フルートの出番です287  フランセ「フルートと弦楽のための即興曲」 | 翡翠の千夜千曲

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Jean Francaix (1912-1997) - Impromptu for Flute and Strings (1983)

Jean Francaix (1912-1997) - Impromptu for Flute and Strings (1983) 

#1. Moderato - 00:00 

#2. Largo - 2:02 

#3. Scherzando - 4:34 

#4. Andante poetico - 9:30 

Ransom Wilson (Flute) BBC 

Concert Orchestra

 Charles Mutter (Leader) 

Perry So (Conductor)

 

 

 

 

 「ご機嫌」と言う言葉がこの人には良く似合う。こいつはとっても大事なことだ。そうとも、何たってご機嫌!それにおしゃれだし、パリのシャンゼリゼ通りをスキップしながらあの人と手をつないで駆けて行こうか。いやいや、木陰でそっと踊ろうか、それより夕方の街角でワイングラスを傾ける?色んな景色が見えてきます。フランセの音楽と出会う時は、それはそれは楽しい一時なんだ。

 即興曲と言うよりは、アイデアや響きの発見、アンサンブルの楽しみ、その瞬間の出会い、旋律のやり取り、アンサンブルの色合い、様々なテクスチュアーを感じさせてくれます。優雅で軽快、それは夢見るような一時かも知れません。

 もう一つ、大事なことがあります。彼が、ナディア・ブーランジェという教師に出会ったことはラッキーだったかもしれません。ブーランジェと言う人は、相手のいいところを見つけるのが上手で、その人らしさを引きだしてくれます。名前を列記したらそれが分かってもらえます。

 うんとはしょって、先ずは妹のリリー・ブラーンジェ、アーロン・コープランド、キース・ジャレット、クインシー・ジョーンズ、レナード・バーンスタイン、ダニエル・バレンボイム、アストル・ピアソラ、ウォルター・ピストン、イーゴリ・マルケヴィチ、ミシェル・ルグラン、大澤壽人、矢代秋雄などがいます。例えば、ピアソラが西洋音楽を学びたいと言うと「貴方には、タンゴがあるじゃない」と言います。そういう人なのです。それが、ジャズマンであれば、同じように言ったでしょう。

 ですから、フランセの特質を見抜いて彼の良さを認めてやったはずです。「貴方らしく書きましょうよ」こんな感じかなあ。時は、彼の味方だった。それに、彼は多産な作曲家であり、幅広い作曲様式によって200曲以上の作品を残しています。ピアノ曲が大半ですが、あらゆる管絃楽曲や合奏曲、中でも多くの室内楽曲では、ピアノの存在が目立っています。フランセは管弦楽法の手腕に才能を見せ、音色の扱い方にその能力が発揮されています。

 フランセは大きな形式の楽曲を数多く手懸け、協奏曲や交響曲、オペラ、劇場音楽、バレエ音楽なども残しています。カンタータのような、当時としては関心が失われつつあった伝統的な楽曲も手がけています。フランセは、古典的な表現方法に現代的なスピード感を植えつけて見せました。さらに、フランセは新古典主義者として、無調性や無形式の作品には見向きもせず、声楽曲の作曲では、過去の偉大な前例にならってさえいます。

 作曲様式は、生涯を通じてほとんど変わらず、軽快さと機智にあり、イーゴリ・ストラヴィンスキーやラヴェル、プーランクらとも親交があり尊敬もしていましたが、取り入れたものは自分自身の確たる美学に取り入れているのです。

 1997年に亡くなっていますが、没後の翌年から、フランス国内でフランセを讃えたジャン・フランセ国際音楽コンクールが開催されています。

 

 

※ 以前の記事

① ホルンの出番です144 ジャン・フランセ「ホルンのためのディヴェルトメント」

② ホルンの出番です141 ジャン・フランセ「オクターブのカノン」

③ ホルンの出番です314 フランセ「恋人たちの時間 」

 

 

 

 

フランセ、ジャン/即興曲(フルートと弦楽合奏のための)

Francaix, Jean IMPROMPTU

<解説>

 音楽家の一家に生まれたフランセは、早熟の才を十分に発揮して、早くから作曲を始めました。6歳の時に書いた最初のピアノ作品が1922年に名教師ナディア・ブーランジェの目にとまり、翌年から師事。ピアノもパリ音楽院でイシドール・フィリップに師事し、30年に1等賞受賞。フランセの名がヨーロッパで一躍有名になったのは、1932年、バーデン=バーデンの音楽祭における「ピアノと管弦楽のためのコンチェルティーノ」の自作初演がきっかけです。前衛的な作品が多かったなかで、フランセのわかりやすくウィットのきいた作風は、聴衆から熱狂的に受け入れられたのです。彼は、終生、新古典主義のスタイルを変えることなく、200曲以上の作品を残しました。フルートに関しても、ソロから室内楽作品、コンチェルトまで多くの作品があります。「フルートと弦楽オーケストラのためのアンプロンチュ」は1974年作曲。ピアノ伴奏版の楽譜はフランセ自身の読みやすい手稿を使っていて、作曲者の意図が伝わり易く親しみが湧きます。Impromptuはフランス語で即興曲の意。実際の即興ではなく、感興をさらりとまとめたという程度の意味合いでしょう。明快な書法で、フルートの優雅な身軽さが際立ちます。

 

 

20TH CENTURY FRENCH FLUTE CONCERTOS 20世紀フランスのフルート協奏曲集

フランセ    フルートと弦楽のための即興曲    Fl.Storch    
リヴィエ    フルートと弦楽のための協奏曲    Fl.Storch    
ダマーズ    フルートと弦楽のためのセレナード OP.36    Fl.Storch    
イベール    フルートとオーケストラのための協奏曲