トート・タロットの「愚者」像 | さざ波スワン ~タロットと旅する~

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今日はタロットカードの「愚者」について、おしゃべりしたいと思います。

 

ウェイト=スミス版タロットの「愚者」


以前も何度かこのカードについて書いたことがあるのですが、一般的に「愚者」と言うと、何か馬鹿げたことばかりしているような愚かな人間を想像してしまうかもしれません。
しかし、ウェイト=スミス版タロットに関して言えば、このタロットを制作したアーサー・E・ウェイトは、カードに描かれた人物は「知性溢れる顔つき」をしていると言います。
ウェイトは自らが所属していた秘密結社「黄金の夜明け団」の教義を基にしてタロットカードを制作しました。
同じように「黄金の夜明け団」の教義を基にしてタロットカードを制作した人物に、オカルティストのアレイスター・クローリーがいます。

 

アレイスター・クローリー


クローリーが制作したタロットカードは「トート・タロット」といいます。

クローリーは、トート・タロットの「愚者」を解説する過程において、救世主という概念を用いています。
その部分を簡単にまとめると、こんな感じです。

救済とは、筋の通った言葉では説明できないものである。
理屈をもってすれば行き詰まって破滅してしまう。
つまり、解決をもたらしてくれるのは、聖なる狂気だけである。
救世主のあらゆる伝承に共通しているのは、救世主の出現が、完全に常軌を逸した、何か異常な事件の結果であるという点である。
こうして見た時に、救世主の具体的な像の答えとして、「愚者」が示される。


つまり、トート・タロットの「愚者」というのは、理屈では解決できないことを、「聖なる狂気」でもって解決に導く救世主の具体像として示されたものであると言っているのです。
先にお断りしておきますが、これは「愚者」の解説のほんの一部分でしかありません。
しかし、私はこの救世主に関するクローリーの考えに触れた時、近年に起こったある重大事件を思い出さずにはいられませんでした。
ここでその事件に具体的に触れることは敢えて控えさせていただきますが、確かにそれは常軌を逸した事件であり、法、倫理、道徳観念からすれば、許されるべきことでは決してありません。
しかし、その事件がきっかけとなり、それまで手の施しようのなかった問題にある意味、救済的な動きが生じたことは事実です。

タロットの話に戻りますが、「愚者」というのが単なる「愚かな人」以上の深い意味を持っていることはお分かりいただけたでしょうか。
このカードは、言ってみれば、人間の思考がコントロールできる範疇を越えて、ものごとが動き出したり、思いもよらぬ方向性が提示されることまでをも意味しているのです。
タロット占いで「愚者」のカードが出た時、多分、大概の占い師さんは、「とにかく思いついたことを何でもやってみては?」といったようなことを口にすると思います。
その背景には、このような「愚者」に対する考え方があるのです。

 

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