タロットカード「塔」と言外の意味 | さざ波スワン ~タロットと旅する~

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私自身は実際にご依頼を受けたことがないのですが、恋愛相談あるあるで、こんなものがあるようです。

「彼氏が忙しく、もう何か月も会えない状態が続いているのですが、いつ頃、会えるでしょうか?」

こういう類いのお悩み、特に若い頃には経験されたことがある方、結構いらっしゃるんじゃないでしょうか。
予言占いをされる占い師さんなら、「あと三か月くらい、待ってみては?」なんて、具体的な答えを返してくれるかもしれません。
私は予言占いはしないため、もし占うとなったら、このお悩みを抱えているご本人に対してカードを引くことになると思います。

大昔、友達に彼氏ができて、「いいなぁ。それでどうなのよ?」なんて仲間内で冷やかしたり、羨ましがったりしたことがありました。
しかし、しばらくすると、友達はぱったり彼の話をしなくなったのです。
そして、ある時、彼と別れたことを私たちに打ち明けました。
聞いてみると、ある日、突然、彼と連絡が取れなくなってしまったというのです。
当時は携帯電話の時代でした。
友達は彼に何かあったのかもしれないと心配になり、思い切って家を訪ねてみたそうです。
家から出てきた彼はピンピンしていました。
仕事が忙しくなったので、付き合うことができなくなった、と彼は友達に告げたそうです。
友達は、「とにかく、彼に何かあったのかと心配だったから、無事を確認できて安心した」と言っていました。

よく聞く話かもしれません。
私も当時、「あー、そのパターンか」と思った覚えがあります。
もちろん、口に出して言うことはしませんでした。
なぜなら、友達は連絡が取れなくなった彼の身を本気で案じて、結果的に安否を確認できて安心した、と説明したからです。
もっと正確に言うなら、そのように自分に言い聞かせていたからです。
誰かが指摘しなくても、友達はとっくに心の底で分かっていたはずです。
分かっていても、「そんなことない」と思いたいがために、「何かあったのかもしれない」と考えて、彼の家まで行ってしまったのです。

タロットカードの「塔」は、感情と思考の間に位置するカードです。
感情と思考の均衡が取れなくなった時に、塔は崩壊します。
彼が自分のことを好きではなくなったという現実を受け入れるのは、当然、辛くて、悲しいことです。
しかし、その辛くて悲しいという感情を受け入れることを拒否して、「彼が連絡をくれないのは、何か大変なことが起きたからだ」という考えにいったんは逃げたとしても、いずれ、その考えは現実の出来事によって打ち砕かれてしまうのです。
それが「塔」のカードが示す世界観です。

人生を新たな可能性に向かって進めていくためには、この「塔」の崩壊を経験することがどうしても必要な時があるのです。

私はたまにこんなことを考えます。
言外の意味をくみ取らない人のうち、どれだけが本当に分からなくて、どれだけがただ自分を偽っているだけのかなぁ、と。
なぜなら、私たちがものごとを認知する方法は明らかに言葉だけではないからです。
こんなことを書いている私自身、認めたくない感情を覆い隠すように、巨大な思考の塔を打ち建ててしまっていたりするのです。

 

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