タロットカード「運命の車輪」と映画「ミッドサマー」 | さざ波スワン ~タロットと旅する~

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タロットの話題を中心に、音楽、映画、本、アートなど、様々なことをおしゃべりします。毎週日曜の夜8時にワンクリック占いを投稿しますので、ぜひお試しください。

ここ最近、かわいい恋愛映画を取り上げていたので、またちょっと怖い映画に立ち返ろうと思います。
題材に選んだ映画は「ミッドサマー」です。

 


この映画を通しておしゃべりできるタロットカードは結構たくさんあるのですが、今回は敢えて斜めの角度から、「運命の車輪」を取り上げることにしました。
 


映画をご覧になっていない方のために、まずはあらすじをご紹介します。
ネタバレしますので、これからご覧になる予定の方は「ここからネタバレ!」以降は飛ばしてくださいね。

アメリカ人の大学生ダニーは、双極性障害を患っていた妹が両親を道連れに無理心中をしたことで心に大きな傷を負うことになりました。
ボーイフレンドのクリスチャンはダニーに寄り添いながらも、べったりと自分に依存してくる彼女を持て余しています。

夏を前に、クリスチャンはスウェーデン人留学生のペレから、彼の故郷で開催される九十年に一度の夏至祭に来ないかと誘われます。
クリスチャンはダニーに内緒で、友人のマークとジョシュとともに夏至祭への参加を計画します。

しかし、ひょんなことからダニーに計画が知れてしまい、仕方なく彼女も連れていくことになります。
ペレの案内で、四人はスウェーデンのヘルシングランド地方にある人里離れた自然豊かなコミューンにやってきます。
そこでは独特の白装束に身を包んだ人々が共同生活を営んでおり、彼らはアメリカからやってきたダニーたち、そしてロンドンからやってきた男女のカップルを歓迎します。
コミューンの宿舎はずらりとベッドが並んだプライバシーのない空間で、ダニーたちはコミューンの人々と寝起きをともにすることになります。
翌日、ダニーたちは夏至祭の儀式に参列します。
ところが、その儀式とは、高齢の男女が崖から飛び降りて自らの命を絶つという凄まじいものでした。
二人の無残な死を目の当たりにしたダニーたちはショックを受けますが、コミューンの長老は、「これは従うべき生命のサイクルなのだ」と説明します。
ロンドンから来たカップルは取り乱し、この場所から直ちに引き上げようとしますが、二人はどういうわけか行き違いになります。
二人が不自然に引き離され、姿を消してしまったことにダニーは妙な胸騒ぎを覚えますが、クリスチャンは真面目に取り合ってくれません。
夕食時、クリスチャンがかじったパイの中から陰毛が出てきます。
クリスチャンはテーブルの向こうから視線を送ってくるマヤという女性に気付きます。
どうやら、これは彼女による恋のまじないらしいのです。
二人のただならぬ気配に、ダニーはただただ不安を募らせていきます。
そんななか、マークとジョシュも姿を消してしまいます。


ここからネタバレです!

翌日、ダニーとクリスチャンは幻覚作用のある液体を飲まされます。
ダニーは女性だけが参加するメイポールダンスに駆り出され、クリスチャンは小屋へといざなわれます。
小屋の中では、全裸の女性たちと横たわったマヤが待ち構えていました。
異様な雰囲気の中、マヤを孕ませる儀式に従事させられるクリスチャン。
一方ダニーは、メイポールダンスで勝ち残り、メイクイーンとなって花冠を授けられます。
しかし、喜びもつかの間、ダニーは小屋の中の儀式を目撃してしまいます。
絶望し、号泣するダニーをコミューンの女性たちが取り囲み、ダニーを真似て泣きながら、悲しみを分かち合います。
クリスチャンは儀式が終わると、全裸のまま外へ飛び出します。
そして、土から飛び出したジョシュの片足や、ロンドンから来た男性が背中を割かれ鶏小屋に宙づりにされている姿を目にします。
驚愕したクリスチャンはコミューンの男性に粉を吹きかけられ、気を失います。
目が覚めると、クリスチャンはすっかり体の自由を奪われ、喋ることもできない状態にありました。
実は、この夏至祭には、九人のいけにえが必要とされており、ここまで、崖から飛び降りた二人、ロンドンから来たカップル、ジョシュとマーク、コミューンからの志願者二人の計八人が確保されているのでした。
あと一人をクリスチャンにするか、コミューンの中からランダムに選ばれた一人にするか、その決定権はメイクイーンとなったダニーにありました。
ダニーが選んだのはクリスチャンでした。
いけにえたちは小屋の中に置き去りにされ、火が放たれます。
小屋の外ではコミュ―ンの人々が、生きたまま焼かれていく仲間の断末魔を真似て、激しく身もだえしながら叫び声を上げます。
焼け落ちていく小屋を見つめるダニーの顔には、狂気と歓喜の入り混じった表情が浮かんでいるのでした。


北欧の白夜、緑豊かな自然、メルヘンチックな衣装や施設の装飾など、光溢れる明るい映像の中に、突如としてグロテスクな描写が放り込まれてくる異色のホラー作品です。
観光気分でやってきた異国の地で、気がついたらカルト集団のいけにえにされていたなんて、悪夢以外の何ものでもありませんよね。

タロットの「運命の車輪」は、運命などないことを意味するカードです。
気まぐれに回っている車輪にしがみついていると、偶然起こった出来事によって自分が上がったり下がったりして、ただただ振り回されるだけになることを示唆しています。
そんな風に振り回されないためには、動かぬ意志を自分の手でしっかりと握っている必要があります。
ここで言う意志とは、「〇○が好き」「〇○がしたい」といった意思表明というよりは、「〇○が嫌い」「〇○したくない」といった直観に近い感覚です。
家族を失った後、唯一の愛であるクリスチャンを失うことを恐れ、常に彼の顔色をうかがうダニーの中で、意志というものはどんどんと希薄になっていきます。
ダニーはコミューンの中で起こる出来事に何度も違和感や嫌悪感を抱きますが、クリスチャンの賛同を得られないことで、それらの感覚をなおざりにしてしまいました。
結局、復讐心からクリスチャンをいけにえとして選んだダニーでしたが、その決断さえも彼女の意志の力によるものではなく、カルト集団が仕掛けた巧みな心理操作の結果であったと言えます。
最終的にダニーは自分自身まで失って、カルト集団の思惑の中に飲み込まれてしまったのでした。

タロット占いで「運命の車輪」が出たとしたら、起こった出来事を偶然と捉え、決して自分の意志を見失わないことが大切です。
そのような姿勢こそが、人生を未来の可能性へつなげてくれるからです。

 

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