埼玉的研究ノート

埼玉的研究ノート

特定のスタイルを気にしない歴史と社会についての覚書。あくまでもブログであり、学術的な文章の基準は満たしていません。ブログの説明を入力します。

参院選の焦点の一つは消費増税の是非である。多くの野党が増税延期・停止ないし多少の減税を訴えるなか、山本太郎のれいわ新選組は、さらに過激にその廃止を訴える。これをいかにもポピュリズムであるとして冷笑する向きも少なくない。

 

では廃止した分の税収をどうするのか。ポピュリズムかどうかの境目は、その見通しがあるか否かにある。

 

山本太郎は、法人税と所得税の引き上げによる補填を唱える。事実、消費税導入以来、法人税は下がる一方であり、税収のなかで法人税が占める割合は、消費税導入当初に占めた34.3%から2018年には21.5%まで下がり、消費税が占める割合は逆に17.7%から32.9%に増加している。https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/a03.htm

 

もちろん、伊藤元重のように、「消費税を上げて法人税率を下げるのは大企業優遇」というのは幼稚すぎる議論であり、消費税をさらに上げることは理に適っているとする論者も少なくない。https://diamond.jp/articles/-/40667(これは2013年の論考であるので、直接山本を批判しているわけではない。)

 

確かに消費税は安定的な収入が期待でき、全世代的に徴収できるという利点がある。また、世界的に法人税が下がる一方であるのは、簡単にいえばグローバル企業の誘致競争が激化しているからである。タックスヘイブンを使うような露骨なやり方はしないまでも、なるべく法人税が安い国に拠点を構えようとするのは、企業の論理としては当然である。企業に逃げられては法人税が減収になるから、税率を抑えてでも残ってもらう、あるいは、進出してもらうほうが得だとする考え方は、それだけ切り取れば道理があるように見える。

 

だが、この考え方は、国の内部に引きこもった視点に基づいている。グローバル経済の深化により、法人税引き下げ競争は今後さらに激化していくだろう。もし経済格差のさらなる拡大を止めたいと本気で考えるならば、それを指をくわえて眺めているだけでよいはずがない。

 

法人税引き下げ競争を強いられる状況を脱したいと思っている国(少なくとも各国のなかのある程度以上の規模の層)は少なくないはずである。であれば、国際的にそれを抑止する方策への支持も潜在的には大きいことなる。むろん、大儲けしたい一部の企業や金融関係者は反対するだろう。だが、彼らは人口的には絶対的マイノリティである。

 

ここで鍵となるのは国際連帯税という考え方である。すでに航空券連帯税や金融取引税として部分的にこの方向性の税を導入している国はあるし、そうでなくても議論はすでに始まっている。もちろんこの流れを本格化していくには、すべての国が「せーの」で一斉に導入しなければ、それこそ導入しない国への資本流出が起こるために効果は薄くなってしまう。

 

すでに日本の外務省でも開発援助のための財源という狭い範囲の関心からではあれ、この方向性については積極的な意見も出されているという。河野外相もG20で提案は行ったようである。だが、安倍政権全体としてこうした方向性に積極的になるとは考えにくい。というのも、外交に対する基本的な方向性が、国際連帯税のような全世界を包括する方向性と異なるからである。

 

安倍外交の基本的な方針は、現在の状況なのかで日本がいかにうまく立ち回るかというものである。しかもその実態は、接待外交(個人的に仲良くなれば贔屓にしてくれるだろうという古くさい発想である)と弱者いびり(立場の弱い国が意見してくるのは許せないので毅然と対処するという)であって、何か具体的な成果が出ているわけではない。世界を回ることで「仕事をしている感」が出ているのと(かつて東国原宮崎県知事が東京などで宮崎の売り込みをして人気を博したような感じだろう)、とりあえず立場の強い国の大統領と個人的に仲良くしておけば何かいいことがあるだろうという、それこそポピュリスティックな雰囲気から広く薄くなんとなくの支持があるだけである。

 

だが、長期的に考えると、現在の状況こそを変えていかなければならない。現在の状況を与件として、その前提でしか動かないのは、いかにも腰巾着の発想である。国際連帯税は、現政権の発想の根底にあるような、「勢力圏」(特に、アメリカ対中国の)のせめぎ合いにコミットし、世界を分断していく考え方からは一向に生まれてこない。同盟国だけでなく、全世界を巻き込んだ調整が必要だからである。

 

むろん、現在議論されている国際連帯税は必ずしも法人税の代わりとして意図されているわけではない。だが、例えば世界のどこに拠点を構えようが一定の税金を取られることになれば、企業が法人税が安い国に行こうとするインセンティブは低下する。そうれば、過度に法人税を引き下げる必要もなくなる。それが実現すれば、日本人の多くを含む世界の多くの人々に恩恵がある。世界は複雑化しているが、情報ネットワークと計算機も性能を上げている。

 

つまるところ、消費税の廃止と法人税の引き上げが可能かどうかは、そうした長期的で真にグローバルな視点に立ち、世界を巻き込んでいけるかどうかにかかっている。今すぐには無理だとしても、未来永劫無理かどうかは外交を絡めたこれからの取り組み次第である。現在において無理かどうか、ではなく、発想を変えたうえでやるかやらないか、である。