J.S.バッハ「パルティータ」BWV825‐BWV830 | 翡翠の千夜千曲

翡翠の千夜千曲

音楽を学びたい若者で困難や悩みを抱えている人、情報を求めている人のための資料集

 

Bach: Complete Partitas

ピアノ演奏:ユアン・シェン

 

 これは、ピアノで演奏される元盛のバッハサイクル全集の第3弾であり、以前の号にはゴルトベルク変奏曲とイタリア協奏曲/フランス序曲が含まれます。

 「中国のバッハの最高の通訳者」は、インターナショナルピアノマガジンが元シェンと呼んだものです。ソロモン・ミコウスキー(マンハッタン音楽学校)の弟子であり、特にロザリン・トゥレック・ユアン・シェンは、バロック音楽の演奏練習を幅広く研究しました。同様に、チェンバロの自宅では、手元にある楽器の可能性、響き、タッチに本能的な感覚を持っているため、「リスナーは鍵盤の作曲家を簡単に想像できたかもしれません」(ボストンインテリジェンサー)。

 6つのパルティータ全集のこの最近の録音は、現代のスタインウェイで演奏された、優雅さ、機知、レトリック、輝きの驚異です。 国際的なキャリアを追求することに加えて、Yuan Shengは北京中央音楽学院のピアノの教授です。

Composer: Johann Sebastian Bach Artist: Yuan Sheng piano

 

00:00:00 Partita No. 1 in B-Flat Major, BWV 825: I. Praeludium 

00:01:43 Partita No. 1 in B-Flat Major, BWV 825: II. Allemande 

00:05:37 Partita No. 1 in B-Flat Major, BWV 825: III. Corrente 

00:08:35 Partita No. 1 in B-Flat Major, BWV 825: IV. Sarabande 

00:14:10 Partita No. 1 in B-Flat Major, BWV 825: V. Menuet I&II 

00:17:20 Partita No. 1 in B-Flat Major, BWV 825: VI. Giga 

00:19:22 Partita No. 2 in C Minor, BWV 826: I. Sinfonia 

00:23:43 Partita No. 2 in C Minor, BWV 826: II. Allemande 

00:28:20 Partita No. 2 in C Minor, BWV 826: III. Courante 

00:30:42 Partita No. 2 in C Minor, BWV 826: IV. Sarabande 

00:34:41 Partita No. 2 in C Minor, BWV 826: V. Rondeaux 

00:36:07 Partita No. 2 in C Minor, BWV 826: VI. Capriccio 

00:39:41 Partita No. 4 in D Major, BWV 828: I. Ouverture 

00:46:02 Partita No. 4 in D Major, BWV 828: II. Allemande 

00:55:09 Partita No. 4 in D Major, BWV 828: III. Courante 

00:58:49 Partita No. 4 in D Major, BWV 828: IV. Sarabande 

01:04:58 Partita No. 4 in D Major, BWV 828: V. Aria 

01:07:12 Partita No. 4 in D Major, BWV 828: VI. Menuet 

01:08:38 Partita No. 4 in D Major, BWV 828: VII. Gigue 

01:12:13 Partita No. 3 in A Minor, BWV 827: I. Fantasia 

01:14:22 Partita No. 3 in A Minor, BWV 827: II. Allemande 

01:17:09 Partita No. 3 in A Minor, BWV 827: III. Corrente 

01:20:34 Partita No. 3 in A Minor, BWV 827: IV. Sarabande 

01:25:03 Partita No. 3 in A Minor, BWV 827: V. Burlesca 

01:27:30 Partita No. 3 in A Minor, BWV 827: VI. Scherzo 

01:28:40 Partita No. 3 in A Minor, BWV 827: VII. Gigue 

01:31:56 Partita No. 5 in G Major, BWV 829: I. Praeambulum 

01:34:38 Partita No. 5 in G Major, BWV 829: II. Allemande 

01:38:56 Partita No. 5 in G Major, BWV 829: III. Corrente 

01:40:48 Partita No. 5 in G Major, BWV 829: IV. Sarabande 

01:45:57 Partita No. 5 in G Major, BWV 829: V. Tempo di menuetta 

01:47:52 Partita No. 5 in G Major, BWV 829: VI. Passepied 

01:49:37 Partita No. 5 in G Major, BWV 829: VII. Gigue 

01:53:26 Partita No. 6 in E Minor, BWV 830: I. Toccata 

02:00:26 Partita No. 6 in E Minor, BWV 830: II. Allemanda 

02:03:32 Partita No. 6 in E Minor, BWV 830: III. Corrente 

02:08:22 Partita No. 6 in E Minor, BWV 830: IV. Sarabande 

02:15:16 Partita No. 6 in E Minor, BWV 830: V. Air 

02:16:46 Partita No. 6 in E Minor, BWV 830: VI. Tempo di gavotte 

02:18:57 Partita No. 6 in E Minor, BWV 830: VII. Gigue

 

Johann Sebastian Bach Piano Partita No.2 Martha Argerich

 

 

 

 雨の日にはバッハが似合う。リストやショパンの華やかさはないのだが、そぼ降る雨のように心を潤してくれる。我が家の庭に淡い薄紫色のムクゲが咲いている。その花が、秋雨らしき風情に濡れている。本質的に雨は嫌いだが、子どもの頃は何も苦にしなかった。

 台風の後には、風に吹き飛ばされた栗や柿や梨の実を拾いに行き、目の前の溢れる川には魚を採りに行く。そんなことができた。雨上がりの青空が移りこむ水たまりに長くつを履いて両足で飛び込む瞬間のわくわく。通り雨や時雨(しぐれ)に濡れても、ランニングシャツや薄い上着など体温で乾いてしまう。誠に子供は生きる力で一杯だ。ゲームも遊園地も知らない。子供には、目の前にあるすべてのものがおもちゃだった。

 しかし、年齢を重ねれば、雨の意味は変化する。雨が降らねば、植物は乾き今年の夏のように立ち木を枯らしてしまう。世界では大層な山火事があちこちで頻発(ひんぱつ)する。反対に予期もせぬ大雨になす術もなく、子や家族を失って泣き濡れる母親や子供。

 けれども、そんな時でも音楽はある。ただ、あると言ってもいい。ただそこにある。そんな時にバッハを聴く。黙ってじっと聞き入る。ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685年3月31日(ユリウス暦1685年3月21日)- 1750年7月28日)は、ドイツの作曲家でありオルガニストだ。
 バロック時代を代表する音楽の重要な作曲家の一人で、鍵盤楽器の演奏家としても高名であり、当時から即興演奏の大家としてもその名を知られていた。バッハ研究者の見解では、バッハはバロック音楽の最後を担う作曲家として音楽を集大成したとも言えるが、後世には、西洋音楽の基礎を作った作曲家で音楽の源流とも考えられ、音楽界では「音楽の父」とも呼ばれている。
 バッハ一族は音楽家の家系で、数多くの音楽家を輩出(はいしゅつ)し、一時期は教科書にメンデルの法則の一例として取り上げられるほどで、中でもヨハン・ゼバスティアン・バッハはその功績の大きさから「大バッハ」とも呼ばれている。

 バッハの時代には、ピアノはまだ普及しておらず、バッハのクラヴィーア作品は、概(おおむ)ねチェンバロやクラヴィコードのために書かれたものとされている。その多くはケーテンの宮廷楽長時代に作られ、息子や弟子の教育に対する配慮も窺えるものとなっている。チェンバロはハープシコードやクラブサンとも呼ばれ、基本原理はピック状のもので弦を弾くのでギターの仲間とも言える作りになっている。クラヴィコードは弦をタンジェントと呼ばれる金具で突き上げることで音を出し、チェンバロより小型で音は小さいが、打鍵の強さで強弱が付けられる。

 クヴィーア作品の一つは、平均律クラヴィーア曲集で全2巻、第1巻 BWV846‐BWV869、第2巻 BWV870‐BWV893、 長短24調による48の前奏曲とフーガ。ベートーヴェンのソナタがピアノの新約聖書と言われ、このバッハの平均律クラヴィーア曲集はピアノの旧約聖書と称される。音楽史上最も重要な作品群のひとつと言える。

 今日聴くパルティータは、クラヴィーア練習曲集のうち、全4巻の中の第1巻「パルティータ」BWV825‐BWV830を指すものである。第2巻は「フランス風序曲」BWV831及び「イタリア協奏曲」BWV971、第3巻は「前奏曲とフーガ変ホ長調」BWV552、コラール編曲BWV669‐689及び「デュエット」BWV802‐805、そして第4巻「ゴルトベルク変奏曲」BWV988)で、 バッハが生前に出版した鍵盤作品集を指す。第1巻、第2巻および第4巻は手鍵盤のための作品だが、第3巻には足鍵盤つきのオルガン曲が多く含まれている。

 イギリス組曲、フランス組曲とあるバッハの一連のクラヴィーア組曲集の集大成にあたり、またバッハの数多くの作品の中で最初に出版された曲集である。
 1726年に第1番、1727年に第2番と第3番、1728年に第4番、1730年に第5番と第6番を個別印刷。1731年に修正の上に合本とし「クラヴィーア練習曲集第1巻(第1部)」「作品1」と付した。クラヴィーア練習曲集は第4巻までシリーズ化されたが、作品番号は「第2巻」以降の出版作品には採用されなかった。
 楽譜扉には次のような表題がある


 クラヴィーア練習曲集。プレリュード、アルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグ、メヌエット、その他の典雅な楽曲を含む。愛好人士の心の憂いを晴らし、喜びをもたらさんことを願って、ザクセン=ヴァイセンフェルス公宮廷現任楽長ならびにライプツィヒ市音楽監督ヨハン・ゼバスティアン・バッハ作曲。作品I。自家蔵版。1731年。

 なお、「クラヴィーア練習曲集」及び「パルティータ」の名称は、前代のライプツィヒ聖トーマス教会音楽監督(トーマスカントル)、クーナウ(Johann Kuhnau, 1660-1722)の「新クラヴィーア練習曲集(Neue Klavierübung, I: 1689年; II: 1692年)」に倣ったものである。「練習曲(Übung)」の含意は不詳だが、今日にいう演奏技巧習得のための機械的課題や性格的小品とは関係がない。

楽曲
特徴
 導入楽章を持つことはイギリス組曲と共通するが、パルティータの導入楽章はそれぞれ異なった名称を持っている。前奏曲をプレリューディウム、プレアンブルムと言い換えていることから、これは意図的な趣向と考えられる。
 古典舞曲に占めるイタリア式(アレマンダ、コレンテ、ジーガ。特にコレンテ)の割合が増え、ガラントリー(典雅な舞曲)のカプリッチョ、アリア、ブルレスカ、スケルツォ、テンポ・ディ・ガヴォッタ、テンポ・ディ・ミヌエッタ等もまたイタリア風の名称である。市田儀一郎は「このパルティータが強く「イタリア趣味」に傾斜し、どちらかと言えば「イタリア組曲」とよんだ方が妥当と思われる。しかしバッハが単に趣味上の傾向に走ったのではなく、あくまで堅牢で揺るぎない構成感覚に裏打ちされ、それらが高度の円熟した技法で処理されており、バロック組曲の総括としてこれらのパルティータが遥か高峰に聳える位置を占めていることが納得されるのではなかろうか」と記している。

第1番 変ロ長調 BWV 825
ケーテン侯レオポルトの嫡子の誕生祝いとして献呈。

1. プレリューディウム(前奏曲)(Preludium)
2. アルマンド (Allemande)
3. コレンテ (Corrente)
4. サラバンド (Sarabande)
5. メヌエット1 (Menuett 1)
6. メヌエット2 (Menuett 2) メヌエット1のトリオ。
7. ジーガ(ジーグ) (Giga,Gigue)
第2番 ハ短調 BWV 826
1. シンフォニア (Sinfonia)
2. アルマンド (Allemande)
3. クーラント (Courante)
4. サラバンド (Sarabande)
5. ロンドー (Rondeaux)
6. カプリッチョ (Capriccio)
第3番 イ短調 BWV 827
「アンナ・マグダレーナ・バッハのための音楽帳」に初稿がある。
1. ファンタジア(幻想曲) (Fantasia)
2. アルマンド (Allemande)
3. コレンテ (Corrente)
4. サラバンド (Sarabande)
5. ブルレスカ (Burlesca) メヌエットから改称。
6. スケルツォ (Scherzo)
7. ジーグ (Gigue)
第4番 ニ長調 BWV 828
1. ウーヴァテューレ(序曲) (Ouverture)
2. アルマンド (Allemande)
3. クーラント (Courante)
4. アリア (Aria)
5. サラバンド (Sarabande)
6. メヌエット (Menuett)
7. ジーグ (Gigue)
第5番 ト長調 BWV 829
1. プレアンブルム(前奏曲) (Preambulum)
2. アルマンド (Allemande)
3. コレンテ (Corrente)
4. サラバンド (Sarabande)
5. テンポ・ディ・ミヌエッタ (Tempo di Minuetta)
6. パスピエ (Passepied)
7. ジーグ (Gigue)
第6番 ホ短調 BWV 830
「アンナ・マグダレーナ・バッハのための音楽帳」に初稿がある。
1. トッカータ (Toccata)
A-B-A’の三部形式。Bの部分は3声のフーガ。
2. アレマンダ (Allemanda)
ニ部形式。
3. コレンテ (Corrente) BWV1019a(第1稿)の第3楽章を転用。
A-B-A’の三部形式。
4. エール(エアー) (Air)
二部形式。
5. サラバンド (Sarabande)
二部形式。
6. テンポ・ディ・ガヴォッタ (Tempo di Gavotta) BWV1019a(第1稿)の第5楽章を転用。
二部形式。ニ声のガヴォット。
7. ジーグ (Gigue)
二部形式。3声のフーガ。

 資料:ウィキペディア

 「マルタ・アルゲリッヒ」の力強いバッハと幾分淡々とした「ユアン・シェン」の演奏を貴方はどう聴いたのだろうか。これは全くの個人的見解だが、バッハは女人禁制の教会へ結婚前のアンナを入れて演奏を聴かせたようで聴聞(ちょうもん)委員会にかけられたリ、決闘を仕掛けてもいますからかなりの熱い人物とも思われています。学者肌の作るバッハ像よりは血気盛んな血の気の多いバッハが恋する将来の妻のためになりふり構わずサービスする姿の方が嬉しい。男気満々じゃないか。

 だからアルゲリッヒのバッハは、学者肌の演奏とは違い勇猛果敢(ゆうもかかん)な男バッハの心意気を示すかのようなハードなバッハ像なのだ。だから、極論を言えば弱気なベートーヴェンがいても、くじけそうなリストがいてもいいのだ。これは演奏家の勝手とさえ言ってもいい。

 いやあ、それにしても今日の資料は多すぎた。学生諸氏のうちまだ未整理の者は時間のある折にゆっくり、或は気の向いた時に悠々と学習、鑑賞されたい。

 独白:今、あの日の子どもの時のように振る舞ったら、私は能天気な「ガキ」のような野郎だ 

   と嘲笑されるのだろうか。

 

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○ ベートーヴェン ピアノとヴァイオリンの為のソナタ全曲演奏会

 

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○ 遠藤紗和さんのCD発売

 

バッハ 6つのパルティータ BWV 825-830/原典版 / ヘンレー 楽譜

 

Bach: Complete Partitas