私は、最近までムソルグスキーと言う人をざっとしたイメージでしか捉えていませんでした。正確には、モデスト・ペトローヴィチ・ムソルグスキー(Modest Petrovich Mussorgsky, 1839年 - 1881年)ロシア生まれの作曲家です。今回、彼の細かな情報を完璧に捉えた訳ではありませんが、ムソルグスキーの理解者はいたものの、思ったよりは不遇だったようです。作品の中に現れる、増四度を積み重ねる技法や、原色的な和声感覚、作曲素材の大胆な対比などは、印象主義音楽や表現主義音楽の前触れとも言われています。
荒々しく、野暮ったいと言う人もいますが、それが本人の個性で意図することならば、それでいいと私は思います。人の個性はむやみに矯正されるべきではありません。それこそ、現在話題となっているように、多様な価値観は大切です。
ムソルグスキーの作品は生前出版されたものが多くはなく、彼の死後リムスキー・コルサコフらの手で整理され出版されたことで彼の名が残された功績は大きいものがあります。リムスキー・コルサコフはムソルグスキーの良き理解者であったことは間違いありませんし、彼がいなければ作品は陽の目を見なかったかもしれません。
そのような理由から、実は原典版と言うものが存在したことはリヒテルの演奏が現れるまでは、一部の者しか知りませんでした。私たちの多くは、主にラヴェルの編曲した管弦楽作品で知ったのであり、その原となる作品はリムスキー・コルサコフ版なのです。
今日は、原典版のリヒテルの演奏と、ピアにスティックな効果を狙ったホロヴィッツ版、そして最も我々の知るラヴェル版、そしてこれはロシアの音を表現しようとしたストコフスキー版、そして手塚治虫のオリジナルアニメーションに付けられた富田勲の管弦楽アレンジ、最後はセンセーションを巻き起こした富田勲のモーグ3シンセサイザーによる編曲を聴き比べてみましょう。
Sviatoslav Richter in Kiev, 1958 - Pictures at an Exhibition
なお、この作品は私の知る限りでは70人ほどの人間が編曲を試みていますが、これは記録に残っているものだけですから有名無名(失礼)を問わなければその数は相当なものになると思われます。それから、中には部分的に割愛している版もあります。ラヴェル版では、第5プロムナードが削除されています。その他にも、ダイナミックスの関係で付け加えられた小節もあります。
第1プロムナード
1 小人(グノーム)
第2プロムナード
2 古城
第3プロムナード
3 テュイルリーの庭 - 遊びの後の子供たちの口げんか
4 ビドロ(牛車)
第4プロムナード
5 卵の殻をつけた雛の踊り
6 サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ
第5プロムナード
7 リモージュの市場
8 カタコンベ - ローマ時代の墓
死せる言葉による死者への呼びかけ
9 鶏の足の上に建つ小屋 - バーバ・ヤガー
10 キエフの大門
Mussorgsky-Horowitz: Pictures at an Exhibition (1951)
Mussorgsky-Stokowski 'Pictures at an Exhibition' - Serebrier conducts
Modest Mussorgski: Bilder einer Ausstellung (Gergiev, Münchner Philharmoniker)
Osamu Tezuka - Pictures at an exhibition
Tomita - Pictures at an Exhibition
展覧会の絵~ライヴ・イン・ソフ
リヒテル(スビャトスラフ) (アーティスト, 演奏), リスト (作曲), & 4 その他 形式: CD
ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」
ホロヴィッツ(ウラジミール) (アーティスト, 演奏), & 9 その他 形式: CD
ムソルグスキー/ストコフスキー編:組曲《展覧会の絵》、他
オリヴァー・ナッセン
ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編)/ボロディン:だったん人の踊り
(スロヴァキア・フィル/ナザレス)
展覧会の絵(期間生産限定盤)
冨田 勲 (アーティスト) 形式: CD