The CharlatansとTim Burgess その3 | さざ波スワン ~タロットと旅する~

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どこか夢見るような少年の眼差しを持ったTim Burgessですが、彼はある時期、ひどいドラッグ中毒に陥りました。
元々、ドラッグユーザーではあったTimなのですが、その使い方が度を越えてしまったきっかけの一つは、「その1」で述べた、バンドメンバーのRobが亡くなったことでした。
実はRobは即死したわけではなく、車のサンルーフから放り出され、45メートルも先のトウモロコシ畑に叩きつけられた後、なんとか立ち上がって、ほんの少しの間、よろめきながら辺りを彷徨ったらしいのです。
Timは、今でもその姿を想像してしまうといいます。
Robがふらつきながら歩いていたその最後の時間に、もし自分の人生のフラッシュバックを見ていたとしたら、「色々あったけれども、いい人生だった」と思えていたらいいのに、とTimは自叙伝につづっています。

Robが亡くなった後、Timはひどい罪悪感に苛まれました。
というのは、Robが亡くなる二日前、TimはRobと仕事の仕方について激しい口論を戦わせてしまったからでした。
その頃、バンドは新曲のセッションに取り組んでいました。
Robは自分が気に入らない曲の時は故意に演奏を台無しにし、気に入っている曲の時でさえも、ドラッグのせいでちゃんと演奏することができなかったそうです。

さらに言えば、Robの勝手な行動のために、アルバムのレコーディングには、前回のほぼ倍近くの時間が費やされつつありました。
Timと口論した後、Robは車に飛び乗って、家に帰ってしまいました。
Timは他のメンバーに、Robと口論したことを打ち明け、彼を解雇するべきだと強く主張したそうです。
しかし、まさか、その二日後、Robが帰らぬ人になるとは、思ってもみなかったのです。
こうした経緯から、Timはその後10年あまり、Robの死に対する罪悪感を拭い去ることができなかったといいます。
Timのドラッグの問題は、そういった彼の精神状態も大きく影響していたようです。
また、ロックバンドにありがちな、マネージャーがバンドを利用して私腹を肥やしたり、会計を任せていた人物がバンドの金を横領するといった問題も重なって、その頃のTimはとにかく、あんなに愛していた自分のバンドを壊してしまいたい衝動に駆られたといいます。

Timのドラッグとアルコールへの依存度はどんどんと増していき、最悪の時には、ステージもまともにこなせなくなっていたそうです。
アメリカからイギリスに戻ってくる時に、コカインを密輸する独自の方法まで編み出すようになっていました。
あんなに愛らしいルックスだったTimはこの頃、体重が増え、老けた風采になってしまっていたそうです。
ツアーを前に、ドラッグを抜こうと一人ホテルの部屋にこもったこともあり、自叙伝にはその時の凄まじい体験も詳しくつづられています。
Timは人から勧められたことをきっかけに、一大決心をして、あるドクターの元を訪ねます。
そこで初めて、自分が今まで抱えていた問題を他人に打ち明けたそうです。
そうすることで、自分には確かに問題があったのだということをようやく認めることができ、罪悪感を払拭できたそうです。
ドクターが勧めたドラッグのデトックス・プログラムをこなした結果、Timはやっと地獄のような日々から生還できたのでした。

タロットカードの「悪魔」は、気付かぬうちに何かに囚われてしまうことを意味します。

その何かが自分の中の空洞を満たしてくれると思い込んでしまうためです。
もちろん、その何かは本当には空洞を満たしてくれたりしません。
囚われた状態から抜け出すには、自分自身がそのことに気付くしかないのです。
Timは、最後の最後に、人生をかけた音楽をとるのか、ドロップアウトして路頭に迷うのか、自分自身に問うたのでした。
そして、自分を本当に満たしてくれるものは、まぎれもなく音楽であるということに、気付いたのではないでしょうか。

 

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