ダンナです。

「無人島アルバム」(無人島に持って行きたいアルバム)と言えば「Nightfly」 ダンナですが、2006年にリリースされたDonald Fagenの最新作「Morph The Cat」は、これに比肩する作品に仕上がっています。


Morph the Cat/Donald Fagen
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「Kamakiriad」 以降のDonald Fagen、再結成後のSteely Dan2作は、リラックスした感じで、何となく物足りなさを感じていたのですが、本作には緊張感が漲っています。
この緊張感は、70年代後半~「Nightfly」までのそれとは異質のものです。以前のそれは完璧主義者の緊張感。細部にまで研ぎ澄まされたアレンジと演奏が醸し出すものでした。自分たちの求める音像に到達するまで、当代きっての名プレイヤーたちを「バンド単位」で取り替えてTry and Errorし続けた彼ら。それは、デジタル多重&MIDI以前の世界でアレンジとグルーヴと音質とを同時に手に入れるには避けて通れない道だったのでしょう。
その証左として、再起動後の彼らのリラックス感があるのだとダンナは考えます。

本作の緊張感は、楽曲自体の持つ肌触りです。Steely Danとしての最新作「Everything Must Go」 から多くのメンバーが引き継がれており、ツアーも含めて「バンド」として固定メンバーで録音されたアルバムです。事実、演奏はむしろ最近の作品よりもこなれてリラックスしています。しかし、そこには「同時多発テロ」 以降の空気が流れています。そして、非常に「歌」が伝わってくるアルバムです。


Morph The Cat:

ニューヨークの秋といえば「メイシーズのパレード」ですが、それをビルの屋上からぼんやり眺めているような、少し不気味な非日常感のある曲です。キース・カーロック のドラムが重くかつタイトで心地よい。いいドラマーです。DFがキープし続けるのも納得。


H Gang:

女の子バンドの始まりと終わりの歌。究極のドライブ・ミュージックでもあります。このまったりとした疾走感?もDonald Fagenならでは。


The Night Belongs to Mona:

ダンナが愛しくてたまらない曲です。高層アパートに引き篭もってしまった女性の話。その理由はわかりませんが、「同時多発テロ」がひとつの理由のような気がします。そんな彼女を優しく見守るような楽曲、演奏、そしてDFの歌声。傑作。


Mary Shut The Garden Door:

「ニューヨークで共和党大会が開かれたときの不快感」を元に作られた曲だそうです。カルト的な正義感(信仰)への不信感が、この曲に異常なまでの緊張感を生み出しています。


聴くほどに素晴らしいアルバムです。

そう言えばもうすぐ、このメンバーを引き連れて、Steely Danとして六本木にやってきますね。空気だけ吸いに行こうかな。