ベートーヴェン:フルート,ヴァイオリン,ヴィオラのためのセレナードニ長調 作品25
演奏:ジェームズ・ゴールウェイ,ロンドンヴィルトゥオーソ
00:00 第1楽章 Entrata, Allegro (ニ長調)三部形式
03:45 第2楽章 Tempo ordinario d'un Menuetto (ニ長調) メヌエット
09:01 第3楽章 Allegro molto (ニ短調) 三部形式
11:18 第4楽章 Andante con Variazioni (ト長調) 変奏曲
17:36 第5楽章 Allegro scherzando e vivace (ニ長調 - ニ短調) 三部形式
19:37 第6楽章 Adagio – Allegro vivace e disinvolto (ニ長調) 序奏とロンド
Ludwig van Beethoven Serenade in D major for flute, violin and viola Op.25
ELIA GUGLIELMO flute ALESSANDRO CAPPELLETTO violin FEDERICO CARRARO viola
このセレナードは、数楽章(主に5つ)で構成される古典スタイルの踊りの曲を含む最も古典的なスタイルで書かれた作品です。年代から見て、「スプリングソナタ」作品24の後、30歳頃の作品と思われます。3声で作られており、低音楽器がないことから爽やかで軽やかです。
「フルート,ヴァイオリン,ヴィオラのためのセレナード」ニ長調 作品25は、1801年の後半までには完成されたとされていますが、1797年ごろに書かれたスケッチもあります。「セレナード」という楽曲ジャンルは、モーツァルトの時代に「小夜曲(夕方に演奏する曲)」や恋人への作品という意味は薄れ、屋外で演奏する小規模な曲であることが一般的になっていました。この作品も、フルートとヴァイオリン、ヴィオラという小規模な編成であり、1つの緩徐楽章と5つの速い楽章で構成されていることから、それまでの慣習に従った作品と思われます。 この作品は、1803年に Franz Xaver Kleinheinz によって編曲され、「フルートまたはヴァイオリンとピアノのためのセレナード」二長調 作品41として出版されました。ベートーヴェンが監修したため、ベートーヴェンの作品番号が与えられています。
最近のことは判りませんが、選択だったか必修だったか忘れましたが、大学では「楽師論」という単位があったのを覚えています。これは文字通り、音楽の様々な形式の有りようを学ぶものです。そういう本には確かに代表的な形を持った作品が選ばれて、様々な音楽の形式を学ぶことができます。しかし、このような古典的な作品は、正に生きた教材とも言うべきもので、演奏しながら経験的に楽曲の形式を学ぶことができます。
ちなみに、交響曲も全部ありますので、ソナタやスケルツォ、複合三部なども学ぶことができます。このように、学問と作品を分離しないで考える(捉える)ことは、最も身体に染み込んだ学習と言えます。
※ 以前の記事
2,3,4,5,6,7,8もあります。
ベートーヴェン、ルートヴィヒ・ヴァン/セレナーデ OP.25 パート譜
Beethoven, Ludwig van SERENADE OP.25, PARTS (ED.VOSS) |
<解説>
『セレナーデ Op.25(1801)』は多楽章構成の構築力のある古典形式で書かれ、第1楽章のエントラータは三部形式、ギャロップ行進の爽快な分散和音の主題が躍動します。第2楽章メヌエットは優美な舞曲で2つのトリオを有し、双方共に無窮動の動きが特徴です。第3楽章は三部形式、短調の劇的主題と長調の軽快な分散和音主題の明暗の対比が魅力です。第4楽章は変奏曲形式で、第I変奏は16分音符、32分音符による跳躍多声部進行と接続音階による変奏曲、第II変奏は三連符の分散和音、跳躍多声部進行による装飾変奏曲、第III変奏はチェロの主題にヴァイオリンが分散和音で伴奏してフルートはオクターブ跳躍のリズムを刻み、コーダは主題にフルートが応答します。第5楽章は三部形式、軽快な付点音符の上昇音階主題が連続し、中間はトリオの装いで悲しげに歌います。第6楽章は優美な二重奏で序奏が奏でられ、その後、軽妙な逆付点音符のロンド主題が遁走します。第1副主題はシンコペーションのアクセントが印象的で、第2副主題では無窮動の中フルートがシンコペーションのリズムで応対します。
瀬尾和紀 (アーティスト), パトリック・ガロワ (アーティスト), & 3 その他 形式: CD