ダンナです。


初回は、らず君の本名である、Steely Danの「Aja」です。

Aja

洗練されたアレンジ、豪華なメンバー、スキの無い演奏、シニシズム、ダンディズム云々。

この作品について、いろんな人がいろんな言葉で褒め称えます。

ただ、ダンナは、このアルバムが最高傑作だとか完璧だとは思っていません。

Steely Danの魅力は、完璧になり得ないところにあると思っているので。


例えば、「Peg」なんかは決していい曲だと思わないし(リック・マロッタのリズムは最高)、「I Got The News」は捨て曲っぽいし、「Josie」の良さは未だに判りません。「Home At Last」は好きです。

その代わり、A面がすばらしい。


「Black Cow」

重く粘り腰のリズムと未練がましい歌詞のバランス。ヴィクター・フェルドマンの朴訥で田舎くさいような、都会的に研ぎ澄まされたような、どっちにも聞こえるソロが、主人公の男の滑稽さを代弁しているかのようです。

「Aja」

マイケル・オマーティアンによるピアノに誘われ、浮遊感ある微妙なコード進行の上に、奇妙で美しいメロディが価値の多様性を静かに語ります。そして、東南アジアを感じさせるマリンバの響きの中にこれまた漂うようなデニー・ダイアスのギター、そして曲の浮遊感を引き継ぐウェイン・ショーターのサックスと、対照的なスティーブ・ガッド印のドラムソロが(ミスショットを含めて)素晴らしい。

「Deacon Blues」

バーナード・パーディの超普通の8ビート(でもこの感じは真似できない)、ディーン・パークスのアコギのストローク、Rhodesによるコード感、どれを取っても普遍的なポップスです。

そこにフェイゲンの若者のせつなさを感じさせるボーカルが乗り、ラリー・カールトンのギターが彩りを添えると、これが極上のポップスに変わります。そして、ピート・クリストリーブの自由奔放なサックス・ソロが作品を見事に映像化しています。

普遍的なポップスの中に、一人の青年の心の世界(男子にありがちなドラマティックな妄想)を見事に閉じ込めています。

ライブでも何回か聴きましたが、何故かこの曲のイントロを聴くと、涙が出るんですよ。

負け犬のブルーズです。