2021年映画ベスト10
なぜこの世に詩(うた)というのもが存在し、人はそれを必要とするのか。誰かを思い言葉を紡ぐことの尊さをカラフルにキュートに描き出した傑作。私の仕事柄、俳句という昔ながらのコンテンツのポップ化に成功している本作にはものすごく感心したし刺激をもらいました。劇中に出てくる「夕暮れの フライングめく 夏灯し」という句の、「フライングめく」という一語の存在がとても大きく、この一語が世界観の構築に大きく貢献しています。とある少年のダギングが当たり前に存在してる世界観も好き。盆踊り・アナログレコード・俳句という過去の文化が集結し今の高校生の切実な声として俳句がリーディングされるクライマックスは激アツ。作品とは関係ないですが、個人的には、歌人だった亡き祖父に想いを馳せたりもしました。文句なく今年のベストです。
2位「花束みたいな恋をした」
平成初期生まれの私にとって、他人事ではない懐かしさと、ただならぬ当事者性を感じた1本。映画を観ることで、当時の自分の思い出と対峙せざるを得ない、そんなチート級の思い出補正のかかった1本です。僕たちはまだあの頃の自分と決着がつかない。
3位「あのこは貴族」
貴族側にも上京組にも、主要登場人物全員に寄り添える巧みな作劇と細やかな演出に感動。道路の向こう側の2ケツした女の子2人組に手を振りかえすシーンや水原希子と高良健吾の中華屋のシーンなど、忘れ難いシーンだらけ。石橋静河が出てる映画に悪い映画はない法則がまたしてもハマりました。
4位「モンタナの目撃者」
4位ですが実質1位。こういう映画を毎年映画館で観たいんだよ!と思わせてくれる1本でした。忘れ難いシーンが多いし、アンジェリーナジョリーはやっぱりすごい女優だと改めて思いましたし、脇役という脇役のキャラ立ちがみんな素晴らしく文句がないですね。
5位「ザ・スイッチ」
この作品の完成度を考えるともっと多くの人に観られていい作品な気がしますよ。スラッシャーホラーと青春コメディの組み合わせとして、完璧な作品なのでは…とすら思います。作り手のジャンル愛と主人公チームへの愛が溢れ出た素晴らしい1本。これ以上ない出来。
6位「街の上で」
ヒロインのひとりであるイハと主人公が部屋で語り合うあの一夜がたまらなく好き。恋愛とも友情ともちがう何か名前のない関係性が生まれる瞬間を見事にとらえていて感動。今泉監督作では頭抜けてベストでした。
7位「DUNE 砂の惑星」
今年の「スクリーンで見る映画最高!」枠。原作未読でDUNE自体に思い入れがないので、ドゥニヴィルヌーヴが撮った新しいSF映画くらいの感覚でフレッシュに楽しめました。女性陣の得体の知れなさとか、主人公と母親の描かれ方がなんか気味悪い感じとか、ともかく女性キャラクターにすごく目のいく映画でした。続編も楽しみ。
8位「パーム・スプリングス」
ループからの抜け出し方が身も蓋もなくて超好き!コロナで大変な時期に見たので、ヒマで無限に時間があるならとにかく勉強して現状打開しろよ!と背中を押された1本に。ありそうでなかった発想ですよね。
9位「クルエラ」
101匹わんちゃんとの整合性はさておき。私も物作りをナリワイとしてるので、ものづくりへの意欲とアイディアで現状を打開していくエマ・ストーンに物凄く勇気づけられました。コロナ禍に観たというタイミングが何気に1番刺さったのが本作。今年のベスト物作り映画です。
10位「猿楽町で会いましょう」
同じようなテーマでラストナイトインソーホーと迷いましたが、こちらを取りました。憧れの世界の闇の部分に直面し、あれよあれよと世界に搾取されるという、残酷な詰将棋のような映画でした。キツい映画ですが代え難い力強さがあり初監督作なの?とビックリ。今年最後に滑り込みでこの映画を観たのですが、今年グッときた映画の暗部というか鏡のような存在というか。撮影自体はちょっと前みたいですが、2021年感をすごく感じましました。すごい見応え。
2021年映画ワースト3
①野球少女
②哀愁しんでれら
③るろうに剣心 最終章 The Final
ワースト3位は、1作目から谷垣アクションは進化し続けるのに、大友さんの作劇がまったく進化しないまま終わったるろ剣。
ワースト2位は、好きな人が多いので申し訳ないのですが、やってることもやろうとしてることもダサかった哀愁しんでれら。
ワースト1位は、これも好きな人が多い中大変申し訳ないのですが、「野球少女」。個人的に野球描写にはどうしてもうるさくなってしまうのですが、野球を描きながらこの野球描写はマジで無い。身体性を伴うのが映画だと思うので、ただの「良い話」をやりたいなら紙芝居で充分です。と、野球好きのめんどくさい部分が出てしまいました(過去記事参照)。
↓
ベスト・ガール
アナ・デ・アルマスさん/「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」より
どの映画で観てもアナ・デ・アルマスは常に最高ですが、今回は特に良かったです。映画自体は個人的に散々でしたが(汗)、彼女のシーンが素晴らしすぎて全部がどうでもよくなりました!
ベスト・ガイ
松山ケンイチさん/「BLUE ブルー」より
最後のシャドーボクシングが忘れられないし、思い出すたびに涙腺が緩むくらい感情移入した松山ケンイチの素晴らしい演技と、吉田監督の演出に拍手喝采。
ベスト・シーン
「イン・ザ・ハイツ」序盤のミュージカル
映画自体は長ぇなぁ〜とか思っちゃいましたが、とにかくオープニングのミュージカルシーンがあまりに素晴らしくとんでもない最大風速でした。シンプルにめっっちゃくちゃ元気でた!
ベスト・エマ・ストーン賞
エマ・ストーンさん(2年ぶり9回目)/「クルエラ」より
今年は2年ぶりにエマ・ストーンさんが受賞。文句ないでしょう。ちなみに次点は「ラストナイト・イン・ソーホー」のトーマシン・マッケンジーさんです。
という感じでベスト10記事おわり!
では!