ホルンの出番です289 ドゥシーク「ピアノ、ヴァイオリンとホルンのためのノットゥルノ」Op68 | 翡翠の千夜千曲

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Jan Ladislav Dussek: Notturno Concertant for Violin, Horn and Piano, Op.68 (1809)

 

00:00 Andante 13:15 Minuetto

 

 

 

 アメリカでは、大真面目にUFOの研究に取り組んでいるそうです。NASA=アメリカ航空宇宙局は、未確認飛行物体=UFOなど、上空で目撃される正体不明の現象について科学的に調査する研究チームを、ことし秋に立ち上げると発表しました。調査は、およそ9か月間行われ、結果は一般公開されるということです。(2022年6月10日の記事)

  時間的な経過で言えばこのプロジェクトは既にスタートしています。この広い宇宙に、生命体が存在するのは地球だけであるなどと言う考えは、傲慢であり、むしろ無知に近い考えと言えます。しかしながら、そのことと地球外生命体が頻繁に地球を訪れているというのも、これまた科学的に無理があると言えましょう。地球がいかに辺境と言えども数万光年から数百万光年を瞬時に移動できる科学や物理的レヴェルの文化を手に入れている地球外生命体がいるとは考えられません。

 いやいや私が今日話したいのはそんなことではありません。絶世の美女や稀に見る美男子というのがいるとして、この尺度は我々地球人の一部の価値かも知れません。日本人だけ見ても、万葉の時代と現代とでは大分美人の考え方に差があるようですし、欧米人とその他の国々では美しさに対する意識には大よそ隔たりがあるようです。ましてや、地球外生命体が我々の美意識を同等に評価するかどうかは不明です。

 何か大々的な話になりましたが、その地球規模からいっても美男子だったと思われるのが本日の主人公でございます。ヤン・ラディスラフ・ドゥシーク(またはヨハン・ラディスラウス・ドゥセック、Johann Ladislaus Dussek, チェコ語:Jan Ladislav Dusík, 1760年2月12日 - 1812年3月20日)は、イギリス・ピアノ楽派の基礎を築いたボヘミア人作曲家でピアニストです。この名前は「ソナチネ・アルバム」で知られており、日本ではドゥセック、ドゥシェック、デュセック、デュシェックなどと呼ばれています。

 彼は、様々な経緯からその一生は映画のネタになりそうなほどの波乱万丈に彩られており、さすらいの一生を含めて、まさに「ボヘミアン」という言葉を地で行く芸術家であった、と物の本にも書かれております。ボヘミアでの学びを終えると、ドイツに行きエマヌエルバッハに学んだと言われています。その後サンクトペテルブルクへ行きでエカチェリーナ2世の寵児となり、その後もリトアニア、ドイツ、フランスと旅します。フランスではマリーアントワネットの寵児となり、その後もロンドンへと彼の旅は続きます。そして、その陰には常に女の影が・・・。止めましょう、安っぽいメロドラじゃあるまいし。

 さて、ドゥシークの作品は、作品番号80を数えるようです。12の協奏曲、2台ピアノのための協奏的交響曲、ピアノと弦楽器のための5重奏曲と四重奏曲が一曲ずつ、協奏的ソナタ、フルート、ヴァイオリン、チェロの伴奏付きソナタの他、53のピアノソナタ。オペラ、ミサ曲、オラトリオ、声楽曲や宗教作品があります。その他、夢想曲作品「告別」、「慰め」、ロンド「我が軽き小舟」、ロンド「ラ・マチネ」、「アンリ4世万歳」などきりがありません。
 ドゥシークはこの時代の類まれなる巨匠の一人であり、その音楽は古典的なレパートリーに含まれ続けています。例えば、多くの作品は音楽院のピアノ科入学試験で、とりわけ副科―このクラスは、奇妙な習慣に従って鍵盤学習クラスの入試でしばしば演奏されていました。
 これら全ての作品の引き締まった様式、卓越した仕上がりが指摘されています。輝かしい走句は、完全にこのピアノ向けに書かれたものといえます。旋律のフレーズの高貴さ、精彩、熱気を備え、音楽的霊感は、しばしば劇的な雰囲気を醸し出します。。彼の音楽的着想が率直かつ高貴であるがゆえに、作品は長くその命脈を保つのである。とまあ、これは一部の礼賛と美辞麗句を並びたてたものです。

 ドゥシークについては、以下のような二つの目ぼしい記事も見ることができます。

○ 作曲家として以外にドゥシークが音楽史上で重要なのは、ピアノの「英国式アクション」を開発したジョン・ブロードウッドと親交があったためである。ドゥシークの作品は、当時はやりのピアノには出せない力強さや音域が必要だったので、ブロードウッドに音域と音響の拡大を迫ったのである。その後ブロードウッドのピアノは、ドゥシークの即興曲を付けて、ベートーヴェンの許に送られた。

○ ドイツでは、初めはリストを予告するような、最初の美男のピアニストだった。ルイ・シュポーアによるとドゥシークは、「淑女たちが彼の美しい横顔を愛でることができるように」、舞台上にピアノを横向きに置いた最初のピアニストだった。

 まあ、何かにつけて目立つ男で、どうしたらご婦人方の気を引くかを知り通してもいたようです。え、今日はホルンの話ではなかったのでしょうか。…その通りです、そしてノットゥルノとはノクターン(小夜曲)のことであります。気の合ったヴァイオリン奏者と組んで楽しみませんか。ピアノ奏者も結構楽しめます。

 

<お知らせ>

※ 演奏会のご案内7 DANCIG FLUTE

 

 

デュセック:2台ピアノ協奏曲と室内楽

アレクセイ・リュビモフ 、 オルガ・パシチェンコ 、 フィンランド・バロック管弦楽団

【曲目】
ジャン・ラディスラフ・デュセック(本名ヤン・ヴァーツラフ・ドゥスィーク) (1760~1812):
2台のピアノのための協奏曲と室内楽曲集 ~古典派からロマン派へ、フォルテピアノの新時代~
1-3.2台のピアノと管弦楽のための協奏曲 変ロ長調 Op.63
4-6.ピアノ五重奏曲 ヘ短調 Op.41
7-8.ピアノ、ヴァイオリンとホルンのための協奏的ノットゥルノ 変ホ長調 Op.68

【演奏】
1,2,3,7,8…アレクセイ・リュビモフ(フォルテピアノ)
1-6…オルガ・パシチェンコ(フォルテピアノ)

使用楽器…ヴァルター・モデル(1-3,7,8…リュビモフ、4-6…パシチェンコ)
ロングマン&クレメンティ・モデル(1-3…パシチェンコ)

1-3…フィンランド・バロック・オーケストラ+メタ4(古楽器使用)
4-8…シッカ=リーサ・カーキネン=ピルク(ヴァイオリン)
4-6…リイッタ・リーサ・リスティルオマ(ヴィオラ)
ユッカ・ラウタサロ(チェロ)
アンナ・リンタ=ラフコ(コントラバス)
7-8…トンミ・ヒューティネン(ホルン)

【録音】
2018年1月
ヘルシンキ、オラリ教会