お酒とカードと自己嫌悪と | さざ波スワン ~タロットと旅する~

さざ波スワン ~タロットと旅する~

タロットの話題を中心に、音楽、映画、本、アートなど、様々なことをおしゃべりします。毎週日曜の夜8時にワンクリック占いを投稿しますので、ぜひお試しください。

マルセイユ版タロットの「節制」は、中庸を行くことを示唆するカードです。

 


適度に慎むことを意味する「節制」は、ヨーロッパの枢要徳の一つでした。
「節制」は、ワインを水で薄めている擬人像として描かれます。
暴飲するでもなく、禁酒するでもなく、適度にお酒を嗜むことを表しています。
「適度」を美徳として教え諭す時に、お酒ほど説得力のある例え話ってないんじゃないでしょうか。

中島らもさんは、自らのアル中体験を基にした小説「今夜、すべてのバーで」の中でこんな風に書いています。

  酒の味を食事とともに楽しみ、精神のほどよいほぐれ具合を良しとする人にアル中は少い。そういう人たちは酒を「好き」ではあるけれど、アル中にはめったにならない。
  アル中になるのは、酒を「道具」として考える人間だ。おれもまさにそうだった。この世からどこか別の所へ運ばれていくためのツール、薬理としてのアルコールを選んだ人間がアル中になる。


アルコール依存症の入り口はほんの些細なことかもしれません。
中島らもさんも、内臓が強くて、若い頃からいくらでも飲めたことがきっかけの一つだったようです。
アルコール依存症とまでは行かずとも、お酒に飲まれる人、お酒が入ると人が変わる人なんかは結構身近にいるんじゃないでしょうか。
普段、あまり本音を口にできない人が、お酒を飲んだ途端、それまで溜めていたストレスを発散するかのように暴言を吐いたり、喧嘩を吹っ掛けたりすることは珍しくありません。
もとい、私がいた環境では珍しくありませんでした(笑)。

他人のことをとやかく言える立場ではないのですが、古い知り合いに、お酒を飲むと人が変わる女性がいました。
居酒屋で知らない人に絡んで口論になったり、一度などは相手が悪く、怒鳴り散らされて、本人が泣き出すはめになったこともあります。
元々酒癖が悪い人ではなかったのですが、いつの頃からか、お酒を飲むと面倒な人になってしまいました。
飲むと面倒な人が全員そうだとは言いませんが、殊に、彼女においては、普段、かなり自分を押し殺して、ストレスを溜めていたんじゃないかと思えるふしがありました。
「自分は目立つことが嫌いだ」と口癖のように言うのですが、実際に自分以外の誰かが座の主役になると、必ずといっていいほど悪酔いし出すのです。
傍から見ていて、単純に「口ではそう言っているけど、本当は自分が主役になりたいんだな」と思えました。

ウェイト=スミス版タロットの「力」は、自分の中に抑えつけられている欲望を認めようというカードです。

 


それは言い換えると、自分のだめなところを受け入れるということでもあります。
頭では「自分から目立とうとするなんて、みっともないことだ」と考えていても、心の中には「皆からちやほやされたいなぁ」という気持ちがあるのかもしれません。
そんな自分の気持ちを無理矢理押し殺していると、何かの拍子にふと嫌味な言葉を口にしてしまったり、お酒の勢いに任せて悪目立ちしてしまったりするのかもしれません。
もしそこで「力」のカードが出たとしたら、自分に「ちやほやされたい」という気持ちがあることを認めて、「そんな自分ってかわいいもんだ」と開き直ってみてはどうか、ということになります。

しかし、この「力」のカードの示唆していることは、個人的にかなり難しいことのように感じられます。
私もつい最近、このカードを勉強している時に、自己嫌悪に陥って、「わ~」と頭を抱えたくなりました(笑)。
一生、自分の本当の気持ちや弱いところを認めないままの人も、世の中にはたくさんいるんじゃないかなぁ。

 

さざ波スワンの個人鑑定はこちらから

アメブロなどのSNSで相互フォロー

させていただいている方には特典あります