テレビに照らされる室内で、私は身動いた。


腕枕が少し苦しくて。


そっと動いたつもりだったんだけど寝言を引き出してしまった。


流石に夜もヒンヤリしてきて、布団をかけ直す。

不意にきつく抱きしめられた。


短い間に何度も抱き直されて、その度にギュッとされる。


こんなので目が潤んでしまう私は、単純で寂しがりやなんだろう。


泣いてるの?


暗い中、ぼんやり見つめられた。


明るいトコで真正面から見ると意外にも赤茶色な目。


泣いてなんてないよ。













外にでて、古びた外灯の下に曼珠沙華を見つけた。


血のように紅い筈なのに、砂漠みたいに渇いていた。





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"海が見たい"


まるで"コーヒーが飲みたい"みたいなそんな言い方だった。


"海?今行ったって真っ暗で何も見えないよ"


"見たいの!"


酔っ払っているのか、手をブンブン振りながら自己主張する彼女。


言っても聞かなさそうだったので仕方なく軽トラの助手席に乗せる。





海岸沿いの駐車場に着いた途端、彼女は飛び出してドアを乱暴に閉めた。

つられて慌てて出る。


"あんまりウロウロしちゃダメだよ。暗いとは言え、誰が見てるか分かんないんだから。"


こんな小さな漁師町じゃ、何も無くても勝手に尾びれや背びれがくっつく。



メダカがシロナガスクジラになったりする。


…言い過ぎかもしれない。
でも僕が年頃の娘さんと夜の浜で…なんて噂になったら…。



そんな心配を他所に、彼女は堤防を軽々と乗り越え砂浜を歩いていく。







遠くの方で、紫の雷が光っていた。

雲がまるでネオンのようにそこだけ光っている。



"キレイやね"


"…あんまり遠くに行っちゃダメだよ"



"行ったって、君はちゃんと追いかけてきてくれるやん"


"そういう問題じゃない"

"嫌なん?"


"え?"


"私と噂になるのがいやなん?"


"…嫌じゃない"




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水溜まりに映る自分の姿を確めては安心していた。






正直、私が生きてるってだけでイタイことだと思う。



自分の中、肺辺りで、
真っ赤な血が噴き出すような感覚。


血管も破れて、ただただ体内を赤く染めていって…。




変な時間に寝て、目が覚めて、喉がカラカラになっている。



夢で喚いたけど喚けてなかった。


悲しい気持ちだけが先走って私の中から溢れだしていた。



言葉が伝わらなくて、それでまた……。






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