街の上で/街の上で生きる全ての人々に祝福を。 | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。




街の上で

街の上で生きる全ての人々に祝福を。
監督:今泉力哉さん
出演:若葉竜也さん、他



今泉監督の「街の上で」を観てきました。私の住んでる地域は地方ですが、コロナも増えてきて。近くで唯一上映してる隣接してる県に緊急事態宣言が出るということで見逃すまいと駆け込み鑑賞してきました。「街の上で」、大傑作!今年ベスト級の一本になりました。



今泉作品の好きなところがこれまでで最もギュッと詰まった一本な気がします。恋愛でもあり、友情でもあり、でもどちらでもなく、言葉にならない関係性ってのがこの世にはあって、その関係性の可視化がなされるのが今泉作品の好きなところ。今回もいろんな言葉にならない関係性が登場しますが、そのどれもが愛おしい。

個人的に特にグッときたのは中田青渚さんと主人公が飲み会の後2人で夜を明かす一連のシーン。ここのあの機微と言いますか。まさに言葉にならない関係性の妙が炸裂しててほんとに好きなシーンです。何気ない会話の連なりなんだけどね。古本屋の店員さんを演じる古川琴音さんとの演技練習シーンもしかり、穂志もえかさんとのラストシーンもしかり、本当に何気ない日常の何気ないシーンなんだけど、とてつもなく愛おしくドラマティックに見える素晴らしいシーンの数々にものすごく感動しました。


あとこれをコロナ禍に観たという事実がさらにこの映画の感動を増してる気がしてて。この映画では下北沢ですが、ものすごく普遍的なお話であり、テーマだなと思いました。不条理で大変なこの時代にもそれこそ映画ではカットされてしまうような、でもだからこそ愛おしく忘れがたいシーンというのが、この世には無数にあって、それこそが我々の生活に希望をもたらす要素な気がします。コロナによって、仕事で関わってる飲食店やイベント屋さんがどんどん減って街もまさに変わってきているし、なんかいろんな気持ちになったなぁ。

街の上で生きる全ての人々に、全ての何気ない生活に、祝福を。「街の上で」大傑作でした。