キャラクター
漫画家と殺人者の奇妙な共存関係
監督:永井聡さん
出演:菅田将暉さん、小栗旬さん、他
数年前の年間ベスト映画「恋は雨上がりのように」の監督が永井監督。その監督最新作ということで「キャラクター」観てきました。楽しみましたよ。
絵はいいけどキャラが弱いと言われてた漫画家菅田将暉が、たまたま四人一家殺害事件の現場に遭遇。殺した後の犯人やその現場を目にしたことで創作意欲が湧き上がり大ヒットスリラー漫画作家になったが……的なお話。
正直お話自体は想像の範囲を出ないし、あまり新鮮味はないんですが、ちゃんとツボを押さえてくれるというか客を楽しませようというサービス精神がしっかりあってとても感心しました。なにより掴みが良くて、殺人現場となる家でその光景を主人公が目にするアバン部分はとても魅力的で良かったです。お話的にもここをちゃんと描けてるか描けてないかで決まる映画なので、ここでちゃんと貯金が作られてるのが良かった。その後のタイトル画面もカッコ良かったですね。
最近どの記事でも「今年はものづくり映画の年!」とか言ってますが、この映画もものづくり映画としての部分がおもしろかったです。あのような極限の状況というか、陰惨で残酷な場面だけど、殺された家族が並ぶ様とかがどこかアート的でもあったりして、そこから創作意欲が湧いてきちゃうってのもわかるなぁという説得力がありました。
この映画のおもしろかったところは、殺人者から影響を受け漫画家が漫画を描き、その漫画から影響を受けさらに殺人者が殺人をする、という構造。一方は漫画で一方は殺人ですが、奇妙な共存関係が生まれていく感じがおもしろかったです。ものづくりや芸術を生むことのダークサイドにフィーチャーしてて良かった。ラスト周辺の菅田将暉の表情や漫画と2人の立ち位置が入れ替わるとか、2人を鏡のような関係にしてるのがうまかったなぁ。
殺人鬼を演じたFukaseさん、ナチュラルボーンサイコパス感がうまかったです。ちょっとあまりにザ・サイコパスなので新鮮味は少なかったですが。
あと何と言っても小栗旬が良かったし、中村獅童とのバディ感もとても良かったです。あの2人のバディクライムムービーとかもっと観たいなというくらい、あの2人すげぇ良かったです。小栗旬は佇まいといい、語られる生い立ちといい、キャラとして魅力がありすぎで大変良かったです。
全体的におもしろかったんですが、気になったのは後半の警察の無能さ。あんな堂々と書店に犯人がいるんなら、その周辺の監視カメラ繋ぎ合わせればもっと簡単に捕まんないもんなのかなぁとか。あとクライマックス、さすがにあの家に奥さん1人にさせてるなんてことはなくない?とか、警察統制取れてなさすぎじゃない?とか、サスペンスを生み出すためにあえて削った部分でしょうが、警察周りの動きはかなり気になりました。
ま、しかし全体としてはとても楽しみました。ちょうどいい娯楽スリラーで、しかもオリジナル脚本というのも良かったな。永井監督作今後も楽しみにしてます。
あと、しれっと唐突に描かれてましたが、4人家族こそ至高と唄う新興宗教があったっていう発想、あの気持ち悪さすげぇ好きなので映画化してください。