中学生のある日、私はのんびりと電車から窓の外を眺めていました。
そのころ実家が今の場所にできて、私はわがままを言って3駅ほど電車通学していました。
3駅といっても1駅の区間がとても短い路線でしたので、友人たちが自転車で遊びにこれる距離でした。
そのほんの短い間に、私のふと目についたものがありました。
「あれはなに?」
ほんの一瞬のことのはずなのに、やけに目に残りました。
首から下はスーツ姿の男性が物陰に隠れるように立っていたのですが、首から上が視えませんでした。
正確には黒い首があったのですが、真っ黒で表情や顔立ちなどは視えませんでした。
その男性はどんな理由で亡くなったのか、亡くなった自覚があるのかもわかりません。
同じ場所で同じように車窓からみかけましたが、いつのまにか視えなくなりました。
そして十数年ほどたって、同じような別ものを視ることになります。