小沢征爾 オペラへの情熱 | 翡翠の千夜千曲

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          小沢征爾 オペラへの情熱 seiji ozawa documentary

 

   小澤さんは、指揮者は一生勉強だ、常に勉強だと言われていましたが、すべてをさらけ出しても、本気で進もうとすれば、小さな失敗や間違いはさっと認めて次に進んでいく。小澤さんの師匠格に当たるカラヤンは、オペラを勉強しろと言っていたようだが、オペラ嫌いの私でもその意味は分かります。ありとあらゆる音楽の要素が入っているからです。複数の歌い手や場合によっては、合唱やバレエなどのすべての人間との間のやり取り、普段のオーケストラにこれらが加わるのです。

  ここでも、小澤さんはフランス人のアドヴァイスを入れて、フランス語で描かれるラヴェルの音楽の世界を行き来と描こうとしているのです。カラヤンは、オーケストラと指揮者の関係についてある時はこう言っていました。「彼ら(団員の演奏者)をインバイトするのだ」と言っていたのです。自分が作ろうとする音楽の世界に招待せよ、と言っているのです。そして、小澤さんは、ここでは若い演奏者たちに自分が音楽に向かって行く姿をそのまま見せています。さて、作品について見て行きましょう。詳細は、放送の中でも言っていますので、簡略に書きます。

  L'heure espagnole(ヘウル・エスパニョウレ)は1911年のフランスの一幕オペラで、モーリスラヴェルの音楽に寄っています。フラン・ノハインのフランスのリブレットに、フラン・ノハインの1904年の同名の演劇('comédie-bouffe')基づいて、オペラ 18世紀にスペインを舞台に、不誠実な妻が留守中に異なる男性に浮気をする話です。時計職人という言葉がカギになっていますが、このヘウルと言う言葉は「時間」で、文字通り「スペイン時間」と訳すことができます。要するに、日本のあちらこちらにもある、○○時間です。

  オリジナル劇は、1904年10月28日にロデオン劇場で初めて上演されましたが、このドタバタ劇はフラン人に随分受けたようで、ラヴェルは1907年に作曲に取り組み始め、オペラは1911年5月19日にオペラ・コミックで初めて上演されたのです。―ですから、おそらく洒落やらギャグやらばかばかしいお話がてんこ盛りでしょう。それでなくても、フランス人はお喋り好きですから、同じ話を言い方を変え、味わいを変え、反対方向から逆説して話しますから、小澤さんの苦労がしのばれます。

  音楽を、志す方は全く散った方向から、音楽を作り出す小澤さんの方法を見て何かを感じ取ってみてください。