベッカの遺体が発見されます。
しかし、彼女の遺体は既にマキシムが別の場所で確認を済ませていました。
マキシムは「私」に向かって初めて、自分がレベッカを愛してなどいなかったことを告白します。
そして、生前、皆から崇拝され、完璧な女性だと思われていた彼女の本性を語り始めるのでした・・・・。


物語の中盤あたりまで、主人公の「私」は常におどおどしています。
まるで、自分自身には何もなく、唯一、マキシムという理想の男性に愛されることだけが自分の人生であるかのように振る舞っています。
そのため、彼が不機嫌になると、「私」はどうしていいか分からなくなります。
マキシムの機嫌を損ねることが、そのまま彼の愛を失うことに思えてしまうのです。
そして、前妻のレベッカが美しく完璧な女性だと聞かされる度に、マキシムがいまだに彼女を深く愛しており、その存在を忘れることができないために、「私」に対して冷たい態度を取るのだと考えてしまいます。
しかし、これはあくまでも「私」から見た世界でしかありません。
物語が進むにつれ、本当はマキシムがレベッカを愛していなかったことや、レベッカが本当はどういった人物だったのかということが明らかになっていきます。
すると、「私」の世界は瞬く間に様相を変えます。
「私」は真実を知り、マキシムの自分への愛を確信することで、精神的に強くなっていくのです。

映画を観ている側からは、この「私」がいかに自分の勝手な思い込みで自信を無くしたり、不安に陥ったりしているかということが容易に分かります。
しかし、現実の世界では、私たちも多かれ少なかれ、こんな風に勝手な思い込みで世界を見ているのです。
つまり、今見ている世界は、あくまでも自分の意識を通した世界でしかありません。
決してありのままの世界を見ているわけではないのです。
私たちは皆、同じ世界を見ているかのようで、一人一人違う世界を見ています。
タロットカードの「世界」とは、こういった世界のことを指しているのです。


映画の中の「私」がマキシムの告白によって意識を書き換えたように、私たちも視点を変えることによって意識を書き換え、今見ている世界の様相を変えることが可能です。
実は、タロット占いで引くカードとは、マキシムの告白のように、意識を変えるきっかけとなる「視点」を与えてくれるものなのです。

 

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