フルートの出番です97  グルック《オルフェオとエウリディーチェ》より「精霊の踊り」 | 翡翠の千夜千曲

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 C. W. Gluck: Reigen seliger Geister -- Frederic Sánchez -- Neues Orchester Basel.

 

    

         Clara-Jumi Kang: Gluck, Melodie 

 

 

   フルートの名曲と言えば何だっけ?と思いながら少しずつ進めてきましたが、何とこの曲アンコールピースで紹介してあるのに、肝心のフルートの演奏が紹介していないと言う非常にアホらしい結果に気がつきました。前に紹介したのは、ズガンバーティ「メロディ(精霊の踊り)」 - ソロ・ピアノのためのトランスクリプション でした。

  「精霊の踊り Reigen Der Seligen Geister」(または「精霊たちの踊り」)は、オペラの第2幕第2場で天国の野原で精霊たちが踊る場面で演奏される有名な楽曲で広く知られている。のちにヴァイオリニストのフリッツ・クライスラーがヴァイオリン用に編曲し、「メロディ」というタイトルで作曲したが、これも知られている。ピアノ用の編曲はジョヴァンニ・ズガンバーティとヴィルヘルム・ケンプによる二つが一般的に演奏会で使用される。
  中間部に哀調を帯びた旋律をもつ3部構造の清楚で優雅な趣をもっており、旋律はオペラから独立してフルートの曲として現在も演奏されている。短調部分のみを演奏した歴史的録音としてマルセル・モイーズのものが知られており、晩年に日本での公開レッスン(1973年)でも採り上げられている。

  クリストフ・ヴィリバルト・グルック(Christoph Willibald (von) Gluck, 1714年 - 1787年)は、現在のドイツに生まれ、現在のオーストリアとフランスで活躍したオペラの作曲家です。現在では「オルフェオとエウリディーチェ」を代表とするいくつかのオペラが上演されるに過ぎませんが、西洋音楽史上では「オペラの改革者」として名を残しています。ほかにバレエ音楽や器楽曲も手懸けています。

  では、オペラの改革とは何をしたのでしょう。

  1761年以降、グルックは台本作家のラニエーリ・デ・カルツァビージと協力し、最も有名なバレエ音楽『ドン・ジュアン』(Don Juan, 1761年)と代表作のオペラ『オルフェオとエウリディーチェ』(1762年)を作曲した。これらはいずれも様式上の変化を表しており、その頂点はやはりカルツァビージのリブレットによるオペラ『アルチェステ』(Alceste, 1767年)において全面的に示される。この作品では、オペラの新しい様式についてのグルックの考え方が表面上に展開されている。出演するスター歌手よりも作品が重視され、レチタティーヴォはセッコを取り除いて、すべて劇的に構成されたレチタティーヴォ・アッコンパニャートにして演技に割り込まないようにするというのがグルックの考えであった。それが、オペラ改革につながった。その結果生じた、より流麗で劇的な作曲様式は、リヒャルト・ワーグナーの楽劇の先駆と看做されている。

 レシタティーヴォ・セッコとは通奏低音を伴ったレシタティヴォのことを言います。「オンブラマイフ」を思い出してください。有名な旋律の前に出てくるレシタティーヴォ、あれです。フロンディテーネレ・・・。やっぱ例を出しますか。 げ、井上道義マエストロがピアノを弾いている。歌は、言わずと知れた森麻季さんです。当時は、大体チェンバロを使っていましたから、レシタティーヴォ部分はアルペジオ奏法でしたね。ざっくり言うと、それまで通奏低音だけでレシタティーヴォを支えていたところに、例えばヘンデルも自らまずヴァイオリンを入れました。そんな風にして伴奏をより音楽的にレシタティーヴォもより音楽的に改革していったのです。また、説明にもある通り演技に割り込まない音楽、全体の構成を劇的するなどいわゆる総合芸術としての存在を際立たせようとしたようです。

                  

    

  "Ombra mai fù" Maki Mori 歌劇「「セルセ」から「オンブラ・マイ・フ」森麻季

 

  最近この曲の演奏を聴きました。この曲は、ご承知の通り緩やかな3拍子の曲ですが、この曲意外に難しいです。簡単だと思って演奏されるのかLento tres doux からM'eno Mouvの指示がありますが、余り前後のテンポはかえない方が良いと思います。非常に曖昧な演奏をする方が多いのですが、前打音を含め細かい音符ほど丁寧に確実に鳴らすべきです。細かな音符を流したり、32分や前打音が正確でないのが気になります。かと言って、機械的に演奏せいとは申しませんが、音楽性と雰囲気での音楽作りは違うと思います。tres doux =やわらかくの捉え方を間違えないようにしたいです。ムラマツの三上さんが書いているように、後半は遅すぎるとだれるのとリズムの安定感を欠くように思います。オンザビートなのかアフタービートももう一度確認しましょう。(失礼しました)

 

<演奏者>フレデリック・サンチェス

  1987年にバルセロナで生まれたフレデリック・サンチェスは、11歳でバダロナ音楽学校(バルセロナ)に通い、そこでフルートをジャウメ・コルタデラスに師事し、2005年に優等で卒業しました。その後、カタロニアの優れた音楽学校(ESMUC、バルセロナ)に入学し、フルートを学びました。
  フレデリックは2009年にESMUCで優れた音楽の卒業証書を取得し、バーゼルのHochschulefürMusikでフェリックスレングリとフルートを学び、最高の栄誉で音楽パフォーマンスの修士号を取得し、バーゼル室内管弦楽団で最終試験を行いました。 。その後、ソリストとして音楽の上級学位を取得し、2013年にカール・ライネッケのニ長調協奏曲をバーゼル交響楽団と共演して最終試験を行いました。これらの研究で、彼はJONDE / BBVAFoundation奨学金を授与されました。
  彼はバーゼル交響楽団、その後ロイヤルコンセルトヘボウ、バルセロナ交響楽団、バルセロナ、ロンドンフィルハーモニー管弦楽団などのフォーメーションのランクで演奏することに従事しています。 彼は2014年からヴェルビエ音楽祭室内管弦楽団のメンバーです。
   彼は、第63回ARD国際コンクールの優勝者である木管五重奏曲アザハールアンサンブルの創設メンバーです。アンサンブルでは、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団、エッセナーフィルハーモニー管弦楽団、ウィーン楽友協会、ザルツブルク美術館、ハンブルクエルプフィルハーモニー管弦楽団、カタルーニャ音楽堂などのコンサートホールで演奏しました。

<演奏者>クララ=ユミ・カン

 Clara-Jumi Kang (クララ=ユミ・カン)。韓国の女性ヴァイオリニスト。1987年生まれ。ドイツのマンハイムに韓国人の両親のもとに生まれる。マンハイム国立音楽舞台芸術大学でヴァレリー・グラドフに師事。7歳の時アメリカへ移住。ジュリアード音楽院に奨学生として入学し。ドロシー・ディレイ、Hyo Kangに師事。ドイツのハンス・アイスラー音楽大学ベルリン、ミュンヘン音楽・演劇大学ヴァイオリンの研鑽を積んだ。2009年のソウル国際音楽コンクールで入賞。2009年のヨーゼフ・ヨアヒムハノーファー国際ヴァイオリンコンクールで第2位を受賞。2010年の仙台国際音楽コンクールのヴァイオリン部門で第1位を受賞。さらに同年のインディアナポリス国際ヴァイオリンコンクールで第1位を受賞。2015年の第15回チャイコフスキー国際コンクールで第4位を受賞。録音では、2010年の第4回仙台国際音楽コンクールでの演奏の録音をリリースしている。以降はメジャーレーベルのDECCAと契約し、2011年にイザイ、クライスラーの作品を収録したアルバム、2016年にシューマン、ブラームスのヴァイオリンソナタを収めたアルバムをリリースしている。YouTubeで公開されているチャイコフスキー国際コンクールでの彼女の演奏は、しっかりとした演奏技術に裏打ちされた素晴らしい演奏ばかりです。ぜひ視聴してみてください。

 

 

    

グルック、クリストフ・ヴィリバルト/精霊の踊り

Gluck, Christoph Willibald BALLETTSZENE & ANDANTE AUS’ORPHEUS’(Piano&Flute)

<解説>ムラマツフルートによるライツノート
  グルックによる「精霊の踊り」は、古今東西のフルートのための曲の中でも、白眉と言える存在にある曲のひとつでしょう。1762年にウィーンで初演されたオペラ 「オルフェウスとエウリディーチェ」 の中には、この曲はまだ含まれていませんでしたが、1774年に、パリで新しいヴァージョンとして再演された折に、第2幕第2場の天国の幕あきに加えられました。幸福な精霊の園で美しい花々や静かな小川や茂みの舞台で精霊たちがヘ長調のメヌエットを踊ります。この至福のメロディーは、中間部でニ短調に転じ、ヴァイオリンの16分音符の伴奏で、フルートのソロにより、非常に内面的な音楽へと誘われます。格調の高い中に絶望の淵を垣間見るような、フルートにのみ表現できる響きではないかと思います。グルックが、パリの聴衆のために、この曲を加えたのには、どんな考えがあったのでしょうか。ヘ長調からニ短調に転じる時に、原版には、「同じ速さで」と楽譜に記されているので、余り遅くし過ぎない方がよいと思います。ヘ長調での清らかな響きとニ短調での内面的な響きの移り変わりが、この曲の永遠の魅力です。(解説/三上明子)

 

 

    

グルック、クリストフ・ヴィリバルト/精霊の踊り

Gluck, Christoph Willibald DANCE OF THE BLESSED SPIRITS AND BALLET (ARR.STEWART)(Fl.Cl.Fg)