「さようなら私の楽しい高校生活(泣)」


「どうしたん?いきなり…ちょっと!授業仲井先生担当やん!!ズルいーズルいー」


「ズルくない!!全っ然嬉しくない!!」


「なぁなぁお願いがあんねんけど…」

「なに?」


「化学の授業終わったらさ、そのまま教室に残っといてよ。そしたらウチが迎えに行って仲井先生と話できるやん。」


「・・・」

「お願い(うるうる)」

「はいはい」



この子はどこまであの男に惚れ込んでるんやと呆れつつ、めんどくさいことを承知してしまった。




そうして迎えた新学期初めての化学の授業。


理系文系で別れるため、教室は別の所になる。


どういう席順になるんか知らんけど、1番前にだけはなりませんように…

チャイムが鳴って少ししてからアイツが入ってきた。


「じゃあ出席順に座ってもらおうか」


後ろから2番目で少し安心する。


「私の名前は仲井博一だ。お前ら授業中に喋ったり寝たりするなよな、俺は黒板書いてたって背中に目があるんやからすぐ分かるんやぞ。」


はいはい。


「まぁ持って生まれたセンスやからな。」


そんなセンス要らんわ。


「あと携帯もいじるな」


…なんか今目が合ったような気がする。


放課後、メイちゃんは20分私は40分延々と担任からお説教をされて解放された。



ため息をつきながら正門をくぐろうとすると、


「タナミミー!!」

「ノンちゃん!!」

「今帰りなん?」

「そやで。ノンちゃんは部活ちゃうの?」


「今日は病院に行くから早めに上がらしてもらってん。
タナミミ、今日仲井先生と喋ってたらしいやん!!」


「仲井先生?誰それ?」


「えっ携帯見つかったんちゃうの?」


「あーっ!あいつ仲井先生っていうん?知らんかった…新学期早々最悪やったわ、ホンマに。」


「うらやましいわ~」

「はあ?」

「仲井先生めっちゃカッコイイやろ?あの人野球部の顧問やってさ、ウチ1年の時にあの人の後ろ姿に一目惚れしたん。」


ちなみにノンちゃんはソフトボール部だ。


「ああいうのをセクシーって言うんかなって感動してんで!」


「セクシーっちゅうか背が低くて黒いだけやん…」


「何言ってんの!…はぁウチも進路選択の時に理系にすれば良かったわ…そしたら仲井先生の授業受けられるかもしれへんかったのに。」


「何教えてんの?」

「化学。」


嫌な予感がしてカバンから今日貰った時間割を慌てて引っ張り出す。


"化学:仲井博一"


いきなりの怒声に恐る恐る顔を上げる。


目線より少し上に日焼けした男らしい顔があった。


…この人、初めて見る。せんせい?



「携帯いじってどういうつもりや言うとんねん!!」


「え、いや、あの…」


「"いや"ちゃうやろ!!携帯没収や!!」


そういうニュアンスの"いや"じゃない、とか下らない理屈を自分の中で呟きながら渋々携帯を差し出した。


「そっちの携帯もや!!」


「え!?これは私のじゃ…」


「早く渡さんか!!」


あーメイちゃんごめんよー(泣)


肝心のメイちゃんは少し離れた所から心配そうにコチラを見ていた。


…本当にごめんね、メイちゃん…申し訳ないです。



「お前こんなことやってるなんて、テストは余裕なんやろな。」


そう言って不敵に微笑むその人に私は戦慄を覚えずにはいられなかった。




それが、私とヒロちゃんの出会いだった。





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