濱口竜介監督「偶然と想像」を観た | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。



  ​偶然と想像



監督:濱口竜介さん

出演:古川琴音さん、他

他者も自分も理解できないものである


タイミングも合わず、近くで上映してなかったので、スクリーンで観るのを諦めていた濱口監督の「偶然と想像」。運良く地方巡業で回ってきたので観てきました。とてつもなく良かった……!!去年観てたらベストテンに入れたなぁというくらい素晴らしかったです。



3エピソードあり、その内容はもちろんのこと、順番もいいなぁと思いつつ観てたんですが、そんな中でも個人的に1話目の「魔法」というエピソードがものすごい好きでした。濱口作品は「寝ても覚めても」が個人的にベストなんですが、それに匹敵するくらい好きです。


本作全体的にそうだし、これまでの濱口作品もそうですが、好きなのは、他者って理解できないものだし、自分自身はもっと理解できないものであるってところだったりします。だから人間っておもしろい。


今この決断をしてこう行動したけど、何でこんなことやってんのか自分でも理解できない…みたいなことあるじゃないですか。「寝ても覚めても」とかまさにそれの映像化だった気もするし。で、今回1番グッときたのは1話目の「魔法」のラストあたり。何でこんなこと言っちゃったんだろう…っていう修羅場が一旦頭によぎるけど、グッと抑えて違う選択をとるシーン。あの古川琴音が

顔を覆うアップからのシーンはものすごいグッときたし、まじ映画だなって思いましたね。ホン・サンスっぽい!とか思ったりもした。人間という生き物のめんどくささを描きつつも、その先の希望らしきものをふんわりと浮かび上がらせる素晴らしさがありました。


2話目もめちゃくちゃおもしろかったなぁ。こんな展開よく思いついたなと思ったsegawaとsagawaのオチ、あのPC画面のアップとか、劇場の客から声出てておもしろかったです。ラストのキスとかも、ものすげぇ不穏で良かったな。こっからまた違う話始まりそうなラストでよかったです。


3話目はすげぇ奇妙、しかしものすごいハートフルで感動しました。何かロールを演じることで、何か心のつかえが取れたりすることもある。濱口監督なりのフィクション論というか、もっと言えば映画論的な見方もできてとても良かったです。


観る前はもっと重い何かなのかなと思ってましたが、3エピソードを観てみると、物凄く軽快な作品だなと。めっちゃ軽やかで、皮肉が効いててでも笑える。これまでの濱口作品では1番観やすいのはもちろん、個人的にはベクトルは違うけど「ドライブ・マイ・カー」より全然好きだったりしました。いや〜めちゃくちゃおもしろかったー!