イザベラ・レオナルダの音楽 | 翡翠の千夜千曲

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音楽を学びたい若者で困難や悩みを抱えている人、情報を求めている人のための資料集

Isabella Leonarda – 400 years in 2020

00:20 Ave suavis dilectio, op. 6 nr. 5 

08:00 Sonata nona, op. 16 nr. 9 

12:10 Placare Domine, op. 6 nr. 1 

23:14 Sonata settima, op. 16 nr. 7 

30:15 Nive puer, op. 7 nr. 1 

39:02 Sonata prima, op. 16 nr. 1 

49:13 Cara Regina, op. 20 nr. 2 

Recorded at the church of Vaasa, Finland, on August 3–4, 2020.

 演奏団体、古楽アンサンブル「Earthly Angels」は、ヘルシンキ芸術大学シベリウス・アカデミーで博士課程を修了した、ソプラノ歌手のカイザ・ダールベックによって設立されました。現在、Earthly Angelsは、フィンランドのトッププレーヤーの確固たるコアを持つヨーロッパ中の古楽の専門家で構成されています。主に17世紀から18世紀の声楽室内楽の知名度の高いアンサンブルであり、今後の多くの画期的なプロジェクトを楽しみにしています。その最初のアルバムのために、アンサンブルはフィンランド放送協会によって賞この年の「ベストアルバム」を受賞しました。

 

 

 

 

 

 

 今日から、この資料集をほんの少し変更いたします。変更点をご説明することにします。最近この記事を優秀なリトルピアニストが読んでくださっていることを知りました。小学生には難しい表現も沢山ありましたので、少しばかり分かりやすく読みやすい記事にしていこうと思います。そうは言いながらも、お勉強に役立つように少し背伸びをいていただくことも大切と考え、創意工夫をしてみたいと思います。

 さて今日も誕生日つながりですが、400年前にいたスーパー女子作曲家を紹介します。このところ、バロックやルネッサンスの音楽を取り上げているのは、こんな時代からしたたかに生き抜いていた女性や無名の音楽家達がいたことを紹介したいからなのです。今日の主人公のお名前は、イザベラ・レオナルダと言います。失礼ながら敬称(けいしょう)はつけず、親愛の情を持って呼び捨てにします。

 イザベラ・レオナルダ(Isabella Leonarda) (1629年9月6日 – 1704年2月25日) はイタリア北部の都市ノヴァーラ出身のイタリア人作曲家です。16歳の時、彼女は聖ウルスラ修道院の聖ウルスラ学校に入り、生涯をそこで過ごしました。彼女は修道院にいる間に作曲した数多くの楽曲で有名となり、当時最も多作な女性作曲家の一人でした。※修道院

 イザベラ・レオナルダと言う名前は、イザベラ・カレガリがウルサリンの修道女になったときに選んだ名前で、西洋音楽の歴史の中で注目に値(か)する人物です。昔(この当時)、女性が音楽を作曲することはまったく前代未聞(ぜんだいみもん)ではありませんでしたが、事実上すべてのそのような場合において、書かれた音楽は声楽です。神聖なモテット-修道女(以前のほとんどの女性作曲家は修道女でした)が作曲することを期待するとしても、それらは世俗的なマドリガルに限られていました。レオナルダのような17世紀のイタリア人女性が、新しいイタリアのバロック様式で言葉(詩)のない器楽作品をまとめているのを見つけるのは確かに珍しいことです。
 17世紀のイタリア貴族の娘であるカレガリは、ノヴァーラ市で生まれました。彼女の時代にはまだ一般的であったように、家族の息子と娘のほとんどは教会の礼拝に送られ、家族の世話をするのは長男だけでした。イザベラが修道院に入った後は、レオナルダとして知られるようになりました。

 聖ウルスラ修道院に入る前のレオナルダの音楽教育についてはほとんど知られていませんが、おそらく彼女は裕福な上流階級の家庭で育ったことで音楽的素養を身につけたと考えられます。修道院に入ってからは、ノバラ大聖堂の音楽の巨匠であるガスパロ・カサティが彼女の音楽の教師であったと言われています。どちらにしても、1670年にカサッティは彼女が書いた音楽の最初の出版物は、彼女自身が出版したか或はカサティに捧げられた音楽で編纂されたものかもしれません。

 二人の直接的な関係を示すのは、カサ―ティの「教会協奏曲集第3集」に含まれる2つの劇的対話曲であり、その最初の曲はレオナルダの作品として知られています。修道院の中では、彼女は1958年の文書に音楽教師 (magistra musicae) と記されています。このことはレオナルダが、修道院で他の修道女たちに音楽を指導する役割があったことと理解できます。そして彼女の作品を修道女たちが演奏する機会があったかもしれませんし、彼女はその後も生涯を通じて作曲し、彼女の音楽は定期的に出版されました。

 レオナルダの作品は教会音楽のジャンルをほとんど網羅していて、それは単声から4声のモテットや教会協奏曲、ラテン語の教会対話曲、詩篇曲、レスポンソリウム、マニフィカト、リタニ、ミサ曲、そして教会ソナタです。それに加え彼女はソロと通奏低音の曲、合唱曲、弦楽合奏曲を作曲しています。。レオナルダはさらに地元の言葉による聖歌をいくつか書いた。彼女の作品番号16の教会ソナタは、歴史上初めて女性が作曲した器楽ソナタです。

 レオナルダが最も得意としたのは単声のモテットですが、歴史的に重要な作品は彼女のソナタです。彼女は生涯に数多くのソナタを作曲した最初の女性でしたが、例えば、ソナタ第1番から第11番は2本のヴァイオリン、ヴィオローネ、そしてオルガンのための作品である。ソナタ第1, 第3, 第4, 第7, そして第8番は「協奏的ソナタ」で、3つの楽器はそれぞれ少なくとも1回はソロのパッセージ(フレーズ)を演奏する。ソナタ第12番はレオナルダの唯一のソロ・ソナタで、彼女の最も有名な作品の一つである。この曲は2つの緩徐楽章を含む7つの部分に分かれていて、緩徐楽章はレチタティーヴォのように、即興演奏の装飾音がつけられている。

 17世紀初頭のイタリア音楽には、第一作法第二作法の区別がありました。一般に第一作法様式の教育は女性には開かれていませんでしたが、レオナルダは正式な対位法を教わりそれを自分の多くの作品に使っています。レオナルダの複雑な和声の使用は、聖ウルスラ修道院でのポリフォニー音楽の育成に彼女が影響を与えた一例であり、同時代に多くの他のイタリア人修道女が自分の修道院で同じことをしていたのです。この様式は音楽家の創造性を引き出す雰囲気を育てる基礎を作っていて、即興演奏や音楽的装飾音を可能にしているのです。

 レオナルダのソナタは、ソナタの正式な構造とは違っています。アルカンジェロ・コレッリが確立した「標準」は、4楽章、緩-急-緩-急の形式の教会ソナタです。しかしレオナルダのソナタは、4楽章 から13楽章 まで変化のある形式で、緩-急-緩-急の形式も使っていませんでした。それに加えレオナルダは、繰り返しも普通とはかなり違ったやり方をしています。ソナタ第10番は2つの繰り返しがあり、ABCDEBDFBGのパターン、ソナタ第4番は極めて特殊なパターンで、ABCDEFGHIJI'J'I'/'となっています。

 レオナルダのほとんどすべての作品には、2つの献辞(けんじ=捧げる言葉)が掲げられています。一つは聖母マリアに宛てたもので、もう一つは高位にいる人へのものです。彼女の献辞の一つでレオナルダは、作曲は現世での賞賛(ほめ言葉)を得るためではなく、彼女が聖母マリアに献身していることを世の全ての人に知ってもらうためだ、と言っています。献辞を捧げられた人にはミラノ大司教、ノヴァーラの司教、そして神聖ローマ皇帝レオポルド1世がいます。修道院への財政支援を求める必要からこれらの献辞の多くは書かれています。

 また彼女は作品10の献辞の中で、作曲は休憩時間にだけ行ったもので、修道院での管理業務を怠ったものではない、と書いています。このことは、レオナルダが修道院の中で高い地位にいることで他の修道女より作曲に多くの時間をさけるのだという誤った思い込みを、完全に否定しているのです。つまり、彼女は作曲するために自分の仕事をおろそかにすることはなかったし、この作品によって修道院の経済的な自立を少しでも得るために努力したのです。

※ 参考資料 バロックの音楽、ウィキペディア等

 

※ 演奏会のご案内

 

○ ベートーヴェン ピアノとヴァイオリンの為のソナタ全曲演奏会

 

 

 

 

Mottetto Cara Regina, op. 20 nr. 2 Imslp

 

レオナルダ: モテット、トリオソナタと「カンタータ・モラーレ」

ロバート・クロウ 、 サンドラ・レッディガー 、 エマヌエレ・ブレダ 、 バルバラ・マウフ=ハインケ 、 ダニエラ・ヴァルテンベルク 、 尾崎俊徳 、 ソフィヤ・ガンディリャン

【曲目】
イザベラ・レオナルダ(1620-1704):
1-8. モテット「Quam dulcis es, quam cara」 Op. 13 No. 2(1687)
9. Mottetti con le litanie della Beata Vergine
祝せられたおとめの連祷を持つモテット Op. 7(1677)
10-13. 独唱を伴うモテット Queste ch'a voi consagro
「カンタータ・モラーレ」 Op. 15, No. 10 (1690)
14-18. 4声のソナタ Op 16, No. 1(1693)
19-23. 独唱を伴うモテット Ama mi Iesu care, Op. 15 No. 2
24-26. 独唱を伴うモテット Purpurei flores, Op. 20 No. 3(1700)
27-30. トリオ・ソナタ Op. 16 No. 7
31. モテット「Ad arma」 Op. 13

14-18、27-30を除き世界初録音

【演奏】
ロバート・クロウ(男声ソプラノ)…1-9、19、31
サンドラ・レッディガー(ソプラノ)…9、10、24、31
エマヌエーレ・ブレダ(ヴァイオリン)
バルバラ・マウフ=ハインケ(ヴァイオリン)
ダニエラ・ヴァルテンベルク(チェロ)
尾崎俊徳(テオルボ)
ソフィヤ・ガンディリャン(チェンバロ)

【録音】
2021年8月2-5日
Pfarrkirche Sankt Martin, Zipplingen, Baden-Wurttemberg(ドイツ)