内田也哉子さんの『BLANK PAGE』とタロットカードの「愚者」 | さざ波スワン ~タロットと旅する~

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今日は内田也哉子さんの『BLANK PAGE 空っぽを満たす旅』という本についておしゃべりしたいと思います。

 


内田也哉子さんは、ご存じ、内田裕也さんと樹木希林さんの一人娘です。
也哉子さんは、2018年9月に母・樹木希林さん、翌年2019年3月に父・内田裕也さんと、立て続けにご両親を亡くされた後、「週刊文春WOMAN」からこの「BLANK PAGE」の連載を打診されたそうです。
あとがきからその時の心境をつづった部分を抜粋させていただきます。

冷静な頭からは「今は何も考えられない」と信号が送られてくる。けれど、胸のどこかで、何かを書くことで、今をなんとか生きられるかもしれない、という漠然とした灯のようなものがはためいていた。

内田裕也さんと樹木希林さんは、一般に名の知れた芸能人というだけでなく、その生き方や夫婦の在り方が事あるごとに世間の注目を浴びるような、インパクトのあるお二人でした。
人生の核心的登場人物を失った」也哉子さんは、その喪失感をBLANK PAGE(「卸したてのノートのまっさらな頁」)に見立て、そのページを埋めていくかのごとく、あらゆる職業に携わる人たちに出会ってみることにされたそうです。

私ははじめ、この本を対談集のつもりで購入したのですが、いざページを開いてみると、対談形式になっているのは一部だけで、ほとんどの部分は対談を基にした也哉子さんによるエッセイで構成されていました。
また、内田裕也さんの葬儀の際の喪主挨拶全文や、樹木希林さんとの思い出、お二人を見送った後に夫・本木雅弘さんに後押しされて出かけた一人旅の記録なども収録されています。

対談相手は、小泉今日子さん、鏡リュウジさん、谷川俊太郎さん、横尾忠則さんなどなど、本当に多種多様で興味をそそるような方々ばかりです。
私は個人的に也哉子さんとキョンキョンがどんな話をするのか興味津々で、本を買ったきっかけも実はキョンキョンの名前が対談相手にあったからでした。
也哉子さんとの対談が行われた当時、キョンキョンは丁度、長年所属していた大手芸能事務所から独立したばかりでした。
也哉子さんは、その頃、騒がれたキョンキョンの不倫報道についても触れており、父・裕也さんの自由恋愛に翻弄されたご自身の経験を振り返って、こんな一文をつづっておられます。

ただ、自分も含めた人間の在りように、そこはかとない空しさが押し寄せてくることはある。

注:この一文はキョンキョンではなく、ご自身の経験について述べている。
 

対談を通して見えてくる也哉子さんのまなざしは実に人間的です。
表面的な美辞麗句を並べるのではなく、対談相手の言葉を深く吟味して、そこに自分の素直な感情を沿わせていくような文章がとても印象的でした。

私は、このエッセイを連載されていた頃の也哉子さんは、まさにウェイト=スミス版の「愚者」だなぁ、と思わずにいられませんでした。

 


「愚者」は、まだ何も始まっていない、白紙の状態そのものを表すカードです。
しがらみも計画も何もない状態は自由と言えば聞こえはよいですが、いざ、そんな状態に置かれてみると、人はどうしていいのか分からなくなるものかもしれません。
也哉子さんはご両親を亡くされた喪失感をどう扱えばよいのか分からないまま、偶然にも舞い込んできたエッセイのお仕事を引き受けることにされました。
そのことを也哉子さんは奇しくも本の中で

 

行方知らずの放浪の旅に出たのだ。

 

と表現されています。
人生には、そんな風に「今、どうしていいか全く分からないけれど、とりあえず、風の向くまま、気の向くまま、歩き出してみる」ことが必要な時があるのかもしれません。

 

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