『方丈記』(鴨長明) | TARO BOOKS(準備中)

『方丈記』(鴨長明)



方丈記 (岩波文庫)/鴨 長明
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鴨長明「方丈記」を読みました。



中学校の古典の授業で、出だしの部分を暗誦したのを覚えています。
僕のクラスの国語の授業を担当してくれたオバサン先生は、何につけ暗誦させるのが大好きで、この方丈記や徒然草や枕草子なんていうの当然のこととして、島崎藤村とか谷川俊太郎とか、今昔物語とか新井白石とか、もうありとあらゆるテキストを端から覚えさせられました。古事記を覚えさせられたときにはさすがに「俺は稗田阿礼か」と思いました。
子どもの頃に出会ったたくさんの教師たちの中では群を抜いて個性的な印象だった彼女の授業は楽しかったのだけれど、でも今こうしてそのとき覚えた方丈記を読み返してみたときにその内容について殆ど理解がなかったことに気付き愕然とするのです。もちろん暗誦したのがいけなかったというつもりはないのだけれど、僕のささやかな集中力を暗誦に傾けたあとには、そのテキスト自体の内容を楽しむ余裕はあまり残っていなかったようです。とても残念なことですが。


「無常観」という初めて知るキーワードのインパクトが大きかったせいで、かつて僕は単純にもこれが「無常観についての」作品であると思い込んでいました。でも思えば悟りを開こうと方丈に庵を結んだ男が、「人生は儚い」といういわば当たり前のことを言うだけのためにくだくだとこんな文章を書くはずもないのです。「人生は儚い、だから云々」とか「人生は儚い、しかし云々」と読んでいくのがまあ、素直なんでしょうね。



そんなことを考えながらつらつらと読んでいるとこの方丈記という作品、思いのほか能動的な思いに満ちているように感じました。人の世の儚いことなんか分かった上で、それならどうやって生きていくのが「良い」のだろうかと考えている。「どうせ儚い人生なんだから何やったってしょうがないじゃん」って言っているわけではない。健全な考えです。昔も今も人って同じように考えて一生懸命生きてきたんだな、なんて感傷的な思いにひたって、ちょっとホクホクした気持ちになりました。
内容としてはそれほど目からウロコが落ちるというようなものではないのですが(だって900年も前に書かれたものなんだから)、時代を超えた共感っていうのは、なかなか悪くないです。


それから反省したのだけれど、古典文学というと何故か原文で読まなきゃならないというような勝手な強迫観念があって、それで古典に触れる機会を狭めてきてしまいました。思うにテキストの文体自体を楽しむという目的を持っている場合でなければ現代語訳でも十分、というか、寧ろその方が楽しめるのでした。優れた訳文が出回っている以上、そうしていろいろな作品に触れてみたほうがいいですよね。外国文学にしたって原書で読まなきゃならない決まりなんかないんだから、考えてみれば当たり前です。
そんな簡単なことに気付くのに、随分かかっちゃったな。