ここ数日、仕事が、暇な時期に入った。



季節なんか関係無さそうに思っていたけれど、年間を通して、二回位、何となく暇な時が有るみたいで、西丘さんは、仕事の合間に、何やら、新しい遊びを始めた。



工場の敷地の木々に小鳥が来るようにと、工場の隅の木片やらを集めて巣箱を作り出したのだ。



いろいろ出来る人だと思っていたのだが、デザインはともかく、大工仕事はやや苦手らしいとわかり、四苦八苦する様子を見かねて、つい手を出したら、俺も一緒に作る羽目になってしまった。



今日は、仕事に手間どり、西丘さんより少し遅れて工場に向かった。



工場に入ろうとすると、激しい音と『…止めろ!』と言う、西丘さんの声がして、先日の事件を思い出し、心臓がぎゅっと掴まれるような感じがして、首筋に嫌な汗が流れた。



慌て中に入ると、暴れる西丘さんは襟首を掴まれ、腰に腕を回されて足が宙に浮いている状態でじたばたしていた。



『どっ、どうしたんですか?
一体、何がっ?』



西丘さんを抱えていたのは、背の高い、目付きの鋭い男。



その赤い繋ぎ姿に、思わず、『リンダ!』と言うと。



その男は片眉を上げ、
『ほうっ、俺を知っているのか?』と、にやりとした。



『中坊が紛れ込んで、何やらいたずらしているようだったから、捕まえた。』



『いや、あの、西丘さんは中坊では無く課長です。』



それを聞いて、リンダの腕が緩んだのか、じたばたしていた西丘さんが、自力で逃れ、パタパタと走り、俺の後ろに隠れたかと思うと、
『お前こそ、誰だ!』と言う。



強気な言葉なのに、俺の背中を掴む手が微かに震えていたから、思わず振り返って強く抱き締めてしまった。



『西丘さん、大丈夫です、大丈夫ですから。』



しばらく抱き締めていると、西丘さんの震えはおさまり、小さな声で
『ゆーき、苦しい…。』と俺の胸を押す。



きつく抱き締め過ぎていた事に気が付き、慌て離れる。



『…俺が居るんだが?』



腕を組み、面白そうな顔をするリンダに、
『はっ、林田さんのせいじゃないですかっ!』


『俺は、何もしていない。』



『…!』俺は絶句してしまった。



『課長の西丘です、あなたは?』と静かな表情で尋ねる西丘さん。



『俺か?
今度、こちらに配属された林田だ。
どうやら、あなたの部下と言う事になるようだ。』