シャマランの新作「オールド」を観てきました。ま、シャマランだし観ますよね。色々おもしろかったです、色々。
足を踏み入れると急速に老いていくという限定空間ものかつタイムリミットサスペンスというアイディア一発もの(に見える)映画「オールド」。まぁともかくよく考えたなという舞台建てがまずおもしろい。老いて死ぬのが先か、脱出が先かというサスペンスもありつつ、そのビーチに閉じ込められた何組かの家族やカップルが極限状態に追い込まれ…というスリラー要素もあり、かつ一番おもしろいのは老いることで生じる体(心)の変化描写で、「わー!れやりたかったんだろうな!(笑)」というあの腫瘍摘出描写とか妊娠描写とか、まぁともかくビーチに閉じ込められた人々の右往左往を見てるいだけで楽しい映画でした。
このビーチに入ると急速に老いていきます!というルールをシャマラン自身が作ったはずなんだけど、自分で作ったルールが話が進むごとにすげぇユルくなっていったり、ギリ破綻寸前みたいなバランスのまま話が進むんだけど、そこも含めてなぜかめちゃくちゃおもしろいという、つまるところザ・シャマランな映画でした。腫瘍摘出あたりがひとつターニングポイントだと思ってて、それ以降の人々のとらえかたとか、次から次へと起こるひどい事態の描き方の手際とか、正直シャマラン映画の中でもうまいとは言えないんだけど、とにかくこの事態を今撮ってるシャマランがノリノリであるということは伝わってきます。妊娠云々のところとか絶対ノリノリで取ってるに違いないし、そのノリノリさが画面から伝わってきておもしろい。とっ散らかってるんだけど目が離せない謎の求心力のある映画でとりあえず目が離せない度は頭抜けてました。
シャマラン映画と言えばシャマラン自身が登場しますが、今回のシャマランはまじでシャマランで。老いて右往左往してる主人公たちにずっとカメラを向けて観察・撮影してるというキャラクターをシャマラン自身が演じているというのもおもしろかったです。あと、海辺と老いというものへの考察という意味では今年観た石川監督の「Arc」とかも思い出したりしました。あれは寿命が永遠に手に入るというもので、今回とは逆ですが、画的にというのと描かれる問答は遠からずな気もします。
ラストは取ってつけたように答え合わせ的なシーンが出てきますが、あれがなくて謎のまま終わってもよかったかもなと思わなくもないです。より老いるということの得体のしれない恐怖、なぜ老いるということを我々は恐怖するのか、というところまでより行けた気がしなくもないが。でも、老いを使ったサスペンスとそれによる人々の右往左往を描いた一本として唯一ムニムニの楽しい映画でした。こんなにとっ散らかってるのになんでこんなに楽しいんだろうか。ちゃんと忘れられない映画にしてくるあたり、さすがシャマランだと思います。