最近街を歩いていると蝉の声がほぼなくなって、すっかり秋の虫の声に変わってきましたねえ。
郊外にいくとこういった自然の音で、もっと季節感なんかが分かると思うんですが、都市にいると当然そういった音は、車や町の喧噪に埋もれてしまいます。
街にはそれぞれその街の音ってのが特徴的にありますよね、例えば救急車やパトカーの音も国ごとにちがいますし、言葉の響きなんかも違いますし、地面がコンクリートなのか、またヨーロッパのような石畳なのかでも車の通る音が変わったりします。
NY住んでいた時はきづかなかったんですが、東京に帰ってきてみるとこの町のとにかくうるささにビックリした覚えがあります。
中でも一番嫌いなのがパチンコ屋の前ですね、なんかむちゃくちゃなクソトランスみたいなのがかかってるし、おそらく中がうるさいのでそれに対抗すべく、より大きな音を外にも流したりしてるのでしょうか?
謎です。
なので私が街でイヤホンをしている理由の半分以上は、音楽を聴くためというよりも、いやな騒音をきかないためのいわば”耳栓”の代わりとして付けている事が多いんです。正直東京のノイズはあまり音楽的でない気がします。萎えます。
NYとかだとたまに車の中から爆音のヒップホップとか聞こえてきたり、夜には銃声が聞こえたりw したりはしましたが、なんとなくアンビエントが音楽的で、とくに気になる事は少なかったように思います。夜は路上ミュージシャンのサックスの音なんかもおつなもんです。
ただ困ったのは夜中に盗難防止警報が鳴りだす車がたまにあって、それはかなりうるさかったですね

そんな中、3年ほど前にひとつ面白い仕事をしたんですが、いわゆる”インターフェイス”音の一つとしてセブンイレブンの"
nanaco"という電子マネーの決済音をプロデュースさせて頂きました。
皆さんも多分知ってるのがEdyの”シャリーン”という音だと思うのですが、当時のセブン&i ホールディングスさんの要として、”あまり小銭を想像させるような音にはしたくない”というのがあったので、私なりに色々と考えました。
まず作家の斉藤尋己さんとモチーフになる音の”たね”のようなものを100パターン程作りました。
彼はYamahaの研究出で音響や音波の編集や構成もしており、今回の共同パートナーとしては最適だと思いました。
色々なパターンを作っていくうちに、いくつかの課題が見えてきました。
・人ごみの中でもあるていど聞こえなければならない
・長く聴いても飽きのこない音でなければいけない
・環境に無理無く溶け込む音でなければいけない
・聴いたことの無い音でなくてはならない
こういった課題が見えてくるに従い、今回の音の要素の一つとしては、”口では表現できない音”にしようという考えに至りました。
いまちょっとググってみると、nanacoの音の表現として出てくるのが、
「ピュリーン♪」
「ぷよっ」
「ぴよっ」
「ぽょょ~ん」
「ピョロロピッ♪」
「パラッポロッ」
「ふぁひゅッ」
「ひょいひょ」
「ぴっひょん」
「ブォブワァヒュィッ!!!!!!!!!!!! 」
「きゅろ~ん…ぽんっ! 」
とまるっきる千差万別ですがw それこそが狙いなのです。
やはり単純な”ピッ!”みたいなアイコン化されちゃう音ってのはインターフェース音としてはダメだと思うんですよね、アップルコンピューターの起動音なんかもやっぱり言葉ではなかなか言い表す事が出来ないとおもうのですが、よく耳にする音ほど、音響的には気持ち良いながらも、想像力を刺激する程度の複雑性があるのが良いインターフェース音だと思います。
なので今回は街にあふれる音の隙間の周波数を使いつつ、100個の”音のタネ”をいろいろ加工しつつ、2種類の波形タイプが完全に違う音を組み合せて、「口では表現出来ない音」を作る事に成功しました。 これはやっぱりデザインとか建築的な考え方だと思うのですが、素材の切り替えや、組み替え、あと私がよく使う表現として"Texture"ってのがあるんですが、音にも手触りや色があって、その組み合せによって音には人をハッピーにも憂鬱にも出来る力があると思います。
なので、ちょっときくと可愛らしいですが、実はそういった試行錯誤の中から生まれた、デザイン性にあふれるとても深い音だと思っていますが、この音を選んでいただいたセブンさんにも感謝です。


また機会があればこういったインターフェース音はやってみたい仕事の一つではありますね、この町にあふれる音が少しでもよくなると、人々の生活も少しでも気持ちよくなるし、また美的感覚そのものも向上していくのではないでしょうか?
