Henri Dutilleux - Metaboles (Orch National de France, Gatti)
Orchestra: the National Orchestra of France Conductor: Daniele Gatti Location: Théâtre des Champs-Elysées, Paris Date of broadcast: 24th April, 2014
真面目で傷つきやすい人は時折病気になったりしますが、悪い奴ほどよく眠るの喩(たとえ)通りとんでもない金額を弱者から巻き上げる。そういう構図が、ここ十年ほどのスパンで起きています。私たちは、殆どの人がどちらかと言えば性善説に生きていると思います。明日を夢見て、努力をしてきました。随分頑張ったつもりでも、夢はすべて叶えられなかったかもしれません。しかし、同じように夢を見て次に来る人達のために少しでも役立つなら、その人の役に立つそういうことに手を差し伸べよう。そう考えられる人は、幸いです。
今日は第七夜、フランスの作曲家アンリ・デュティユーから始めましょう。大よそ97歳までご存命でしたから長寿の部類でしょう。6人組より少し若い世代で、20世紀後半から21世紀初めにかけてのフランスを代表する作曲家の一人です。冒頭は「メタボール」 Métaboles (1964年)代表的作品で、他に「時の影 The Shadows of Time (1997年)など、これは小澤征爾による委嘱作品です。管弦楽に3人の童声が加わります。尹伊桑(ユン・イサン)は韓国生まれの作曲家ですが、日本との関係も深くドイツに帰化しました。12音技法が同列に価値を与えましたが、尹はこれに「主要音」という概念を導入し、12の音のどれかに重力を与えることで、一本の旋律線に個性を与えました。1970年代は前衛の停滞期であり旋律の復権が各方面から叫ばれたため、尹の作風はその時代の波に完全に乗ったのです。この時彼はすでに50歳を過ぎていました。
大栗裕はホルン奏者で作曲家、1955年に作曲した「大阪俗謡による幻想曲」がベルリン・フィルハーモニー管弦楽団で演奏され、世界に知られました。レナード・バーンスタインは大栗と同年代です。指揮者で作曲家でした。世界的に知られた代表作は「ウエスト・サイド物語」 (West Side Story) だと思いますが、作風はひとことで言えば「折衷的」なスタイルで書かれています。1つの作品の中で、ジャズやクラシックなどの様々な音楽の要素を巧みに織り交ぜることが特徴ですが交響曲、第1番「エレミア」、第2番「不安の時代」などのようにユダヤ教に影響を受けた作品やピアノ協奏曲風の作品などがあります。イギリスのマルコム・アーノルドは明快でリズミックな作風で親しまれました。序曲「ピータールー」(Peterloo Overture)などは吹奏楽版もありますから演奏した方もあるでしょう。また映画「戦場にかける橋」でケネス・アルフォードの行進曲「ボギー大佐」を知らしめたりしました。以前の記事、アーノールド「ピータールー」に生い立ちと音源があります。
Astor Piazzolla Histoire du Tango for Flute and Guitar
1. Bordello 1900 2. Café 1930 3. Nightclub 1960 4. Concert d’aujourd’hui Alja Velkavehr - Flute Alberto Mesirca - Guitar
アストル・ピアソラは、その余りにも過激な作風から「タンゴの破壊者」とまで呼ばれて攻撃されましたが、ナディア・ブーランジェはピアソラの原点はあくまでタンゴだと指摘し通りです。少年時代のニューヨークに生活してたこともあり、タンゴ奏者でありながらもタンゴを外から眺める目もまた持っていたという評価もあります。翡翠シリーズでは、ピアソラ「天使の組曲」やタンゴの革命家ピアソラ「ブエノスアイリスの四季」、フルートの出番です108 ピアソラ「タンゴの歴史」などを紹介してあります。ヤニス・クセナキスはギリシア生れの建築家で作曲家です。その後パリ音楽院でオリヴィエ・メシアンらに師事しますが、メシアンに「君は数学を知っている。なぜそれを作曲に応用しないのか。伝統的な修練は、あってもなくても同じではないか」と言われたことがきっかけとなり数多くの実験音楽に取り組みます。高橋悠治の協力によるところが大きいと思います。「エオンタ」や「ヘルマ」などを聴いて見られたい。ジェルジ・リゲティはハンガリー系オーストリア人の作曲家です。実験的な作品を残したほか、「2001年宇宙の旅」や「シャイニング」「アイズ・ワイド・シャット」映画作品などに音楽が使われています。代表的なものにトーン・クラスター("ミクロ・ポリフォニー")などがあります。100台のメトロノームのためのポエム・サンフォニック(Poème Symphonique for 100 metronomes)なんてものを聞いたら貴方がどんな反応をするか実に興味深い。ルイージ・ノーノはイタリアの作曲家。團伊玖磨、芥川也寸志は日本の作曲家です。ルチアーノ・ベリオは居たりの作曲家です。素材音高音列その素材で作曲すると言う手法。一つの作品へ別の注釈を与え、原型を跡形もなくしてしまう「再作曲」はシュマンシリーズで顕著ですが、このテクニックは多くの現代音楽の作曲家にすぐに共有されています。まあ、どん詰まりです。最後に、ベリオの「Sequenza VII」を聴いてお別れしましょう。
今日は、12音音楽以降の系統が行き詰まりを見せる中での実験音楽と、様々な国々でうごめく民族音楽の動静を少し取り上げました。
Berio - Sequenza VII (score)László Hadady, oboe
次回は最終回です。もう少し進むとまだご存命中の方が多いので、今後音楽の歴史が書き替えられるかもしれません。ですので、亡くなられた方だけを取り上げます。
※ 一年前の記事
◉ フルートの出番です114 スターダー「フルート協奏曲」変ホ長調