少女漫画で知る―タロットの「塔」ってこんなカード | さざ波スワン ~タロットと旅する~

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タロットの話題を中心に、音楽、映画、本、アートなど、様々なことをおしゃべりします。毎週日曜の夜8時にワンクリック占いを投稿しますので、ぜひお試しください。

皆さん、このカードをご覧になったことはありますか?

 


 

これはウェイト=スミス版タロットの「塔」のカードです。
毎週日曜に投稿しているプチタロット占いにも何回か出たことがあったかと思います。
初めてタロット占いを依頼して、このカードが出たとしたら、大半の方は「え? 何、このカード?」と驚かれるかもしれません。
見るからに明るい絵柄ではないし、不穏な空気さえ感じます。
しかし、実際、「塔」は不吉なカードでも何でもありません。
まさに、このカードを見た時の「ええっ?!」というような驚き―そんなものの本質について語っているカードなのです。

私たちがどういう時に驚くかというと、自分が「こうだ」と思っていることから外れたことが起こった時ではないでしょうか。
いわゆる「想定外」というやつですね。
自分が「こうだ」と思っていることというのは、当然ながら、絶対的な真理ではありません。
ただの主観です。
主観自体は悪いことではないけれど、それが現実とかけ離れていた場合、あるいはずれていた場合、不都合が生じてくるのではないでしょうか。
「まさか!」なんて、いくらびっくり仰天したところで、そこにあるのはただの現実でしかないのです。

「塔」のカードが少し理解しやすくなる、ちょっとした例を漫画から引っ張り出してきました。
くらもちふさこさんの「海の天辺」という少女漫画、ご存じの方、いらっしゃるかなぁ?

 


一言で言えば、中学生の女の子が先生を好きになるお話です。
「少女漫画にありがちだな~」と思った方!
おそらく、想像されているよりも現実的で、想像されているよりも意外性に富んだ内容だと思いますよ。
どこが現実的かと言うと、決して「漫画の世界だからこそ可能な展開」で話が進んでいくわけではないところ。
意外性で言えば、これが学校を舞台にした先生と生徒のラブストーリーといったような狭い枠には収まりきらない、むしろ人間対人間のお話であるというところ、でしょうか。

ちょっとしたネタバレを含みますが、あらすじはだいたいこんな感じです。

主人公のシーナこと椎名和佳子は、理科を担当する河野先生を好きになります。
若くてノリの良い河野先生は生徒たちから人気があり、恋心を抱く女子生徒もいます。
シーナも最初は憧れにも似た気持ちを抱いていたのですが、いつからか、そんな子どもっぽい恋心に変化が生じ始めます。
しかし、偶然にも、河野先生がなんと年上で未亡人の山崎先生と付き合っていたことを知ってしまいます。
がーーーーーーん!
ちょっぴり、この衝撃の場面を覗いてみてください。

 


 

いくら若くてノリが良いとはいえ、シーナの中で、河野先生はれっきとした先生であり、少なくとも、教室の中では清廉潔白な「カミサマ」であるはずでした。
それが、未亡人で子持ちの山崎先生と大人の関係にあっただなんて、これはもうショックと絶望でしかないわけです。
しかし、山崎先生は、シーナに、河野先生の家の合鍵を手渡します。
そして、きっぱりと、「この現実を乗り越えないと 河野さんはあなたの人にならないわよ」と言い渡すのです。

 


物語はここからが本番で、自分を生徒としてしか見てくれない河野先生に対して、シーナがどうやって思いを伝えていくのかがこの漫画の最大の見どころなのです。


以上の説明で、どこらへんが「塔」のカードだったか、お分かりになったでしょうか。
ずばり、山崎先生の「この現実を乗り越えないと、河野先生はあなたの人にならないわよ」というセリフ、これこそが「塔」のカードの言わんとするところなのです。
先生とは清廉潔白な存在であり、先生と生徒の間には不動の壁があってしかるべきだ―こんな思い込みが衝撃の事実によって打ち砕かれた後、シーナはそれでも現実と向き合って、河野先生への思いを実らせるために考え、行動していきます。
この恋は果たして実るのでしょうか・・・(続きは漫画でどうぞ🤭)。

「塔」が不吉なカードでも、怖いカードでもないこと、お分かりいただけたでしょうか。

 

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